【軍事ワールド】最新ステルス機、全部見せます-X-2、初のフル公開 岐阜基地航空祭  - 産経ニュース

【軍事ワールド】最新ステルス機、全部見せます-X-2、初のフル公開 岐阜基地航空祭 

地上展示で初めて公開された実験機X-2の機体後部。「秘密」だった推力変更パドルの詳細が見える(岡田敏彦撮影)
 航空祭が集中する秋を迎え、航空自衛隊岐阜基地(岐阜県各務原市(かかみがはらし))でも10日に航空祭が行われた。目玉はステルス機能を持つ先進技術実証機のX-2。これまで一般に公開していなかった推力変更パドルを持つ機体後部を初めて披露し、多くの観客が記念撮影した。
全部見せました
 X-2は岐阜基地の飛行開発実験団に配備され、2016年4月の初飛行以来、専門の試験隊がステルス機能や新型高出力エンジンなど各種装備の試験を実施。1年7カ月の間に34回の飛行を重ね、17年10月に最後の飛行を実施。以降、岐阜基地に保管されている。一昨年から同基地祭で公開されてきたが、機体後部の形状はレーダーに探知されにくいステルス技術の最重要部とされ、公開時には観客は機体の後ろへ回ることができないよう、機体を格納庫に収容し、観客は格納庫の入り口側からしかX-2を見られないよう位置を制限していた。
 ところが今回は、機体を格納庫から全て出して見学者に応える大サービス。なかでも注目は推力変更用のパドルだ。ジェットエンジンの噴流の向きをノズル(ジェットの出口)で変えることができ、ベクタード・スラストとも呼ばれる技術だ。
 推力変更機構はこれまでにもスウェーデンのサーブ・ビゲン戦闘機や欧州のトーネード戦闘機などエンジンの推力方向を変更させる機構を設けた機体はあるが、これらは着陸時にエンジンを逆噴射状態にして着陸距離を短くするためのスラスト・リバーサーと呼ばれるものだ。旅客機のエンジンも「ブレーキ」として持っている機構だ。
初公開された実験機X-2のエンジン後部。推力変更パドルの形状がよくわかる(岡田敏彦撮影)
岐阜基地航空祭で例年通りの迫力ある飛行を見せたF-4EJファントム2戦闘機。2021年3月までに全機の退役が決まっており、航空祭で飛行を見られるチャンスは残り少ない(岡田敏彦撮影)
 これに対し、飛行中に推力方向を変えることは可能か、その効果は-といったことが研究され、これが推力変更の実現につながる。米国のF-11F-1タイガー艦上戦闘機を改造したROHRタイガーなど黎明期の実験機にはじまり、垂直離着陸機の英国AV-8ハリアー戦闘機、さらには推力変更によって空中戦で有利な機動を行うことを目指したロシアのSu-35や米国のステルス戦闘機F-22ラプターなどが実装している。
 最新式の推力変更機構の効果のひとつは、空中戦において旋回半径が従来機よりも小さくなることにある。敵の後ろを取り合うドッグファイトにおいて、旋回半径の小ささは重要なファクターだ。また、方向舵など舵翼の効きにくい超音速域でも推力変更で高い機動性能を得られる。コンピューターを介した最新の操縦システムとの組み合わせで、機動中にこれまで不可能だった動きが可能になることもあり、最新鋭戦闘機の重要機構のひとつとされる。
 その方法も幾種類かあり、ロシア式のようにエンジン後端をねじるように屈曲させて方向を変えるものや。F-22のように板状の耐熱金属で推力を曲げるものなどがある。X-2はエンジンの出口に3枚の板(パドル)を設け、これを動かすことで推力方向を自在に変える方式だ。雑誌などで遠景の飛行中の写真が公開されることはあったが、間近で見られるのは初めてで、多くの観客で機体の周囲には二重三重の輪ができた。
名物は異機種大編隊
 航空祭ではX-2展示のほか、実験隊という性格からほぼ全ての航空自衛隊機を抱える同基地ならではの名物、異機種大編隊飛行も実施。今年は澄んだ青空の下、輸送機のC-1から国産支援戦闘機F-2までが編隊を組んだ。
岐阜基地航空祭で公開された実験機X-2。この機体で実証された先進技術が、次期戦闘機「F-3」の開発に生かされる(岡田敏彦撮影)
岐阜基地航空祭で鮮やかな機動を見せるF-15J戦闘機。F-4EJが新鋭ステルス機F-35と入れ替わるのに対し、F-15Jは今後も日本の防空を担い続ける(岡田敏彦撮影)
2020年度末までに全機退役が決まっているF-4EJファントム2戦闘機。昭和44(1969)年度から配備が始まった。機体外面には、長期運用のために追加された補強プレートなど寿命延長策の工夫が見える(岡田敏彦撮影)
 それぞれ最高速度も飛行できる最低速度も異なり、飛行特性もバラバラの機体を同一速度で編隊飛行させるのは高度な技術が必要なのは言うまでもない。むしろ観客の安全面に重々配慮している自衛隊がこうした飛行を可能にする背景には、テストパイロットを揃えた実験団のレベルの高さがうかがえる。
 さらに今年は、T字での異機種大編隊も披露。同基地のテストパイロットコース(TPC)創設50周年を記念したという。一般的には、大型機の飛ぶ後ろ側は気流が荒れて大変(後方乱気流という)とされるが、今回のT字飛行では一糸乱れぬ編隊飛行を見せた。もちろん操縦士の訓練と腕のなせる技なのだろうが、見ている側は「あんなこと、できるんだ」と常識を疑うばかりである。
ブルーと「最後」
 今回、岐阜基地航空祭では、華麗なアクロバット飛行でブルーインパルスが来訪しなかったこともあり、岐阜基地ならではのメニューを実施。飛行実験展示と題して、開発実験団の名の通りテストパイロットが機体の限界性能を調べる際の特殊な機動飛行を行った。
 航空自衛隊では今後、12月1日に百里基地(茨城)、8日に築城基地(福岡)、15日に新田原(宮崎)でそれぞれ航空祭を予定しており、いずれもブルーインパルスが来訪しアクロバット飛行を披露する予定。1964年と同様に2020年東京五輪でも大空に五つの輪を描く構想が上がっており、実現すれば五輪以降の航空祭では観客の大幅増も予想されるだけに、「見るなら、いま」ともいえる。
 もうひとつの見所は、長年活躍してきた「ファントム2」戦闘機。昭和46(1971)年に初号機が導入され、40年以上にわたって日本の空を守り続けた「老兵」は2020年度末で引退が決まっており、今年の航空祭は、その飛行を見る貴重な機会でもある。特に百里基地ではファントム2の偵察型「RF-4E/EJ」が今年度で運用を終えるため、偵察型は今回の航空祭が「飛行」の見納めとなる。
岐阜基地航空祭で例年通りの迫力ある飛行を見せたF-4EJファントム2戦闘機。2021年3月までに全機の退役が決まっており、航空祭で飛行を見られるチャンスは残り少ない(岡田敏彦撮影)
 ※各航空祭の開催日や時間、入場の詳細などは航空自衛隊ホームページで確認してください。