風呂屋のもらい風呂

夕焼けエッセー

 9月5日の午後6時頃、風呂屋が我(わ)が家にもらい風呂にやってきた。風呂屋とは、近所で銭湯を営んでいる祖父・祖母・叔母のことである。

 私が住む地域は、台風21号の影響を受けてガスや水道は通っていたものの、前日の午後2時頃から停電していた。幸いにも、私の家は翌日午前9時過ぎに復旧したが、祖父たちの家はまだ停電が続いていた。そんな経緯で、普段は釜でたいた大きな銭湯の湯船を堪能している3人が、初めて我が家の小さな風呂に入りに来たのだ。ボタンを押すと、お湯が沸くことを祖父に教えると、「すごいなあ、そりゃペッパー君もうまれるわ」と一言。ペッパー君が好きな祖父らしい言葉である。その後もシャワーのノズルの扱いに四苦八苦しながら、なんとか3人とも入浴をすませた。

 風呂上がりの祖父たちに、これまでこんなことがなかったか気になって、銭湯について聞いてみた。祖父が16歳で銭湯を継いでから今日まで54年間で、臨時休業したのは平成7年の阪神淡路大震災のとき以来だという。地震で湯船に亀裂が入り、壁のタイルがはがれ落ちたというが、急ピッチで改修工事を行って、なんと1週間後には営業を再開したのだとか。

 営業を再開して店先にのれんをかけるとき、「ありがとう。水が出ないからほんまに助かるわ」など、たくさんの温かい言葉をもらったという。

 今回の台風でも、停電や断水の影響で風呂には入れない人たちがいただろう。一刻も早くそんな人たちの身も心も温めてほしいと、そのとき思った。

寺澤泉(21) 大学生 兵庫県尼崎市