【経済裏読み】“国内”のクルーズ船でカジノ発見 旅行とギャンブルはやはり好相性 - 産経ニュース

【経済裏読み】“国内”のクルーズ船でカジノ発見 旅行とギャンブルはやはり好相性

イタリア船籍の大型クルーズ船「コスタ ネオロマンチカ」 =京都・舞鶴港
大型クルーズ船「コスタ ネオロマンチカ」のデッキ部分の夜景
 7月に成立した「統合型リゾート施設(IR)実施法」により、日本で2020年代半ばにカジノが開業する方向となった。しかし実は、現在も国内の旅行でカジノなどのギャンブルを楽しめる機会がある。カジノを備えたクルーズ船は、公海上なら可能なのだ。そんなクルーズ船を取材し、観光旅行との相性の良さを再認識した。同時に、さまざまなギャンブルの性格や実情に合わせて依存症対策を工夫する必要があることも実感した。
領海を出ればOK
 8月下旬、イタリア船籍の大型クルーズ船で日本海航路を取材した。舞鶴(京都府)を出発し、金沢(石川県)、境港(鳥取県)、釜山(韓国)に寄港して福岡(福岡県)に到着するツアーだ。乗客は半数以上が日本人で、他は韓国、中国、欧米などからの客だった。
 カジノを備えた大型客船に乗船するのは初めてだったので、日本の刑法で禁止されているカジノが本当に営業できるのか、半信半疑だった。すると出港して2時間ほど経った頃、免税店と共にカジノがオープンしたとアナウンスがあった。
 外国籍の船は、日本の沿岸12カイリ(約22キロ)までの領海から外に出れば、日本の刑法が適用されなくなる。このためクルーズ船は、領海を離れて公海を航行中にカジノを営業する。例えば舞鶴~金沢のように「国内」の移動でも、領海の外に出ている間はカジノ営業が可能だ。ちなみに領海外では消費税法も適用されないので、お酒や化粧品といったお土産品は免税品として買える。
 船内のカジノフロアをじっくり見た。ルーレットやカードゲームの台の近くには、米ラスベガスのカジノと同様に多数の監視カメラが設置され、不正行為を防いでいた。スロットマシンもズラリと並んでいた。
 カジノの客は、夫婦や友達同士で楽しむ姿が目立った。日本人よりも韓国人や中国人の姿が多く、皆リラックスした雰囲気でゲームに興じていた。
現金を賭けるビンゴ
 現金を賭けるビンゴゲームもあった。
 日本では、賞品に現金を賭けるくじは宝くじだけが認められ、それ以外はカジノと同様に刑法の「賭博及び富くじに関する罪」で罰せられる。しかし公海上では問題ないので、船内のステージで連日開催されていた。
 おなじみの25マスのビンゴを3連にしたカードが1枚20ドル(約2200円)で販売され、賞品は、最初にビンゴを1列完成した人(複数人の場合もあり)に各50ドル(約5600円)、さらに番号を50回読み上げるまでに25マスが全部空く大当たりなら5000ドル(約56万円)。掛け金が250倍になって戻る計算だ。
 このビンゴゲームは子供向けのショーに続いて開かれ、ショーと同じ男性司会者が進行役となり、ステージを盛り上げながら番号を読み上げていった。明らかに親子連れを狙った企画で、小学生くらいの子たちがビンゴカードを買ってもらい、穴を空けていった。親も子も、日本の刑法で禁じられたギャンブルだとは気付いてもいないようだ。
 実際には200人ほどの参加者で大当たりは1人も出なかった。その後に詳しく調べたところ、番号を50回コールするうちに25マスが空く確率は天文学的に低く、何千回、何万回繰り返してもまず当たりそうにない。
 そんなゲームを、例えば国内のショッピングセンターの催事場で毎日開催すれば、苦情が殺到しかねない。しかしクルーズ船の乗客は嫌な顔をせず、明るい雰囲気のまま散会となった。ビンゴに外れた子供たちも、相変わらず楽しそうに走り回っていた。
生活圏から離れた場所
 旅行とギャンブルの相性の良さを考察してみた。
 観光客は娯楽にお金を使う意欲が旺盛で、財布のヒモは緩い。普段は百円のカプセルトイすらもったいなく感じる親たちが、クルーズ船では2000円のビンゴカードを気前よく子供に買い与えていた。
 また、旅行中のギャンブルは、楽しい時間を過ごす手段として受け入れやすい。クルーズ船ではビンゴゲームがショーの延長のような形式で開かれ、多くの人は暇つぶしに参加していた。船内のカジノも、旅行中の暇つぶしという側面が強い。
 自分の生活圏から遠く離れた場所でのギャンブルは、依存症になりにくいという側面もある。パチンコや競馬・競艇・競輪のように、生活圏内に賭場があれば毎日のように通いかねないが、旅行中やクルーズ船内のギャンブルはそう何度も繰り返せない。
 ラスベガスやマカオ、シンガポールで、カジノを含むIRが一大産業として成立しているのは、旅行とギャンブルの相性の良さがビジネスモデルの根幹にあるからだろう。
効果的な依存症対策を
 日本のIR実施法も、海外からの旅行者の呼び込みに力点を置いている。
 カジノは外国人旅行者なら入場無料だが、日本人は1回6000円の入場料を徴収し、入場回数を7日間で3回・28日間で10回までに制限する。近隣住民が毎日のようにカジノに通いつめるのは難しい仕組みだ。設置場所は当面、国内3カ所までに限定する。
 今後、日本でギャンブル依存症対策の具体的な方策を検討する際には、日本人の入場規制が厳しいIRのカジノよりも、身近なパチンコ、競馬・競艇・競輪の方が常習性の余地が大きいことを直視し、より効果的な対策を追求していく必要があるだろう。
 一方、クルーズ船でのビンゴゲームのように、ギャンブルをギャンブルと感じさせないような運営方法は依存症対策の観点で問題があり、日本国内で認めるべきではない。タバコのパッケージに警告表示を義務化したように、すべてのギャンブルには「依存症になるリスクがある」と表示や説明を義務づけるべきだ。
 また、子供や未成年者にギャンブル依存症の恐ろしさを早期教育していくことも欠かせない。