【ツボカル。】「アタック25」の世界 45年 児玉清さんの遺志継ぐ - 産経ニュース

【ツボカル。】「アタック25」の世界 45年 児玉清さんの遺志継ぐ

パネルの前で「アタックチャンス!」のときの握りこぶし姿を見せる初代司会者の児玉清さん。真摯に番組に向き合った遺志は今も受け継がれる=平成21年撮影(朝日放送テレビ提供)
3代目の司会者に就いたころの谷原章介さん=平成27年撮影(朝日放送テレビ提供)
 クイズ解答者がオセロゲームのような陣地の奪い合いを展開する朝日放送テレビ(ABC、大阪市)制作の「パネルクイズ アタック25」。視聴者参加型のクイズ番組が少なくなった今も、昭和50年の開始から変わらぬルールで続く。息づくのは平成23年に死去した初代司会者、児玉清さんの遺志とスタッフの情熱だ。(渡部圭介)
スタッフの「義」
 ABC内で語り継がれている話をまとめると、番組のヒントになったのはオセロ。スタッフの一人が、クイズとオセロのような陣地の取り合いを重ねたら面白いのではないか、と考えついた。
 4色の紙を用意し、4人でクイズの代わりにじゃんけん。勝者がマスに自分の色の紙を置き、オセロのようなルールでゲームをすると手応えを感じたという。
 司会は別のクイズ番組で司会経験がある俳優の児玉さんに打診したが、難色を示された。元プロデューサーの岩城正良さん(57)は「前のクイズ番組の視聴率がいまいちで、児玉さんの中には『失敗したくない』という意識があったのかも」と話す。
 それでも児玉さんが受け入れたのは、スタッフの熱意に押されたから。児玉さんは後年、周囲に「何度も(交渉に)来てもらって『義』を感じた」と明かしたという。
クイズ番組の本質
 児玉さんの番組にかける思いの強さを物語るエピソードは限りない。岩城さんが挙げるのは、ドイツ語に関する問題が出たときのこと。解答者の答えが「聞いたこともない想定外の内容」(岩城さん)で、正誤が判定できず収録をいったん止めた。
 大学でドイツ文学を学んだ児玉さんも分からず、自ら知り合いの大学教授に電話して相談。誤答であることを確認した。岩城さんは「児玉さんはもはや司会者じゃない。スタッフの一人だった」と振り返る。
 「児玉さんが解答者に怒ったことがある」と明かすのは現プロデューサーの秋山利謙さん(60)。パネルの獲得争いで優位に立てる角の周囲しか選べないとき、角が取れる〝その次〟をにらんで、誰も解答しようとしない。
 答えが分かるのに答えない解答者たちに、児玉さんは「こんな問題も答えられないのか!」とたしなめたとか。パネル獲得の戦略より知識を競うクイズの本質を、誰よりも追究したのが児玉さんだった。
 一方で、テレビ出演に慣れていない解答者たちへの優しさにあふれた。すでに埋まっているパネルを、空けることができる「アタックチャンス」。勝負の大事な場面を前に、収録は休憩に入る。児玉さんは「あめ玉を1個なめると緊張がほぐれる」と解答者にあめを配ったという。
 児玉さんは23年3月に体調を崩し収録を休み、司会はABCの浦川泰幸アナウンサーが代行。スタッフたちは「戻るまで番組は続ける」と結束して復帰を待ち望んだが、児玉さんは同年5月に77歳で旅立った。
 児玉さんが作り上げたともいえる番組だが、「打ち切り」の話題が出たことはない。岩城さんは「長年にわたり番組を愛し、培ってくれた。そのバトンをつなごうという思いがある」と話す。
素人だからこそ
 現在、テレビで放送されているクイズ番組の多くはタレント同士で競い合うもの。視聴者に門戸を開く番組はめっきり減った。それでも続くのは〝素人参加型〟だから。秋山さんは「緊張したり、慌てたりする人がいる。パーフェクトを意識したとたん、ペースが変わる人もいる。テレビ出演に慣れていない人だからこそ、先が読めずに飽きない」と分析する。
 昨年からプロデューサーとして番組を担当している中川翔子さん(33)は入社間もないころ収録を見学し、児玉さんからあめ玉をもらった一人。生まれたころには番組がある世代だが、「担当に決まったら、親戚中で話題になった」と歴史の重みを感じつつ、「最後までどうなるか分からない。アタック25のルールは本当に秀逸で、変えたくない」と語る。
 番組は今年、〝45歳〟を迎えた。
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 ABC・テレビ朝日系列で日曜午後に放送されているクイズ番組。解答者4人が赤、緑、白、青に分かれ、5×5(1~25番)のパネル獲得枚数を競う。
 最初の正答者は真ん中(13番)を獲得。オセロゲームと同様に、自分の色で縦横斜めに挟んだほかの色を、自分の色に変えられる。パネルの最多獲得者は25マスを一つの画面にした映像クイズに挑戦。映像は自分の色のマス目の部分だけ見ることができる。
 終盤の目玉は、正答者がすでに埋まっているマスを空けられる「アタックチャンス」。放送開始から半年後に導入され、序盤に大差が付いても逆転できるよう編み出された。出題前に児玉さんがこぶしを作りながら「アタックチャンス!」と振るスタイルは、現司会の谷原章介さんにも受け継がれている。
 参加希望者はまず、予選のペーパーテストに臨む。基準点は非公表だが、通過率は1~2%の難関。問題の傾向については「公務員試験のテキストを見ていると参考になる」(秋山さん)。その後、面接を経て出演候補者をストック。好取組になるよう、テストの点数が同じくらいの4人をそろえるようにするという。