医療機関の連携不足を克服 熊本地震の経験生かせ 倉敷・真備

西日本豪雨
倉敷市では医療、保健分野の連携が図られている

 西日本豪雨で被災した岡山県倉敷市で、地元の医療・福祉関係者が情報を収集・整理し、被災者の治療や公衆衛生の向上に着実につなげる組織「倉敷地域災害保健復興連絡会議」(KuraDRO)(クラドロ)を設置。現場が混乱し、情報伝達ミスや各機関の連携不足が生じがちな被災地で効果を上げた。平成28年の熊本地震での例を参考にした取り組みで、現在は岡山県南西部災害保健医療活動調整本部がその役割を継承。地元医療関係者は「医療機関同士の連携がスムーズに取れている」と手応えを感じている。(地主明世)

 「避難者は便秘や腰痛を訴える方が多くなっているので注意してほしい」

 7月末の朝。岡山県備中保健所(倉敷市羽島)横のプレハブで開かれた定例の調整本部会議で、集まった医師や保健師らが被災者の体調や避難所の課題などを報告し合った。参加したNPO法人「災害人道医療支援会」のメンバー、甲斐聡一朗医師は「行政に避難所などのニーズを素早く伝えられる点でも役立つ」と話す。

 調整本部は、連絡調整を行う「総括班」や医薬品の確保などを担う「衛生班」といったチームを設置。避難所で被災者を診察した医師からの情報でスムーズに医薬品を処方したり、避難所の要望に応じてクーラーを設置するなどした。医療機関と避難所をつなぐ臨時バスの運行管理も行っている。

 調整本部の前身、クラドロは「倉敷市」の「クラ」と「災害復興会議」の英字表記の頭文字から取った。立ち上げは7月9日。倉敷市に派遣された国立病院機構災害医療センター(東京)の「災害派遣医療チーム」(DMAT)の隊員が、熊本地震での経験をもとに設置を提案した。

 熊本県などによると、一昨年の熊本地震で、被害の大きかった同県阿蘇市内では保健所も被災、職員は住民らの対応に追われた。「どこでどんなことが行われているのかわからないまま、目の前の対応で精いっぱいだった」(熊本県阿蘇保健所の担当者)という。

 そこで、現地で阿蘇地区災害保健医療復興連絡会議(ADRO)(アドロ)を設置。保健所と協力し、医療機関が集まる情報共有の場を設けたことで、避難所でノロウイルスの患者が出たときも、早期対応で感染拡大を防ぐことができたという。

 倉敷市のクラドロでは当初、DMATと地元保健所が中心に情報を集約。日本医師会の災害医療チーム(JMAT)やリハビリ関連団体でつくる支援組織「JRAT」、国際医療ボランティア団体「AMDA」などが続々と到着する中、被災地の実情に沿った支援活動を後押しした。

 調整本部はそれを引き継ぎ、現在は、今回の災害で初めて派遣された「災害時健康危機管理支援チーム」(DHEAT=ディーヒート)の協力も得ながら、医療機関の復旧支援や情報収集・共有を行っている。

 災害時の医療連携に詳しい日本医師会総合政策研究機構の王子野麻代(おおじのまよ)・主任研究員は「応援に入った医療関係者と地元が一体となったクラドロなどの取り組みは、災害時の連携の新しい形として定着しつつある。外からの応援がなくなったときに急に支援が途切れないよう、被災地の行政や医療関係者が中心となることが重要だ」としている。