【名伯楽の挑戦(5)】岩谷産業陸上競技部を優勝に導く 広瀬永和さんの新たな目標「もう一度、世界と戦えるところまで」 - 産経ニュース

【名伯楽の挑戦(5)】岩谷産業陸上競技部を優勝に導く 広瀬永和さんの新たな目標「もう一度、世界と戦えるところまで」

 マラソンランナー、野口みずきさんを20年近く指導した広瀬永和(ひさかず)さん(53)のインタビューは最終回。野口さんが引退し、一区切りつけた後、広瀬さんは新たな挑戦を始めた。オファーをもらい「すごく魅力を感じた」という広瀬さんは、2017(平成29)年春、岩谷産業陸上競技部の監督に就任した。創部のときに立ち上げた明確な目標は平成31年全日本実業団対抗女子駅伝予選会突破、33年に本戦8強、35年の優勝。五輪金メダリストを育てた名伯楽は新たな挑戦を始めた。(聞き手 坂井朝彦)
女子マラソン五輪金メダリストの野口みずきさんを育てた広瀬永和さん。創部したばかりの岩谷産業陸上部でも駅伝やマラソンに挑む=大阪市中央区本町の岩谷産業本社
選手集めは初めての経験
 --岩谷産業では選手集めに最初、苦労されました
広瀬 チームづくりをやっていく中で初めての経験だったので楽しさでもあるかなと。力的にトップの選手は来てくれなかったんですが、本当に(打ち込んで)やりたい選手とか。新鮮でした。
 --実業団移籍組の今田麻里絵、高野智声(ちな)両選手を除いて高校出の選手ですね
広瀬 高野は(入りたいと)会社に電話してきて、変わった子だなと(笑い)。今田ももう一度、陸上競技をやりたいということでした。
 --いろんなタイプの選手をどう指導されていますか
広瀬 (指導法を)悩んだというより、すごく考えましたね。野口のレベルから、いきなり高校生レベルのところから始めないといけない。最初は戸惑った部分もあったんですけど、教えていくとか、(方針を)説明していくとか、一から全部やるわけですよ。ちょっとずつ選手がそれを理解したりとか、記録がちょっとずつ伸びていくというのは、レベルは違うんですけど、おもしろい。
タイムを伸ばす選手たち
 --みなさん着々とタイムを伸ばしています
広瀬 (昨春は)まだまだ力がないと思ったんですけども、夏を越えて秋から冬へと過ごしていく中で、どんどんどんどん吸収し、結果を出している。そんなにまだ練習してないんですよ。そのあたりのギャップがありすぎて。思っているよりも伸びている。
 -岩谷産業ではこの時期、選手は週3回、午前中に勤務していますね
広瀬 練習もそうですが、社会人としての生活がちゃんとできているかも大事なんです。意外と大変なんですよ。朝5時前に起きて、勤務のときは5時半くらいから練習やるんですね。7時半くらいには(大阪府箕面市の)寮を出るわけです。それが大変ではなく、当たり前だって思ってほしい。一般の人は朝早くから夜遅くまで働いている。自分たちは時間をもらっているので、本当に真剣にやらないとダメ。
2016年3月、名古屋ウィメンズマラソンでゴールして広瀬監督に迎えられる野口みずき=ナゴヤドーム(撮影・森本幸一)
 --今春は3人の新人が加わり、駅伝に参加できます
広瀬 「8人で何とか出たいな」とは選手にいっています。当然、自分たち1人1人の頑張りがチームの力になるんで、「いまはちゃんと練習をやって秋に備えよう」と言っています。
「ぶれずに、やる」 
 --創部のときに平成31年全日本実業団対抗女子駅伝予選会突破、33年に本戦8強、35年に優勝という意欲的な目標を掲げていました。そこはいまもぶれていませんか
広瀬 ぶれずに。予定からいうと、今年は予選に出るだけでいい(笑い)。でも、やっぱり出るからには戦いたいし、いまの状態、戦力であれば、みんながけがなくやれば、そこそこいけるかなという手応えはあります。
 --一からつくりあげる夢のある活動です。マラソンでの活躍も念頭にありますね
広瀬 これから強くなっていく選手もいるし、そうでない選手もいるでしょう。本当にトップを目指す選手が出てくれば、もう一度、野口が金メダルを取ったような練習をやらせてあげたいなっていうのはあります。本当に世界と戦えるところまで(選手に)来てほしいな、させたいなっていうのがあるんですよ。(終わり)
創部したばかりの岩谷産業陸上部で駅伝やマラソンに挑む広瀬永和監督=大阪市中央区本町の岩谷産業本社
プロフィル
 ひろせ・ひさかず 昭和40年7月16日生まれ、兵庫県出身。兵庫・西脇工高、立命大の長距離選手をへて、平成3年にワコールにコーチとして入社。11年に野口みずきとともにグローバリーへ移り、16年には野口がアテネ五輪女子マラソンで金メダルを獲得。17年にシスメックス入りし、28年5月の退任時は総監督。同年6月から岩谷産業の陸上競技部創部に携わり、監督を務める。