戦闘機も高齢化社会 進む軍用機の“寿命”延長計画 次はAI

軍事ワールド
長きにわたって日本の空を守ってきたF-15J戦闘機(岡田敏彦撮影)

 航空自衛隊の主力戦闘機「F-15Jイーグル」が最新仕様にアップグレードされることが事実上決定した。昭和56(1981)年に導入が始まって以来、日本の空を守る主役として飛び続けてきたが、いまやゲーム機やスマートフォンにも劣る性能の電子装備などを、最新仕様に更新するのだ。こうした“旧式機”を蘇らせるための近代化改修や寿命延長改造はいまや世界の軍隊のトレンドともいえる。日本の社会構造同様「高齢化」する軍用機の世界での対策とは-。(岡田敏彦)

 中身を一新

 改修計画は平成31(2019)年度概算要求の概要」として防衛省が8月末に発表した。F-15戦闘機については、長距離巡航ミサイルJASSM(ジャズム)などスタンド・オフ・ミサイルの搭載を含む機体改修と電子戦能力の向上として2機改修に101億円、また設計変更など関連経費で439億円を計上している。

 JASSMは射程約900キロで、正式名称は「AGM-158 Joint Air-to-Surface Standoff Missle」。導入の構想は数年前からあり、小野寺五典(いつのり)防衛相は昨年末、「相手の探知範囲や射程の圏外から日本に侵攻する部隊に対処することで、より効果的かつ安全に作戦を行えるようになる」と導入理由を説明。「専守防衛」に反しないと強調していた。

 この改修は、JASSMが最新鋭である一方で、それを搭載するF-15J戦闘機には大幅なアップグレードが必要なことを示している。F-15Jは1970年代に開発されており、最も問題なのは電子装備の旧式化とされている。

 レーダーとその情報処理装置、火器管制装置が開発されたのは70年代。民生品に例えれば8ビットパソコン時代のテクノロジーだった。空力をつかさどる外形やパワーの源となるエンジン(P&W F-100)は現在の視点でも高性能だが、JASSMの運用となると目標位置のデータリンクなどのため大幅な「中身の更新」が必要だった。

 ただ、航空自衛隊のF-15Jは、これまでにもMSIP(多段階能力向上計画)などによって全約200機のうち100機以上が電子装備の更新を受けており、今回の改修は「さらなる最新鋭化」ともいえる。

 全く新たな最新鋭機への買い替えか、あるいは少なくない予算をつぎ込んでの既存機改修か、という二者択一は悩ましい問題だが、世界の趨勢は明らかに後者の既存機改修にある。その代表例が米空軍の戦略爆撃機B-52だ。

 未来の兵器との組み合わせ

 米航空専門誌アビエーション・ウイーク(電子版)は8月末、B-52に最新の極超音速攻撃兵器を搭載する実験が行われると報じた。B-52は試作機の初飛行が1952年、つまり第二次大戦(~45)直後の技術水準で作られた大型航空機だ。

 元々は自由落下の核兵器の運用を目的に開発されたが、60年代にはベトナム戦争で大量のペイロード(兵装搭載能力)を買われ絨毯爆撃に使われた。

 同時代の航空機はほぼ全て退役しているほどの旧式機だが、昨年には機体の心臓ともいえるエンジンの換装を含めた大規模な改修計画が決まり、米空軍は2050年まで運用する方針を示している。そのパイロットは親、子、孫の3世代にわたるほどの長寿機だ。

 この長寿には運用コストが低いことなど様々な理由があるが、同誌の報じる極超音速攻撃兵器との組み合わせにおいては、B-52の機外搭載能力が高かったことがあげられる。

 B-52の後継として70年代に開発された超音速戦略爆撃機B-1や90年代開発のステルス爆撃機B-2は、爆弾やミサイルを主に胴体内に収容する前提で設計された。高速化やステルス化のためだったが、必然的に胴体兵装庫(ウエポンベイ)のサイズを超える新兵器は扱えなかった。一方、B-52は翼下にも重い爆弾類を搭載できるため、これまでにも宇宙機「X-15」の母機に選ばれるなどの実績がある。

 そのB-52に対し新たに付与された役目が、極超音速兵器「X-51Aウェイブライダー」の発射母機としての役割だ。

 X-51はスクラムジェットエンジンを搭載するドローン(無人機)で、2010年から試験飛行を開始。試験では特殊なB-52(NB-52H)の翼下に懸架され、13年にはマッハ5を記録している。同誌によると、米航空大手ボーイング社ではこのX-51で得られたデータを元にした極超音速兵器を開発中で、実用化して部隊配備する場合、その搭載母機もB-52になるという。

 老兵は戦い続ける

 米軍ではこうした“延命措置”は一般的で、近年では米空軍の地上攻撃機「A-10サンダーボルト2」に対し、金属疲労が激しい主翼の換装プログラムが実施(05年)されたほか、今年3月にはボーイング社が米海軍の艦上戦闘機F/A-18E/Fスーパーホーネットの機体寿命延長を含む近代化改修を約7300万ドルで受注。空軍のF-15Cイーグルについても、ボーイング社は設計時の飛行寿命(約8000時間)を遙かに超える32000時間の飛行が可能だとみて試験を行う一方、将来も第一線で運用するためのレーダー換装などについて研究を行っている。

 米軍以外では、イランがパーレビ王朝時代に導入した米グラマン社製の艦上戦闘機F-14トムキャットを今も使い続けていることが有名だ。1974年から計79機が引き渡たされたが、イラン革命で米国との関係が悪化。戦闘機の補修部品が入手できなくなるなか、部品の密輸や自作、カニバリゼーション(共食い整備)で悪戦苦闘するも、近年はロシアの技術援助で補修を行い延命している。

 またパキスタンでは、導入後半世紀を過ぎた仏製ミラージュ3戦闘機が現役だ。AFP通信によると1978年にミラージュ再生工場を設置し、製造元の仏ダッソー社の支援も受けて年間12機のスケジュールで“再生”を行っている。

 次世代は無人機とAI

 とはいえ、こうした延命化は、戦闘機、ひいては航空機の技術革新がスローペースとなっていることが背景にある。第二次大戦後の戦闘機は、プロペラ機からジェット機へ、さらに音速の壁を突破し、エリアルールなど最新の流体力学を導入し、可変翼やFBW(フライバイワイヤ)、高性能レーダーの小型化など、次々と新たなテクノロジーが開発され、新たな戦闘機が誕生してきた。

 ところが現在、最新の革新的なテクノロジーとは20世紀末に開発されたステルス性(レーダーに映りにくい性能)だけといえなくもない。最新鋭戦闘機とはレーダーに映りにくいステルスであり、ステルス性能を持たない機体は「そこそこの性能」と「運用コスト」で評価される時代となりつつある。

 米国やドイツでは、将来の有人戦闘機は多くの無人機を従えて飛び、AI(人工知能)に支えられて戦うものとの見方もあり、「老兵」が消えるとき、その後継者はAIとなるのかもしれない。