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餌代わりにビニール、交通事故…受難減らぬ奈良の鹿

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餌代わりにビニール、交通事故…受難減らぬ奈良の鹿

 国の天然記念物に指定され、野生状態で生息している奈良公園の鹿。今年も秋の行楽シーズンで大勢の観光客が訪れる中、観光客が餌代わりに与えたビニールや紙などを食べて健康を害したり、交通事故に遭ったりする被害が一向に減らない。一般社団法人「奈良の鹿愛護会」は地道な啓発活動を通じて、鹿愛護への協力を呼び掛けている。(山崎成葉)

 愛護会によると、観光シーズンの今年4月、東大寺南大門付近で、腹部が膨らんだ雌鹿が見つかった。

 出産シーズンでもあるため、念のため奈良公園の春日大社境内にある収容施設「鹿苑(ろくえん)」で保護。経過を観察したが、妊娠の兆候はみられず、胃の中にビニールなどの異物が大量にある可能性が浮上した。

 観光客などが、鹿せんべいなどのえさ代わりに、ビニール袋や紙製のパンフレットなどを与えた可能性があるという。

 異物は胃で消化されず、蓄積される。愛護会は「異物を食べ過ぎると、本来の餌が食べられなくなり、健康を害する恐れもある」と指摘する。

 食べる以外にも、鹿が直面する被害は多い。死にも直結するのが、行楽シーズンに増える交通事故だ。

 奈良市によると、秋の行楽シーズンの10~11月には、市内だけで約270万人の観光客が殺到。車で訪れる観光客も多いため、交通事故のリスクが高まる。

 愛護会が昨年7月~今年7月に実施した調査によると、交通事故の発生件数は、月別では10月が最も多く26件。11月と合わせると計41件に上る。昨年1年間の鹿の死因別では、疾病が144件と最多だが、交通事故も100件に達している。

 死に至らなくても、交通事故が原因で腹膜が破裂したり、脚の骨や角が折れたりする被害も後を絶たない。こうした鹿は愛護会が鹿苑に収容して治療し、回復すれば放している。

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