将来を見据え、ルールを決める

野球がぜんぶ教えてくれた 田尾安志
甲子園で熱投を続けた金足農のエース、吉田輝星(撮影・甘利慈)

 100回の節目だった全国高校野球選手権大会は、例年以上に盛り上がった。優秀な選手が多かったからだ。中でも、決勝戦で途中降板するまで、一人で投げ続けた秋田・金足農の吉田輝星の活躍が目立った。こうしたときに「酷使じゃないか」との批判が巻き起こる。解決策は、球児の将来のためにどうすればいいかを考えれば見えてくる。

 吉田は地方大会からマウンドを死守してきた。甲子園で投じたのは6試合で計881球。素晴らしい投球フォームで、順調に伸びればプロでもやっていける。ただ、甲子園での投げ過ぎが将来の野球人生に悪影響を及ぼす例は少なくない。

 2013年の選抜大会で772球を投げ、ドラフト1位で楽天に入団した愛媛・済美の安楽智大。先発投手の3番手に期待されたこともあったが、高校時代の無理がたたったのだろうか。けがが多く、今のところ好成績を残せていない。

 以前のコラムでも触れたが、春、夏の甲子園の大会は大きくなりすぎた。そこで活躍することが最終目標になり、「壊れてもいい」と投げ続ける投手もいる。監督に登板を打診されれば、ほとんどの球児は「投げられます」と答えるだろう。へとへとになりながらも投げ抜く姿が、感動を呼ぶ風潮があるのも事実だ。

 一方、多くの野球選手の能力のピークは高校時代ではない。もっと成長できる、速い球を投げられる。大学や社会人、プロで花が咲く可能性があるのだ。

 指導者の立場はどうか。選手を使い続けてでも、結果を残したい気持ちがあるのは否めないだろう。「勝利の誘惑」は抗しがたい。だが、将来性豊かな選手を次のステージにきっちり送り出すのも大きな仕事だ。

 ならば、酷使を未然に防ぐ「球数制限」をルール化すべきだ。交代の義務化を受け、エースに次ぐ2、3番手の投手をどう育てるか、継投策をどう練るか…。これまでの高校野球とは違う戦い方や楽しみ方が出てくるはずだ。

 「球数制限を導入すると、強豪の私立校しか勝てなくなる」。そんな反論があるのは分かっている。だが、野放図な「野球留学」にメスを入れれば、戦力の寡占は防げる。金足農も、地元出身の選手が活躍したから全国的な人気を呼んだ一面があるはずだ。

 未来のある球児の野球人生を甲子園で終わらせてはいけない。大事なポイントだ。「有望な選手は早く負けてほしい。できれば地方大会で」。悲しい本音を漏らす旧知のプロのスカウトもいる。現状に問題があるならルールを決め、行き過ぎにストップをかけるのは大人の役目。一時の感動におぼれることなく、長い目で選手の成長を楽しみにする。そんな観戦文化が醸成されてもいい。球児にとっては酷な猛暑だったからこそ、多くの人に一考してほしい。

(野球評論家)