相次ぐ「想定外」災害受け鉄道各社、早期復旧へ備え 優先点検やツイッターでの運行情報発信 - 産経ニュース

相次ぐ「想定外」災害受け鉄道各社、早期復旧へ備え 優先点検やツイッターでの運行情報発信

 大阪北部地震や西日本豪雨で甚大な輸送障害が発生した鉄道各社は、災害で損傷しにくい車両の検討やツイッターを活用した運行情報の発信、早期復旧に向けたマニュアル整備など対策を急いでいる。これまで進めてきた災害対策が一定の効果を上げたものの、「想定外」の部分で被害が出るなど脆弱(ぜいじゃく)性が露呈。鉄道会社の関係者は「経験した災害を教訓に、新たな対策を続ける他はない」と話している。(前川康二)
鉄道各社が進めている自然災害への主な対策
M7クラスの地震にも耐えられる想定だったが…
 「ここまで復旧に手間取るとは思わなかった」。6月18日朝に発生し、最大震度6弱を観測した大阪北部地震について、大阪モノレールを運行する大阪高速鉄道の担当者は振り返る。
 地震でモノレールの軌道を切り替えるポイント(分岐器)が故障。所有する全21編成の約半数で振動を吸収する部品が外れかけているのが見つかった。車両の台車枠が変形しているのも確認され、結局平常ダイヤに戻ったのは地震の10日後だった。
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 同社は平成26年度までに駅舎や軌道の耐震補強工事を完了。マグニチュード7クラスの地震にも耐えられる想定だったが、「車両トラブルでの長期運休は想定外」(担当者)で、同社は8月上旬に検討委員会を設置。地震に強い車両の検討などの方策を来年3月末までに取りまとめる予定だ。
リスク顕在化
 大阪北部地震では、JR西日本も不測の事態に見舞われた。地震発生を受けてJR西は「おおむね震度5弱以上の揺れを観測した場合は列車を緊急停車させる」とするマニュアルに基づき、全線で運転を見合わせ施設の点検を実施。だが駅間に止まった列車を車庫に移動させるのに手間取った上、作業員を乗せた車が渋滞に巻き込まれたため、大部分の路線で運転を再開したのは地震発生から半日以上たった午後11時過ぎだった。
 これを教訓にJR西は、早期復旧に向けて優先的に点検する場所を決めるほか、駅間で止まった車両から乗客を誘導するマニュアルの整備などに着手。再開見込みがずれ込み、利用客の混乱を招いたことからツイッターを使った運行情報の発信も始めた。
 鉄道の災害対策に詳しい京都大大学院の杉山友康特定教授(災害リスクマネジメント工学)は「災害時にはこれまで見えなかったリスクが顕在化する。大切なのは得られた教訓を次の災害への備えに生かすことだ」と強調する。
 実際、同社は7年の阪神大震災以降、線路や駅舎などの設備の耐震補強を進めており、大阪北部地震でのこれらの被害は軽微だった。
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人命を最優先
 大阪北部地震の被害は大阪メトロにもあった。御堂筋線の中津-江坂間で、線路と並走して設置され、車両に電力を供給する「サードレール」が脱落。運転再開が夜間にずれ込んだ。南海トラフ巨大地震への対策として今年度からサードレールの耐震工事を始める予定だったといい、この工事と駅の浸水を防ぐ止水鉄扉の設置、橋梁(きょうりょう)の補強などの災害対策費として約160億円を見込む。
 7月上旬の西日本豪雨でも、中四国の鉄道路線などに被害が出た。ただJR西によると、大阪環状線の全線(21・7キロ)と東海道・山陽線の野洲(やす)-西明石間(128・4キロ)では平成27年度から総額約140億円をかけてゲリラ豪雨対策として法面(のりめん)の補強工事を進めていたため、この区間の輸送障害は最小限に抑えることができたという。
 杉山特定教授は「『被害ゼロ』を目指す設備投資は、費用面から現実的でない。人命を最優先した上で被害復旧にかかる時間やコストを洗い出し、重点箇所の補強や早期復旧に向けたマニュアル整備など、適切な対策を進めることが必要だ」と指摘している。