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【アール・ブリュット 滋賀から世界へ(1)】突き刺す“トゲ”の造形、あふれる原初の力 沢田真一氏(31)=滋賀県草津市

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【アール・ブリュット 滋賀から世界へ(1)】
突き刺す“トゲ”の造形、あふれる原初の力 沢田真一氏(31)=滋賀県草津市

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 そのうち、作品にトゲがつけられるようになる。どうやらトゲ好きな仲間に影響されたらしい。初めのうちは、大きく長く伸びたトゲだった。突き刺すようで、攻撃的な作品を見て、父は「息子は怒っているんじゃないか」と感じたが、沢田はいつものとおり、恬淡(てんたん)とした表情で何もしゃべらなかった。

 年齢を重ねていってもトゲはなくならなかった。だが、小さく、整然と並ぶようになった。手足がある壺、竜に見えないこともない謎の生物、塔とおぼしき物体-。いずれもトゲだらけで、見るものにはそれが何か理解できない造形。具象から抽象へ。現代の美術の変遷を、沢田も自然に体現していた。

 平成23年1月。突然、作業所に通わなくなった。作業所行きのバスの、いつも自分が座る席に別の誰かが座っていた。どうもそれが原因らしい。

 「熱あんねん、今日はお休みです」。布団にしがみつきながら、妹が学校を休むときに言ったこのセリフを記憶の中からひっぱりだし、繰り返した。

 10カ月、作業所に行かなかった。それでも陶芸だけは続けた。心配した父に連れ出され、週1回、山間の工房に連れて行ってもらうと、文句も言わず土を練り始めた。

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 カエル、竜、鬼、壺、仮面-のようなもの。トゲに覆われた独特の作品群は、世界でも注目を浴びた。20年にはスイスの美術館「アール・ブリュット・コレクション」に作品が収蔵された。昨年6月には、イタリアで開かれた世界最大の芸術祭、ベネチア・ビエンナーレに出展。世界に陶芸作家として認められた。

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