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【芸術祭の島(4)】“廃墟”を再生 産業遺産を現代アートに

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【芸術祭の島(4)】
“廃墟”を再生 産業遺産を現代アートに

 平成20年、直島福武美術館財団による「精錬所」美術館が開館した犬島は、2年後に開かれた初めての「瀬戸内国際芸術祭」に参加。約3カ月の会期中に来島者数は約8万4千人にのぼり、その後も「現代アートの島」として国内外から観光客を集める。

  美術館は、廃墟に残る建物跡や銅の精錬過程で発生する不要物で作った「カラミ煉瓦」などの産業遺産を使い、太陽や地熱などの自然エネルギーを利用した建築。環境システムも含めアート作品であり、日本の近代化と環境に思いを巡らせる空間にもなっている。

 「古い物の中から新しい物を感じる」。平成生まれの若い旅人たちは、次田さんに、そう島の印象を語るという。

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 精錬業が最盛期の頃、犬島は煙突から出る亜硫酸ガスに覆われた。「島全体に緑なんかなかった」ことを、次田さんは覚えている。今は島のあちこちに植物が広がり、緑は再生されている。

 「70歳以上が9割」(次田さん)という島の住民も、現代アートをきっかけに新しい生き方と希望を見いだしている。

 「廃墟」で次田さんと一緒に遊んだ池田栄さん(70)は数少ない食事処のひとつ「島食堂」を経営。美術館がオープンしてからは、スタッフとしてチケットセンター内にあるカフェでも食事をふるまう。「観光で来た若い人たちとのおしゃべりが楽しい」と笑顔をみせる。

 2回目の芸術祭が迫った島では、作品を手がける若手芸術家と高齢の住民たちが親しげに会話をする姿をよく目にする。

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