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【河内幻視行】「旧杉山家住宅」ナゾの女流歌人育む

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【河内幻視行】
「旧杉山家住宅」ナゾの女流歌人育む

 「重要文化財 旧杉山家住宅」という木札がかかった玄関口から入ると、いっきに瞳孔がひろがった。ようやく焦点があってくると、薄暗い土間の奥に、黒光りした、楕円(だえん)形のカマドがでんと横たわっていた。大きなお釜が3つも並び、茶褐色に変色した酒樽が置かれていた。

 左手に座敷があった。だいぶ色褪(あ)せた松の襖絵が描かれ、その横手の部屋には由緒ありげな大太鼓が展示されていた。皮がめりめりという感じで破れていた。説明書には、19世紀初頭に作られたとあった。

 2階に通じる階段は2カ所あったが、1カ所はまるで西欧の邸宅にでもあるような螺旋(らせん)形であった。ちょっとミスマッチな感じがしたが、明治になって造られたのであろう。

 くねくねとした狭い階段をあがると、襖が外され、赤い絨毯(じゅうたん)を敷いた大きな部屋になっていた。杉山家に関する展示品が並んでいたが、明治15(1882)年6月11日に生まれた、惣領娘の孝子(筆名・石上露子=いそのかみつゆこ)の部屋まではわからなかった。

 2階の窓から外を眺めると、邸宅が「く」の字型のため、斜め向かい側に勾配のきつい切り妻式の黒い屋根が、白く照り輝いていた。

*  *  *

 ゆきずりのわが小板橋

 しらしらとひと枝のうばら

 いづこより流れか寄りし。

 君まつと踏みし夕に

 いひしらず沁みて匂ひき。

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