【衝撃事件の核心】部下の女性の連れ去り計画 公判で分かった逮捕された上司の異常性 - 産経ニュース

【衝撃事件の核心】部下の女性の連れ去り計画 公判で分かった逮捕された上司の異常性

給食会社の女性が上司の男に襲われた現場の老人ホーム=1月25日、大津市
 今年1月、大津市の老人ホームの駐車場で給食会社の女性社員(24)が襲われ、連れ去られそうになる事件が起きた。女性からの連絡で駆けつけたという男性上司(49)も「物陰から現れた犯人に顔を殴られた」といい、滋賀県警が捜査を開始。ところが翌日未明、わいせつ略取未遂などの疑いで逮捕されたのはこの上司だった。検察側は、女性に一方的に好意を募らせ犯行に及んだとして同罪などで起訴。大津地裁の公判では、女性の着替えを盗撮したりスマートフォンをのぞき見したりという、上司の日ごろからの執拗(しつよう)で異常な行為も明らかにされた。
厳寒の朝の犯行
 公判によると、事件が起きたのは1月25日午前5時半ごろ。大津市はこの日最低気温がマイナス3・5度で、比叡山麓の同市西部にある老人ホームの駐車場にはうっすらと雪が積もっていた。
 そこへホームでの朝食準備のため女性が車で出勤。車を降り、通用口の鍵を開けて入ろうとしたところ、突然、建物の陰から飛び出してきた人物に羽交い締めにされ、押し倒された。
 さらに顔に金属ようのものを押し当てられ車に連れ込まれそうになった。必死に抵抗していると、別の社員が出勤してきたため犯人は逃走、女性は110番するとともに上司の携帯電話にも連絡した。
 「近くにいるから行く」。電話を受けた上司は、ほとんど時間をおかずにやってきた。この日は休みのはず、しかも自宅は京都市内だ。
 上司は「たまたま近くに来ていた」といい、敷地内で「犯人」と鉢合わせし、自分も顔を殴られたと説明した。しかし不自然な点が多く、県警に追及されすぐに嘘がばれた。
 実は犯行後に逃走しようとしたが、女性の電話で現場に戻り、自らも被害者を装っていたのだ。
盗撮、スマホ盗み見
 「女性に好意があった」。県警の調べに対しこう供述していた被告の上司だが、公判では否定し、連れ去ろうとした目的も「何も決めていなかった」と主張した。
 だが、検察側の指摘で周到な計画性が次々と明らかになった。被告の車からは粘着テープやおもちゃの手錠、女性用のミリタリー風のコスチュームなどが見つかった。コスチュームは「カラオケのアイテムのつもりだった」と弁明したが、「はいたらパンツが見えそう」(検察官)なほど短い丈のスカートだった。
 また被告は襲った際、女性用カツラで変装。被害女性の視力が弱いことを知っており、背後から近づき、最初にメガネを奪い取っていた。実際、女性は襲ってきた人物が上司だとは気付かなかったという。
 女性への異常な執着ぶりも明らかにされた。被告は老人ホームの更衣室で着替える女性を盗撮。女性がスマホの画面ロックを解除する様子を背後から撮影して暗証番号を解読し、女性が不在のときにスマホをいじり、保存されていた写真などをコピーしたことも。
 こんなこともあった。「紹介したい人がいる。彼女の話し相手になってほしい」と、自分の知り合いという女性名のメールアドレスを渡し、メールのやりとりを頼んだ。だが、相手は架空の人物で被告がなりすまし、「彼氏いるの」などと女性にメールを送っていた。
信頼していた上司が
 女性は昨年3月に入社。以来、唯一の上司で信頼も寄せていた。それだけに事件には大きなショックを受けたという。
 公判で検察側は、被告は仕事の終わりに女性を積極的に車で送るなど、一方的に好意を募らせていったと指摘した。一方、被告は謝罪の言葉を述べたが、わいせつ目的は否定。長い間人工透析を受けており、「これから先、どれくらい生きられるか不安がある」とも述べた。
 弁護側は反省していることや体調などを理由に執行猶予を求めたが、大津地裁は判決で「職場の人間関係を悪用した。刑の執行を猶予すべき事案とはいえない」として懲役2年(求刑同3年)の実刑を言い渡した。被告は判決を不服として控訴した。