25年万博選挙まで100日切る 日本の勝算は? 誘致戦略ラストスパート

関西の議論

 日本政府が大阪への誘致を目指す2025年国際博覧会(万博)の開催地決定選挙(11月23日)まで、残り100日を切った。政府は投票権を持つ博覧会国際事務局(BIE、本部パリ)加盟各国に対し、地域ごとに戦略を立てて働きかけを強化。ライバル国と水面下で火花を散らしながら、誘致合戦のラストスパートをかけている。(有年由貴子)

イベント会場で火花

 7月14日のフランス革命記念日に合わせ、パリで開かれた外交団向けイベント「ディプロマティック ガーデンパーティー」。気温30度を超える猛暑の中、25年万博の立候補国である日本と、首都バクーでの開催を目指すアゼルバイジャンの誘致PRバッグを手に会場を行き交う人の姿が目立った。

 このイベントは仏外交専門誌が主催。在仏の各国大使館や国際機関、欧州の主要機関の関係者らが多数招待されるため、日本とアゼルバイジャンは万博誘致をアピールする絶好の機会とみてPRブースを出展した。

 ただ、日本政府関係者らによると、出展を打診した数カ月前、主催者側から「アゼルバイジャンが多額のイベント参加費を投じたので日本は万博色を前面に出さないでほしい」という要請があった。アゼルバイジャンに先手を打たれた格好で、表向き「日本の魅力」だけをアピールすることを余儀なくされた。

 イベント当日、日本のブースでは着物姿のミス日本が登場、浴衣を着た女性スタッフらがお好み焼きや梅酒などをふるまい、「おもてなし」をアピール。万博については、その傍らで会場のイメージ映像などを流した。それでも誘致特使としてグッズが配布されたアニメのキャラクター「ポケットモンスター」の人気もあり、ひっきりなしにリピーターが訪れる盛況ぶりだった。

 アゼルバイジャンのブースも民族衣装を着たスタッフが串焼きやチーズ、地域のお菓子などを提供して人気を集めたが、PRを担当した大阪府職員は「日本も良い勝負ができたと思う」と話した。

オイルマネーに警戒

 25年万博をめぐっては、エカテリンブルクで開催を目指すロシアを加えた3カ国が立候補。開催地は今年11月のBIE総会で、加盟170カ国のうち投票権の条件であるBIE分担金を支払った国の投票で決まる。

 佳境を迎えた誘致レースで、日本の誘致関係者らがとりわけ警戒を強めるのがアゼルバイジャンだ。産油国のアゼルバイジャンは、豊富なオイルマネーによる90カ国の途上国への経済支援を打ち出し、カスピ海地域での初開催などを強くアピールしている。

 近年の万博開催地は、テーマを絞った認定博を含めると、昨年はカザフスタン、20年はアラブ首長国連邦が誘致を勝ち取るなど新興国の躍進が目立つ。ロシアは今夏にサッカーワールドカップを開き、日本は過去の大阪、愛知の両万博開催実績に加え、20年には東京五輪を控える。日本の誘致委関係者は「アゼルバイジャンの『未開催地で万博を』というアピールは、アフリカや中南米など中小国を中心に響きやすい」とみる。

地域ごとに戦略

 BIE総会での選挙は、最初の投票で立候補3カ国のうち、3分の2以上の票を得る国があれば開催地に決まるが、届く国がなければ最下位を除外。上位2カ国で決選投票を行い、過半数の票を得た国に決定する仕組み。ただ、関係者によると、現時点で資金不足などによる分担金滞納のため投票権が失効している国も一定数あり、11月の総会の時点で投票権を持つ国の数は投票直前まで分からないという。

 選挙を勝ち抜くためには最低限過半数の得票が必要だが、日本政府に対し明確な支持表明があった国は「現時点では過半数に達していない」(政府関係者)という。

 支持拡大のため、政府は地域ごとに誘致戦略を立てる。特に欧州諸国を重要視。「投票権を有している国が多く、票読みが固い」(政府関係者)とみる。

 欧州諸国は夏のバケーション後に本格的な投票先の検討に入るとみられ、日本は国、経済界、地元自治体の三位一体で重層的に働きかける。親日国が多いアジア・大洋州地域でも取りこぼしがないよう票固めを図る予定だ。

 国によっては総会で投票を行う政府代表が本国の決定に従わないケースも想定されるといい、誘致委幹部は「投票直前まで絶対に気が抜けない」と指摘。ある日本政府関係者は「ロシアやアゼルバイジャンについては水面下で札束が飛び交っているという話を噂レベルでよく聞く」とも明かす。

 吉村洋文大阪市長(誘致委副会長)も8月16日の定例会見で、「投票権者に個別にアプローチしていくのが大事。最後まで細かにやりつくしていく」と気を引き締めている。