【今週の注目記事】晴れの国おかやま」襲った豪雨…自治体の「災害少ない」PRが準備遅らせたか - 産経ニュース

【今週の注目記事】晴れの国おかやま」襲った豪雨…自治体の「災害少ない」PRが準備遅らせたか

岡山県倉敷市真備町の市立川辺小学校の校庭には昭和51年に発生した台風17号による浸水の水位を示す石碑がある
「晴れの国おかやま」をPRする岡山県のポスターと広報紙
 7月の西日本豪雨で広島、愛媛両県などともに甚大な被害を受けた岡山県。これまでは「晴れの国おかやま」をキャッチフレーズに「災害が少ない」とPRして移住・定住の促進などを図ってきたが、今回の水害では倉敷市真備町地区だけで51人の犠牲者を出すなど、そのイメージは大きく損なわれた。水害のみならず、遠くない将来に発生する南海トラフ巨大地震を念頭に、「災害の発生は時と場所を選ばない」という警戒の姿勢へと軌道修正が求められている。(吉村剛史)
「晴れの国」の根拠とは
 「災害が少ないという漠然とした信頼感が、(県民の)避難の遅れにつながった可能性は十分にある」
 豪雨発生後に会見した岡山県の伊原木隆太知事は沈鬱な表情でこう語った。影響自体は検証できていないとした上で、「災害が少ないことイコール安全ではないと発信してきたつもりだが、油断があった」と唇をかんだ。
 県は、気象庁が公表する平年値(過去30年間の降水量や気温などを平均した値で10年ごとに更新)のうち、全国都道府県庁所在地などの年間の「降水量1ミリ未満の日数」が最多であることを理由に、平成元年以降「晴れの国おかやま」をアピールしてきた。
 ただし、年間降水量が全国で最少というわけではなく、意図的な対外イメージづくりだったとの指摘もある。
本当に「地震が少ない」?
 同時に県は大正12年~平成27年までに県内の震度4以上の地震回数の少なさの比較で、全国3位の16回だったことなどを強調し、「晴れ」の明るいイメージとあわせて「災害が少ない」とし、移住・定住促進に力を入れてきた。
 ただ、この調査でも最少は佐賀(8回)で、岡山が首位というわけでない。「全国の中で比較的少ない」ことに着目したキャッチフレーズといえる。
 また県が作った「移住・定住ガイドブック おかやま晴れの国ぐらし」では、「震度1以上を観測した地震は、平成23~27年の過去5年間で93回程度です。震度3は6回、震度4は2回で、ほとんどが震度2以下となっております」と紹介されている。
 こうした地震(災害)が少ないという発信の成果は、特に平成23年の東日本大震災以降に顕著で、認定NPO法人ふるさと回帰支援センターの「移住希望地域ランキング」によると、岡山県は23年は全国15位だったが、東日本大震災翌年の24年は一気に2位に浮上。25~26年3位、27年5位と近年は上位に入っている。
 また県が実施した28年度上半期の県外からの移住者を対象にしたアンケートで、移住の理由について「災害が少ない」と答えた割合が25・6%で最も高かった。
 対外的な影響だけでなく、今回の豪雨の被災地を中心とする多くの県民も「大きな災害はないと思っていた」と証言しており、もともと自主防災組織率の低さなどは県の長年の課題だった。
「水に悩まされたきた」歴史も
 歴史的に見れば岡山は「水に悩まされてきた地域」という印象も根強い。天正10(1582)年、豊臣秀吉が川の水を引き込み城を孤立させた備中高松城(現在の岡山市北区高松付近)水攻めや、天正19(1590)年とする説が有力な吉井川の氾濫・大洪水で、日本刀の産地の備前長船の刀工らが大打撃を受けた歴史が知られるためだ
 近代でも明治17(1884)年には現在の倉敷市福田町古新田を高潮が襲った。また同26(1893)年には県内で423人もの死者を記録した大洪水が発生。その際、現在の倉敷市真備町地区と総社市の一部では164人が溺死したとされている(吉沢利忠著「沈む島消えた町-瀬戸内のミステリー」昭和59年、山陽新聞社)。
死傷者1万5000人を想定
 地震も直接的な震源ではないが、被害が出ている。昭和21(1946)年、和歌山県潮岬沖で発生したマグニチュード(M)8の昭和南海地震では、岡山県でも死者52人、負傷者162人、建物被害は全壊1201戸、半壊2707戸にのぼり、線路の沈下や堤防の決壊、道路の損壊などがあった。
 被害をもたらした要因は、地震動に伴う土地の液状化とされ、干拓地と沖積層の地域で被害が多発。噴水や噴砂などの液状化現象特有の記録が残る。
 岡山県では昭和南海地震の際の津波は高さが1メートル以下で被害記録はないが、江戸時代の安政南海地震(1854年12月24日、M8・4)では、最高5メートル程度の津波が発生したとも。
災害を警戒し災害に強い県へ
 過去約100年のデータからみて、岡山県は他地域に比べると活断層も地震活動も少ない。しかし、水害も含め被害がまったくなかったということではない。
 しかも岡山大の地震地質研究者は「100年程度のデータでは地震の起こりかたを議論するには不十分という見方もあり、今後も少ないという保証はない」と指摘。県内は活断層が目立たないが、地形には現れない「隠れ活断層」の評価は研究途上にあり、科学的に熊本地震と同レベルの地震がないとは断言できないという。
 さらに今後発生が想定される南海トラフ巨大地震では、県危機管理課は「最悪の場合、M9クラスで最大震度6強の地震が発生し、津波などによって(県内の)死者は3111人、負傷者は1万1745人に達する」と被害を想定している。
 現在、検証などの対応に追われる県だが、今後は「災害を警戒し、万一災害があっても強い」という態勢づくりが急務で、岡山のアピールの方法も含め軌道修正に迫られている。
(8月24日掲載)