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【ベテラン記者のデイリーコラム・石野伸子の読み直し浪花女】石上露子伝説のリレー(9)あの山崎豊子がインタビュー、リアル小説に 女神と悪魔「…でも架空」

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【ベテラン記者のデイリーコラム・石野伸子の読み直し浪花女】
石上露子伝説のリレー(9)あの山崎豊子がインタビュー、リアル小説に 女神と悪魔「…でも架空」

 同じころ、作家デビューした山崎豊子も松村教授を訪ねている。

 大阪出身の「花のれん」の著者がどう露子を描くか、松村教授は大いに期待を寄せた。というのも、山崎豊子と露子とは浅からぬ因縁があったからだ。

 山崎豊子の兄と、露子の次男とは中学時代の同級生。その縁で大阪大空襲で焼け出されたとき、山崎家は堺・浜寺の杉山家に避難していた時期があり、山崎豊子はその家の女主人が幻の明星歌人であるとはつゆ知らず、めぐりあっている。世間から距離を置いていた露子が新聞のインタビューに応じたのは、そんな経緯もあったのだ。

 「花紋」は昭和37年から39年にかけ「婦人公論」に連載された。

 舞台は終戦直後の大阪。

主人公である「私」は家を空襲で焼かれたため、兄の友人の屋敷で終戦までの数カ月間を過ごす。広大な屋敷には女主人である初老の女性と彼女につかえる老婢の2人きり。まるで戦争など別世界のように優雅に暮らす美しい「御寮人様」だが、屋敷には謎めいた雰囲気が漂う。ある日、「私」はその秘密を知る。納戸から響く不気味な男性の声、それは「御寮人様」の夫で、やがて栄養不足と老衰で亡くなったと知らされる。御寮人様はなぜ夫にそんな仕打ちをしたのか。

 やがて老婢から手紙が届き、「御寮人様」がかつて著名な歌人であった過去が明らかにされる。

 以後は、露子の自伝「落葉のくに」を思わせるエピソードなども満載し、古い家族制度のしがらみの中で才能を封じられ、愛情の破綻に苦悩する女性の物語がつづられる。

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