【関西の議論】IRの3つの「イス」、年3000億円の効果に都市間の競争過熱 - 産経ニュース

【関西の議論】IRの3つの「イス」、年3000億円の効果に都市間の競争過熱

 カジノを含む統合型リゾート施設(IR)実施(整備)法が成立し、全国で最大3カ所の認定区域入りを目指す自治体間の競争が本格化する。すでに基本構想などを策定した長崎と和歌山、IR事業者との契約締結を支援するコンサルタントを決めた大阪の3府県が一歩リードしているとの見方が強い。ただ、今後北海道や愛知県でも検討が本格化する見通しだ。第1弾が開業するのは2020年代半ばの見こみ。最初の認定から7年後に国が箇所数を見直し増設することもできるが、まずは3カ所をめぐる「イス取りゲーム」が繰り広げられる。
経済成長に欠かせない
 「人口減少、超高齢化社会を迎える日本は、納税者が減る一方で社会保障費は増大していく。必要な人に社会保障が届くよう日本を経済成長させるのにIRは欠かせない」。大阪府の松井一郎知事は7月24日、IR実施法成立を受け、改めて誘致に強い意欲を示した。
 国土交通省は今後、整備区域の選定基準などに関する「基本方針」を策定、公表する。誘致する都道府県や政令指定都市は、公募で選んだIR事業者と共同でIRの規模や事業内容、経済効果を「区域整備計画」としてまとめ、議会や立地する市町村の同意を取り付けた上で、国に申請。認定区域入りを認められれば、晴れてIR開業の運びとなる。
 IR誘致を検討する主な自治体は、大阪と和歌山の他に、北海道釧路(くしろ)市、苫小牧(とまこまい)市、留寿都(るすつ)村、名古屋市、愛知県常滑(とこなめ)市、長崎県佐世保(させぼ)市。
 首都圏の東京都や横浜市が誘致を表明すれば有力候補となるが、これまでのところはギャンブル依存症への懸念などから双方とも「白紙」としている。
海中カジノや万博誘致
 誘致を検討する自治体はいずれも、2020年東京五輪・パラリンピック後のインバウンド(訪日観光客)の取り込みと地域経済を活性化に期待を寄せる。
 フロントランナーとされる3府県のうち、長崎県は今年4月、有識者会議で基本構想をまとめた。佐世保市とともにテーマパーク「ハウステンボス」を核としたIR誘致を目指し、ハウステンボスも世界に類を見ない「海中カジノ」のアイデアを打ち出した。
IRの立地が目指されている大阪市の人口島・夢洲(ゆめしま)
 和歌山県も5月に基本構想を策定。和歌山市内の人工島「和歌山マリーナシティ」を候補地としている。和歌山県の仁坂吉伸知事も「IRの持つ雇用創出や経済成長、人口減少抑制などの効果は大変有益」と語り、準備を着々と進める。年間約3千億円の経済効果を見込む一方、カジノの利用金額を制限できる「IRカード」を導入する方針を打ち出し、ギャンブル依存症への懸念に配慮する。
 手を挙げる自治体の中でも、有力視されるのが大阪府だ。松井一郎大阪府知事は大阪維新の会、日本維新の会の代表でIR実現、大阪への誘致を選挙公約に掲げてきた。さらに日本維新の会は、現政権下で官邸と太いパイプを持つとされる。
 その大阪府は、基本構想の取りまとめを急いでいる。昨年8月の中間骨子では、大阪市と協力して同市此花区の人工島・夢洲(ゆめしま)の約70ヘクタールの市有地を中心に展開。夢洲は、政府が誘致を目指す2025年国際博覧会(万博)の会場候補地でもあり、万博開催前のIR開業で、ベイエリアの発展に弾みをつける狙いだ。
長崎の海中カジノのイメージ図(ハウステンボス提供)
リゾートの本場北海道も
 この3府県を追走する自治体も活発な動きを見せ始めている。
 北海道は今年5月、誘致を希望する釧路市、苫小牧市、留寿都村でIR施設を整備した場合の年間売上高や来場者数の試算を公表した。いずれも、新千歳(しんちとせ)空港から車で10~15分と地の利が良い苫小牧市の数値が最高で、売上高は最大1560億円、来場者数は同869万人だった。一方、釧路市は阿寒湖(あかんこ)周辺の豊かな自然やアイヌ民族の文化体験などをアピール。高原にある留寿都村は遊園地やゴルフ場、スキー場を併設する「ルスツリゾート」を中心とした構想を描く。今後、道内での一本化を図る。
 愛知県は昨年8月、常滑市の中部国際空港島でのIR整備の検討を表明。空港島では来年秋に国際展示場が開業予定で相乗効果を目指す。また、名古屋市も河村たかし市長が今月17日の会見で「手を挙げるのは良いことだ」と誘致の検討を表明。リニア中央新幹線の開業を見据え、地理的な利便性を強調している。
 イス取りゲームに勝ち残るのはどの都市なのか。