【井崎脩五郎のおもしろ競馬学】最初の3冠馬セントライトの想い出 - 産経ニュース

【井崎脩五郎のおもしろ競馬学】最初の3冠馬セントライトの想い出

 セントライトは日本で初めて3冠を達成した馬の名前である。9月17日(祝)に行われるセントライト記念はその名馬を顕彰するレースだ。
 セントライトが3冠を達成したのは昭和16(1941)年のことで、この年の3月15日にデビューしている。
 「えっ、そんなに遅くデビューして、よく皐月賞に間に合いましたね」と聞かれたことがあるが、戦前のサラブレッドはみな3歳(年齢新表記)になってからデビューしたのである。当時はまだ、馬の体質が総じて弱く、調教施設も整っておらず、現在のような2歳競馬は実施することが無理だった。
 以下はセントライトのダービー終了までのローテーションである(レース名は現行のものに改称)。
  
 3月15日  新馬   1着
   30日  皐月賞  1着
 4月 5日  オープン 1着
 4月27日  オープン 1着
 5月 3日  オープン 2着
 5月10日  オープン 1着
 5月18日  ダービー 1着
  
 現在ではまったく考えられないローテーション。なんとデビュー2戦目が皐月賞なのである。
 さらに皐月賞の6日後にはもうレースに出ているし、ダービー直前のオープンは古馬相手。ここで61キロを背負って東京競馬の芝2300メートルをコースレコードで勝っている。
 当時の日本競馬はこのように、レースを調教代わりにして心肺機能を鍛える、重い斤量を背負わせて我慢強さを育てるというのが主流だったのだ。この方式に耐えたものだけが、晴れのダービー馬になれたのである。
 セントライトは秋に菊花賞を勝ったのを最後に【9・2・1・0】(数字は1着、2着、3着、着外の順)という成績で引退するのだが、『ダービー馬の履歴書』(今井昭雄/不昧堂出版)によると、主戦・小西喜蔵騎手は「大レースは知っていたようで、負けるものかと僕に言いながら走ったね。競ったらまずあの馬のものだった」と語ったそうだ。
 デビュー戦7番人気という不人気で三冠馬になったのはこの馬だけ。出世馬の代表でもある。(競馬コラムニスト)