【今週の注目記事】レトロ観光列車「昭和」「あめつち」が走る鳥取 鉄道を「汽車」と呼ぶ地の郷愁 - 産経ニュース

【今週の注目記事】レトロ観光列車「昭和」「あめつち」が走る鳥取 鉄道を「汽車」と呼ぶ地の郷愁

 乗ること自体が楽しみになるような観光列車が、鳥取県に続々登場している。鉄道のことを「汽車」と呼ぶのが一般的な鳥取県。だからこそ、歴史ある鉄道資産が多く残る。ノスタルジーが観光列車の魅力を増している。
青いボディーが印象的な若桜鉄道の「昭和」。どこか懐かしい
 7月23日夕、JR鳥取駅で2つの観光列車が肩を並べた。JR西日本が7月1日に山陰線の鳥取-出雲市駅(島根県出雲市)間で運行を始めた「あめつち」と、第三セクター・若桜(わかさ)鉄道が3月4日から県東部の路線で運行している「昭和」だ。競演は鳥取県の観光列車に注目してもらおうと同鉄道が企画、カメラを手にしたファンらが駆けつけた。
 「昭和」は旧国鉄を引き継いだ若桜鉄道が昭和62年に開業した際に導入したディーゼルエンジンで動く気動車「WT3003」を改修。JR九州の豪華寝台列車「ななつ星in九州」などを手がけた工業デザイナーの水戸岡鋭治さんが、阪神電鉄が所有していた「阪神電気鉄道311形」をモデルにデザインした。
 青いボディーの外観はレトロで品格ある印象。内装は窓枠など木を多用し、ソファやテーブルを置いた。県東部の同電鉄の路線を観光列車として原則日曜に運行し、普通列車としても走る。
 3月の運行開始前から話題を呼び、観光ツアーの予約は半年先まで埋まるほどで、7月21日にはツアー参加者千人を達成した。
ゆったりと旅が楽しめる「あめつち」の車内
JR西日本の「あめつち」。「古くて新しい日本を発見する旅の演出」をコンセプトに山陰を走る
 地方鉄道の観光列車がヒットする条件として、水戸岡さんは「懐かしさを組み込むこと」を挙げる。「モダンなものは沢山あるが、古いものには人が手間ひまをかけたソフトが組み込まれている。それが心地よい」
 水戸岡さんは若桜鉄道が走る同県八頭(やず)、若桜両町を初めて訪れた際、「すばらしい駅舎に驚いた」という。
 旧国鉄・若桜線は昭和5年に全線開通。若桜鉄道は当時の施設をそのまま残し、約90年前の鉄道の面影が見て取れる。平成20年には終着駅の若桜駅をはじめとする駅舎や橋梁(きょうりょう)など鉄道施設23件が国登録有形文化財になった。
 こうした雰囲気を大事にしようと、「昭和」の運行開始後は沿線町の職員らが水戸岡さんの指示をもとに駅舎などで“レトロ回帰”の作業を進めている。雰囲気にそぐわないモダンな看板や自販機などを別の場所に移し、時刻表を時代感のあるものに変えるなどしている。
 「地方に来る観光客は、ゆったりとした癒やしを求めている。鉄道は交通手段だが、観光資源としては癒やしのツールなのでは」と、八頭町の若桜鉄道運行対策室の担当者はいう。
 旅客収入が減って地域の“お荷物”ともみられた同鉄道だが、観光列車が注目されるようになり、その古さがむしろ地域の“宝”になりつつある。
智頭急行の「あまつぼし」
 鳥取・島根の山陰両県を走るJR西の観光列車「あめつち」も、「古くて新しい日本を発見する旅の演出」がコンセプト。車両は、山陰線で通勤・通学列車として走っていた昭和56、57年製の気動車「キハ47」2両などを改修した。山陰の空や海を表すブルーと、島根のたたら製鉄にちなみ日本刀の刃文を表現した銀色のラインの外観、両県の美しい工芸品で彩られた内装が特徴的だ。
 「あめつち」は土、日、月曜を中心に鳥取-出雲両市間を1日1往復しており、こちらも予約で満杯の状況が続いている。「ディーゼル車であることも利用者に喜ばれている」と旅行関係者。客層は60代など年配の人が中心で、ディーゼルに懐かしさを覚えるという。地元の人にとって鉄道の電化は長らくの悲願だが、ディーゼルで走る列車も悪くはないようだ。
 このほか鳥取県では、智頭急行が3月18日にデビューさせた「あまつぼし」も人気。地元鉄道に残る古き良き歴史が観光振興に役立っている。
(8月6日掲載)