【関西の議論】さよなら関電トロバス 黒部名物「無軌条鉄道」 別れ惜しむ鉄ちゃん大集結 - 産経ニュース

【関西の議論】さよなら関電トロバス 黒部名物「無軌条鉄道」 別れ惜しむ鉄ちゃん大集結

今年で姿を消す関電のトロリーバス。特別にラッピングした車両で運行している=長野県大町市の扇沢駅
今年で姿を消す関電のトロリーバス。特別にラッピングした車両で運行している=富山県立山町の黒部ダム駅
今年11月末で廃止される関電トンネルのトロリーバス
トロバスは関電トンネル内を運行。扇沢駅から黒部ダム駅までを16分で結んでいる
 長野県と富山県を結ぶ「立山黒部アルペンルート」の関電トンネルを走るトロリーバスが今年11月末に廃止され、約54年間の歴史に幕を閉じる。「トロバス」の愛称で親しまれた一風変わった“鉄道”は、運行開始から完全無事故。累計約6千万人の乗客を運び、来年から役目を電気バスに譲る。運行する関西電力はラストイヤーに合わせて多彩なイベントを開催。多くの鉄道ファンが名物車両との別れを惜しんでいる。(林佳代子)
 多彩な引退イベント
 トロバスは、長野県大町市の扇沢駅から富山県立山町の黒部ダム駅までの6・1キロを16分で結んでいる。もともとダム建設時の運搬路だった関電トンネルで、昭和39年8月に運行を開始し、雪に閉ざされる冬場を除いて営業を続けているが、関電が昨年8月、老朽化とコスト削減を理由に電気バスに切り替えると発表した。
 関電は運行最終日となる11月30日まで引退を盛り上げるキャンペーンを展開。歴代のトロバスの画像を印刷した記念乗車券を販売したり、ロゴマークをラッピングしたトロバスを走らせたりしている。
 さらに、今年は石原裕次郎さん主演の映画「黒部の太陽」の上映50周年にもあたることから、大町市と協力し、黒部ダム周辺で映画の撮影セットのレプリカなどを展示。最終日には引退セレモニーも予定する。
 鉄道模型製造大手のトミーテック(栃木県壬生町)は10月、実物の150分の1サイズの車両模型を発売。車内に座席を並べるなど本物そっくりに見える工夫を凝らし、鉄道ファンの需要取り込みを図る。
 54年間「完全無事故」
 トロバスは外観はバスだが、屋根には集電装置「トロリー」があり、電車と同じように架線の電気を使って動くことから「無軌条電車」と呼ばれる。法的にも鉄道に分類され、運行にはバスを運転するための「大型2種免許」だけでなく、電車の運転に必要な「動力車操縦者運転免許」を取得しなければならない。
 国内発の無軌条電車は昭和3年、兵庫県川西市に誕生したが、4年あまりで廃止された。その後も大阪市や横浜市で開業したが、いずれもディーゼルバスに取って代わられ、高度経済成長期に姿を消した。
 ところが、トロバスは排ガスを出さないため自然環境にやさしく、急勾配に強かったことから半世紀以上にわたって運行を続けられた。これまで物損事故を含めて「完全無事故」の記録を誇っている。鉄道ファンの思い入れは強いといい、「今年は引退を惜しむ乗客が多く訪れている」(関電関係者)という。関電トンネルでの運行が終わると、国内のトロリーバスは同じ立山黒部アルペンルートで、立山黒部貫光が運営している立山トンネル(室堂-大観峰)が唯一の運行区間となる。
 運転士は代わらず
 関電は7月、トロバスに代わって導入する電気バスを報道陣に公開した。全長は11メートルでトロバスとほぼ一緒。定員は80人と8人増えるが、座席数は32席と4席減った。1回の充電で30キロ走行可能という。
 トロバスよりも床を低くして乗り降りしやすくしたほか、景色がよく見えるように窓を大きくした。外観は白を基調とし、北アルプスの雪を表現。計15台で来年4月中旬から営業運行を始める予定だ。
 運転は「大型2種免許」を持っているトロバスの運転士が引き続き担当する。関電の担当者は「トロバスの無事故運転を引き継ぎ、安全最優先で運行を続けていきたい。多くの人に親しまれる黒部の新たな名物になってほしい」と話している。