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【アール・ブリュット 滋賀から世界へ(1)】突き刺す“トゲ”の造形、あふれる原初の力 沢田真一氏(31)=滋賀県草津市

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【アール・ブリュット 滋賀から世界へ(1)】
突き刺す“トゲ”の造形、あふれる原初の力 沢田真一氏(31)=滋賀県草津市

 棚田に囲まれ、深い森が迫る小さな工房。パチパチとストーブで薪の燃える音だけが聞こえる。

 細い指で粘土をちぎり、やわらかくこねて小さなトゲをつくる。できあがるごとに粘土のかたまりにはり付ける。なにをつくっているのか、ほかの人間にはよくわからない。設計図は本人の頭の中にしかない。なにも言わず、1日6時間、ほとんど休憩をとらず作業を続ける。

 「できた」

 完成すると、はじめてそう言葉を発し、笑みをひとつ浮かべる。そして、すぐに帰り支度。できあがってしまえば、もう関心は薄れる。1日に1作品、週3回。土に触れる時間が、ただ楽しい。

■        ■

 4歳になっても言葉を話さなかった。心配した両親が医師に診せると、自閉症と診断された。

 だが、記憶力と手先の器用さはそのころから際だっていた。養護学校の小学部のころは、たばこやお菓子の袋を見ては、家に帰ってから紙切れで本物そっくりに仕上げた。あまりの精巧さに家族も驚いた。

 十代の後半になると、街でみた自動車を紙で再現するようになった。外観だけでなく、ハンドル、カーナビ、ドアポケットに差し込まれた新聞。細部まで極めて緻密に作り上げた。今でも車の模型作りは日課だ。

 滋賀県栗東市にある「栗東なかよし作業所」に通い始めて間もない平成13年、陶芸を始めた。器用だったので「向いてるんじゃないか」と周りがやらせた。最初はおもにカエルを作った。本物そっくりの、玄人はだしの作品だった。

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