JR四国の鉄道網 9月中に全線復旧見込み

西日本豪雨

 西日本豪雨で大きな被害を受けた四国の鉄道網。土砂の流入や線路下の盛り土の流出などで運転を取りやめて6日で1カ月となるが、今も2路線4区間で運休が続く。JR四国は9月中に全線で再開を掲げ、復旧作業を急ぐ。沿線からは期待の声が上がり、廃線を懸念していた自治体関係者は安堵する。ただ、夏場の観光シーズンへの打撃は大きく、地元経済への影響が懸念されている。

 「バスは本数が少なくて不便。再開が決まってよかった」。JR宇和島駅(愛媛県宇和島市)で、代替輸送バスを待っていた同市の主婦、森藤勝代さん(73)は喜んだ。

 JR四国によると、豪雨による土砂流入などの施設被害は134カ所に及んだ。今も予讃(よさん)線の3区間、予土(よど)線(宇和島-窪川)の全線で運転見合わせが続くが、JR四国は今月9、10日に予讃線の2区間を、同10日に予土線全線をそれぞれ再開。残る予讃線の卯之町(うのまち)-宇和島間を9月中に再開させ、全路線で復旧のめどが立った。

 宇和島市によると、予土線の利用者は、市中心部の市立病院に通院する高齢者や、市内の高校に通う学生が多い。市職員は「バスによる代替輸送は鉄道より余計に時間がかかり、本数も少なく地域住民は不便を強いられている」と再開を歓迎する。

 一方、予土線の3駅を抱える同県松野町の担当者は「災害を機に路線廃止に傾くのが一番怖かった」と明かす。

 JR四国の鉄道網は瀬戸大橋線を除く全てが赤字路線で、国鉄民営化時に交付された基金の運用益で経営を支える。中でも、予土線の1日1キロ当たりの平均利用客数を示す輸送密度は平成29年度で340人と、利用者の少なさは際立つ。豪雨災害以前にも存廃が取り沙汰され、沿線自治体はJR四国に路線存続を要望し続けていた。

 今回の豪雨後、JR四国の半井(はんい)真司社長は「1日も早い運転再開を目指し全力をあげる」と路線維持の意向を改めて表明。ただ、復旧費用は計約20億円かかる見込み。29年度の営業収益が513億円の同社への影響は大きく、国に補助を求める考えを示している。

 こうした状況に追い打ちをかけるのが、運休による収入減だ。同社は豪雨による長期運休などで今年度の減収を約10億円と見込む。

 26年から予讃線で運行し、乗車率が約9割と人気の観光列車「伊予灘ものがたり」は現在も運休中で、再開は8月24日の見込み。夕日の美しさから近年人気の観光スポットとなっている予讃線の下灘(しもなだ)駅(愛媛県伊予市)も観光客が激減している。

 鉄道の運休は、地元経済にも影を落とす。例年7月に宇和島市で開催され、3日間で延べ約20万人が参加する「牛鬼まつり」は中止となり、宇和島城の7月の来場者数は約1700人と前年同期の半分以下に。松山城など被害が少なかった松山市内の観光施設でも、来場者数が軒並み前年を下回っているという。

 愛媛県の担当者は「被害がない地域の情報をしっかり発信していきたい」と話している。