野球(3)田中将、ダルビッシュ、前田健…大リーガーの原石競い合う大阪発祥のボーイズリーグ

関西の力

 関西の少年野球を語る上で、忘れてはならないのが大阪発祥のボーイズリーグ(本部・大阪市浪速区)の存在だ。南海ホークス(現ソフトバンク・ホークス)の監督だった鶴岡一人氏が理事長としてリーダーシップを発揮し、国内に5つある主要な中学年代の硬式野球リーグの中でも最大の組織となった。クラブチーム日本一を争う「全日本中学野球選手権大会ジャイアンツカップ」で8度の優勝を飾るなど、米国生まれのリトルリーグの中学生版であるリトルシニアを上回る実績を残してきた。

ヤンキースの田中将大(ゲッティ=共同)

選手全員による投票でレギュラー決める

 リーグの発展に貢献しているのが、“すご腕”の指導者。その一人が平成5(1993)年から4年間、打撃投手としてオリックス、阪神、西武を渡り歩き、現在は宝塚ボーイズ(兵庫県宝塚市)で監督を務める奥村幸治氏(44)だ。オリックス時代にはイチロー(43)=マーリンズ=の専属打撃投手となり「イチローの恋人」と注目された。田中将大(28)=ヤンキース=を育てたことでも知られる。

▼【関西の力】野球(1)断トツの野球王国・大阪 目立ってナンボの「いちびり文化」、自分を主張できる土壌

 甲子園球場で春と夏に行われる高校野球の全国大会には、毎回のように宝塚ボーイズのOBが強豪校のメンバーとして出場し続けている。高校で飛躍できる秘密はどこにあるのか。

 宝塚ボーイズに在籍する約100人の中でベンチ入りできるレギュラーはわずか20人。その選出方法は選手全員による投票で「自分以外に絶対にレギュラーになってほしいと思う人」を紙に書かせるのだという。

関西のボーイズリーグの主な出身者

 必然的に勝っても負けても選手が納得できるメンバーが選ばれるが、「選手たちは普段からお互いを厳しく見ている。野球がうまくても普段の練習姿勢や生活態度がいいかげんな子供はレギュラーから外れる」と奥村氏。その上で「試合に出られなくても、応援したりアドバイスしたり…。チームでの役割を見つけて努力した経験を高校でも生かし、力を伸ばすんじゃないかな」と分析する。

 多くの有望選手が集まる関西のボーイズリーグには、全国の高校の指導者も注目する。関西出身者も多く入学している島根県の強豪、石見智翠館(旧江の川)の末光章朗監督(46)は「野球にどう取り組むかの指導をしっかりと受けている」と話す。その上で「将来、プロに入る可能性のある子供には自分が何をすべきか、目標の設定の仕方をきっちりと植え付けている印象がある」と指摘する。

▼【関西の力】野球(2)関西のリトル、元阪神・亀山氏が伝える野球の面白さ オカンの活と情熱指導で世界一へ

身近に高レベルのライバル、高い目標

 一方で、選手たちは、身近にレベルの高いライバルがいることで、互いに切磋琢磨(せっさたくま)する。田中の同学年には前田健太(28)=ドジャース=がいた。前田は中学時代、忠岡ボーイズ(大阪府忠岡町)に所属し、日本代表にも選ばれて世界大会に出場。田中にとっては高い壁だった。

ダルビッシュ有(共同)

 前田は地元の名門であるPL学園(大阪)へ進み、駒大苫小牧(北海道)を進路に選んだ田中は甲子園で2年夏に優勝、3年夏には準優勝投手となった。

 田中、前田のほかにも、ダルビッシュ有(30)=レンジャーズ=ら、関西のボーイズリーグから日本のプロ野球を経て、世界最高峰である米大リーグ入りを果たした選手は多い。自身が定めた高い目標のためなら、生まれ育った古里を離れ、新天地の高校に向かうことも厭(いと)わない。その精神が海外へ羽ばたく素地となっているのだ。

前田健太
黒田博樹
桑田真澄

 ボーイズリーグ 昭和45年に大阪府内の28チームで結成され、当初は主に大阪球場(現なんばパークス)で大会が開催されていた。中学校の部活が軟式中心の中、硬式であることなどからプロ野球を目指す生徒が多く集まるようになった。日本少年野球連盟によると、平成28年現在、全国に39支部610チーム、選手数は約2万1千人(中学生の部)を数える。

(平成29年1月6日夕刊1面掲載 年齢や肩書き、呼称は当時)

◇   ◇

 伝統、文化、医学、農業、エンターテインメント、スポーツ…。関西には世界に誇れる魅力あるコンテンツがあふれている。現状の停滞を打破し、突破できる「力」とは何か。この連載では、さまざまなジャンル、切り口で「関西の力」を探る。