【関西の力】野球(1)断トツの野球王国・大阪 目立ってナンボの「いちびり文化」、自分を主張できる土壌 - 産経ニュース

【関西の力】野球(1)断トツの野球王国・大阪 目立ってナンボの「いちびり文化」、自分を主張できる土壌

 熱狂的な応援で知られるプロ野球の阪神タイガースや、高校球児の聖地である甲子園球場(兵庫県西宮市)などを抱え、関西は「野球王国」「野球どころ」といわれる。なぜ、関西は野球熱が高いのか。日常の生活の中に、脈々と野球文化が受け継がれているからだ。
甲子園球場でジェット風船を飛ばす阪神ファン。熱狂的な応援自体が独特の文化だ(安部光翁撮影)
居酒屋「虎」 残った名物店
 阪神電鉄の今津駅(西宮市)から徒歩1分。全国から阪神ファンがツアーを組んで訪れる店がある。その名も居酒屋「虎」。かつては「巨人のタタキ」「江川の耳焼き」といったユニークな名前のメニューもあった。シーズン中は阪神の試合をテレビ観戦。広いとはいえない店内で、七回にはジェット風船が飛び交う。
 同様の飲食店は他にもあるが、熱の入れようは異なる。初代店主の大平洋一郎さんが「虎」をオープンしたのは昭和56年。ファンが集う飲食店の先駆け的な存在だった。以来、阪神の成績に関係なく、店はにぎわってきた。数年前に大平さんが他界し、閉店の危機に陥ったが「何とかして守ろう」との声が上がった。
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 現在、「虎」を運営する木野内弘子さん(59)は「地方から新婚旅行で訪れたカップルもいたんですよ。だから、店をなくしてはいけない。次の世代へ引き継いでいきたい」と話す。「虎」の存在は、阪神ファンのかけがえのない“文化遺産”と言っても過言ではない。
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東京に対抗心 「阪神タイガースを応援するのが大阪人なのである」
 平成のはじめに阪神で活躍した野球評論家でタレントの亀山つとむ氏(47)は「関西には目立ってナンボの“いちびり文化”がある。お笑い文化が発展したのと同じで、野球文化が根付いたのも、何かで目立ちたいという気持ちからではないか」と分析する。「いちびり」とは、ふざけてはしゃぎ回ること、あるいはそういうお調子者、目立ちたがり屋のことを意味する。確かに、甲子園球場に向かう阪神ファンは電車の中でも当然のようにユニホーム姿だ。
 「大阪学」で知られる故大谷晃一氏(帝塚山学院大学元学長)は阪神ファンの根底に「対東京」「対中央」の意識があるとしたうえで、「大阪人が応援する球団が阪神タイガースなのではない。阪神タイガースを応援するのが大阪人なのである。強い弱いは関係ない」と「阪神タイガース編」(新潮文庫)で記している。関西人であれば、野球ファンであるのが当たり前、普通ということなのだ
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阪神、近鉄、南海、阪急 4球団が輩出した名選手たち
 関西にプロ野球が根付いたのは、「阪神」のほか「近鉄」や「南海」「阪急」といった私鉄の歴史と関係が深いとされる。かつては、それぞれがプロ野球の球団を持ち、熱烈で個性的なファンを抱えた。南海ホークス(現ソフトバンク・ホークス)の野村克也や阪急ブレーブス(現オリックス・バファローズ)の福本豊ら球界を代表する選手も次々と生まれた。今では、関西を本拠地とするのは、阪神とオリックスの2球団だけとなっているが、関西出身のプロ野球選手の数は日本球界で重きをなす。
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「野球王国だと思う」都道府県
 ソニー生命保険が一昨年に実施した意識調査によると「野球王国だと思う都道府県」は、大阪府(20・9%)が断トツ。兵庫県(3・6%)も7位に入る。「自分を主張できる土壌が関西にはある」と亀山氏は言う。その土壌から生まれ、関西人の生活の中に根を生やしたのが野球だった。
(平成29年1月4日夕刊1面掲載 年齢や肩書き、呼称は当時)
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 伝統、文化、医学、農業、エンターテインメント、スポーツ…。関西には世界に誇れる魅力あるコンテンツがあふれている。現状の停滞を打破し、突破できる「力」とは何か。この連載では、さまざまなジャンル、切り口で「関西の力」を探る。