「アップサイクル」って何? デザイン力で古着やごみから新しいものを

関西の議論
アップサイクルをテーマにしたイベントで、廃材でおもちゃを作る子供ら=大阪市浪速区のソルトバレー

 不要品にさまざまな工夫やデザインを施して、別の価値があるものに生まれ変わらせる「アップサイクル」という言葉が注目されている。「リサイクル」とは異なり、アイデア次第で新たな付加価値をつけることができるため、個人だけでなく企業なども取り組んでいる。できあがったユニークな商品は、特別なものを求める人たちのニーズもあって人気を集めているが、手間がかかることから割高になることもあり認知されるまで時間がかかるなど、課題も少なくないという。(中井美樹)

廃材からおもちゃに…子供も夢中

 大阪市浪速区のイベントスペース「ソルトバレー」で8月25日、「アップサイクルってなんなん?」と銘打ったイベントが開催された。会場では、さまざまな切り口でアップサイクルの方法が紹介されていた。

 料理屋台では、自宅で余った食材が持ち込まれていた。参加者が500円を支払うと、プロの料理人が即興でオリジナル料理を手際よく調理していく。麩(ふ)をパンに見立てたホットサンドになり、フライ麺(めん)はゴーヤやレモンペーストなどを使った個性的なソースをかけた一品に変身し、歓声があがった。

 別のワークショップでは、汚れたり穴が開いたりした衣類のアップサイクルが行われていた。草木染で染め直すほか、カラフルな刺繍(ししゅう)糸で穴を修繕するなどして生まれ変わっていく。

 なかでも、にぎわいを見せていたのが、廃材を使ったおもちゃ作りだ。革製品の切れ端や電気ケーブルなど地元企業が提供した廃材を使って、自由な発想で楽器や動物のお面などを作る。参加費は1人1500円で、作りたい放題。2歳の男児と参加していた母親(33)は「廃材がおもちゃに変わる面白さもありますが、高価なおもちゃを買わなくても、こんなに楽しんでいるわが子の姿が新しい発見だった」と目を丸くしていた。

 イベントを企画した中山沙也可さん(35)は「アップサイクルの楽しさを体験してもらいたかった」と話す。約5年前に東京で会社員をしているときに廃材からアート作品を作るイベントに参加したことをきっかけにアップサイクルの魅力に興味を持ったという。「新たな価値を生み出すのが、すごく格好よかった。しかも、誰でも取り組める気軽さもあった」と振り返る。

 その後、大阪に転居し、「アップサイクルの考え方を多くの人に知ってもらいたい」と平成28年からイベントを開催するようになった。「回数を重ねるごとに参加者が増えてきています」と、アップサイクルの輪が広がっていることに手応えを感じている様子だ。

“一点物”に大変身…若者らが驚いて購入

 アップサイクルに取り組んでいる企業も増えている。

 今回のイベントにも出展していたニット糸製造会社「澤田」(大阪府泉大津市)は、サンプルのニット生地を生かしたアップサイクルのブランド「KNOT YET!(ノット イエット)」を立ち上げた。

 これまで廃棄処分にしていたニット生地を素材にして、ミニバッグや靴を製造している。完成した商品は“一点物”としてアピールし、ウエブサイトやインテリアショップで販売している。同ブランドを担当する梅林亮さんは「環境に配慮したものづくりへの共感の輪を広げたい」と意気込む。

 一方、若者らに人気のファッションブランド「SPINNS」を全国展開している「ヒューマンフォーラム」(京都市中京区)は今年4月、アップサイクルをコンセプトにしたカフェ併設の古着店「SPINNS ビンテージ&カフェ」(大阪市中央区)を若者の街・アメリカ村にオープンした。

 来店客から持ち込まれた古着のほか、汚れや痛みがあって商品にならなかった衣類を素材にして、店内の工房でエコバッグやエプロン、クッションカバーなどに変身させて販売している。なかでもTシャツの袖(そで)と首回りの部分を切って裾(すそ)を縫い合わせたバッグは人気商品となっており、スタッフが「もともとTシャツだった」と説明すると、来店客が「斬新だ」と興味を持って購入していくという。

 同じ柄がなく他人とは違った商品が購入できるのも人気の理由で同店の大森正弘店長(31)は「若いお客さんは、別の物に生まれ変わるユニークさやデザイン性が購入時の決め手になっている」と分析している。

デザイン工夫し世界的なブランドに

 アップサイクルはもともと、循環型社会に対する意識が高い欧米で生まれた。古着を雑巾(ぞうきん)として再利用する「ダウンサイクル」とは対照的に、アイデアや工夫を加えて製品をアップグレードさせる。

 特にデザインが重要な役割を果たしており、海外ではファッションや生活雑貨を扱う企業が大きな成功を収めている。スイスの「フライターグ」は、トラックの幌布(ほろぬの)、自動車のシートベルト、自転車のチューブなどを活用して実用的でデザイン性が高いバッグを開発し、世界的なブランドに成長した。

 この考え方は10年ほど前に日本にも入ってきたが、一般的にはまだ浸透していない。

 中山さんは「アップサイクルは手間がかかるため、どうしても商品が割高になってしまう。大阪の人は『安くていいもの』が大好き。環境に良いとはわかっていても、なかなかアップサイクルの商品は買う行動につながらない」と課題を指摘する。

 梅林さんも「アップサイクルは、大量生産とは真逆のやり方。手間がかかる分、どうしても価格は高くなる」と話す。そのうえで、「国連が掲げる持続可能な開発目標に関心が高まるなど、社会やファッション業界も少しずつ変わってきている。そのなかで、アップサイクルも徐々に広まっていくのではないか」と期待を寄せる。

 実は、「アップサイクルってなんなん?」というイベントが行われた3階建てのビル「ソルトバレー」もアップサイクルで生まれ変わった建物。防犯カメラなどの施工会社「コムプランニング」(大阪市浪速区)が同市中央区から本社移転をした際に、廃屋となっていた隣接民家も含めて購入。廃材などを活用してギャラリーやキッチンなどコミュニティーをつくりだす空間にしたという。

 中山さんは「これからも、どうすればアップサイクルに関心を持ってもらえるか模索したい」と意気込んでいる。