100円玉の重みで自動車が傾いた…ゲームブームの元祖「スペースインベーダー」40周年の軌跡

関西の議論
床の画面に表示されたボールを蹴ってインベーダーを倒していく「アルキンベーダ-」=大阪市北区(彦野公太朗撮影)

 ゲームセンターの主役で一大ブームになったビデオゲーム「スペースインベーダー」が、誕生から40周年を迎えた。開発したゲームメーカー「タイトー」(東京都)は、JR大阪駅前の複合商業施設「ヨドバシ梅田」(大阪市北区)内に専門店を期間限定で展開するなど、節目の年を盛り上げようとしている。昭和53(1978)年、ゲームセンターや喫茶店、駄菓子屋などいたるところにゲーム機が設置され、子供から大人まで熱狂。「名古屋撃ち」といった攻略法が話題になるまでになった。当時を知る同社担当者がブームを振り返った。(上岡由美)

最新技術を駆使したアトラクションに「懐かしい」

 約200平方メートルの専門店「SPACE INVADERS ROOM(スペースインベーダールーム)」に入ってみると、最新の技術を駆使した4種類の体感型デジタルアトラクションが展開されていた。

 「アルキンベーダー」は、床と壁に投影されたインベーダーの大群を、画面上のボールを蹴って撃ち落とす。「ノボリンベーダー」は、ボルダリングと組み合わせたゲームだ。壁の突起につかまって上り下りしながら敵を倒していく。

 試しに、最大8人同時にプレーできる「スペースインベーダーギガマックス」を体験した。プレーヤーが壁に向かって一列に並び、砲台を左右に動かして敵の攻撃を避けながら高い点数のインベーダーを狙い撃ちする。40年前とは映像も音響も違うが、ひたすらに連射しているうちに喫茶店でゲーム機に向かっていた頃を思い出す。

 「あのゲームにいくらつぎ込んだか」と当時を懐かしむ男性がいたかと思えば、当時を知らない世代には新鮮なゲームに映っているようだ。ゲームを楽しんでいた京都市の男性会社員(47)は「親から何度も『遊んではダメ』と注意されたけど、ずっとゲームの世界に入り浸っていました。本当に懐かしい」と笑顔を見せる。

100円玉の入れすぎで硬貨が入らない…

 スペースインベーダーが発表されたのは昭和53年6月16日。

 しかし、当時営業を担当していた同社の石井光一会長(62)は「発売当初は、あまり期待していませんでした」と明かす。実際に遊んでみるとすぐにゲームオーバーとなってしまい、「これはお客さまにウケないだろう」と判断したという。

 ところが、発売から1、2週間後、ある店舗からゲーム機が故障したと連絡が入った。調べてみると、100円玉を回収するコインボックスが硬貨であふれかえっていたことがわかった。「設定では千枚ぐらいは入るはずで、これはすごいことになっているとビックリした記憶があります」と振り返る。

 スペースインベーダーはアーケードゲーム史上最大のヒット作となり、ゲームセンターだけでなく、高い収益性から喫茶店やスナック、駄菓子屋など「とにかくテーブルのある場所には設置した」(石井会長)。当時は年齢制限や営業時間の法的規制などもなく、24時間どこででもゲームができる環境にあり、ブームは瞬く間に日本中に広がっていった。「お金の回収に店舗を回りましたが、トランクに入れた硬貨の重みで自動車が大きく後ろに傾いたものです」と石井会長は当時の思い出を語った。

「コンピューターと対戦」の目新しさ

 大阪府岸和田市出身で、ゲームの「生みの親」といわれる元タイトー社員、西角(にしかど)友宏さん(74)は、インベーダーブームが起きた理由について「敵が攻撃してくるという、過去にはなかったシューティングゲームだったことが大きい」と分析する。これまでのゲームはブロック崩しのように、プレーヤーが一方的に攻めるだけだったが、スペースインベーダーはコンピューターと対戦する目新しさがあったという。

 それに加えて、タコやイカ、カニをモチーフにしたシンプルな敵のキャラクターも人気を呼び、「名古屋撃ち」などと呼ばれる攻略法も話題に。「左右に動いて敵を撃つというシンプルな操作性も、多くの人に遊んでいただくことになった思う」と話した。

 しかし、インベーダーゲームをしたい若者たちによるゲーム代欲しさの恐喝事件や窃盗事件が多発。未成年が深夜に繁華街を徘徊(はいかい)するなどの問題も表面化し、教育現場が対応に追われる騒ぎに発展した。翌54年6月、全日本遊園協会が「インベーダータイプ・ゲームマシン運営自粛宣言」を出したことで、ゲームセンターへの来場者が激減。社会現象にまでなった爆発的なブームは、アッという間に終息することになった。

 タイトーは今年1月、「PLAY! スペースインベーダー展」と題した40周年記念イベントを東京・六本木ヒルズで開催。縦約7メートル、横約15メートルの展望台の窓にプロジェクションマッピングでゲーム画面を投影し、夜景に浮かぶインベーダーを撃退するという大がかりな演出で往年のインベーダーファンらを喜ばせた。

 西角さんは「40年たっても、スペースインベーダーの魅力は変わりません。遊んだ世代はもちろん、知らない世代にも、さまざまな角度からゲームの醍醐味(だいごみ)を楽しんでいただけたら」と話している。

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 SPACE INVADERS ROOMは来年1月27日まで開催。営業時間は午前9時半~午後10時。料金は1回600円、4回2千円。問い合わせは同店(電話06・6467・8815)。