【関西の議論】大人が「自由研究」楽しめます 琵琶湖博物館の新施設、もちろん子供の夏休み宿題にも… - 産経ニュース

【関西の議論】大人が「自由研究」楽しめます 琵琶湖博物館の新施設、もちろん子供の夏休み宿題にも…

昆虫や鳥、ほ乳類など千点を超える標本が展示されている滋賀県立琵琶湖博物館の「おとなのディスカバリー」
オープンラボで昆虫標本を作製する学芸員。ガラス越しい作業の様子を見学できる
千点を超える標本は自由に動かして観察できる
落ち着いた外観の「おとなのディスカバリー」
 子供のころ、夏休みに夢中になった昆虫採集や動植物の観察。大人がそんな「自由研究」を楽しめる国内初の“おとな向け”スペースが7月、滋賀県立琵琶湖博物館(同県草津市)内に誕生した。施設内には動物や鉱物など千点以上の標本があり、精密なスケッチができる研究用の機器が自由に使えるほか、学芸員による標本作りや魚の孵化(ふか)などの作業・研究も公開されている。「大人の知的好奇心に応えられるスペース」(同館)は、“大人レベル”の自由研究をめざす親子連れの姿もあった。(川瀬充久)
大人も満足
 7月はじめ、館内の1階奥に新設された「おとなのディスカバリー」。内部はブラウンを基調としたシックなデザインで、落ち着いた雰囲気が漂う。
 「おとな」と銘打たれているのは、大人の要求にも応えられるスペースという意味で、実際には年齢制限はなく、利用者は中高生から高齢者までと幅広い。
 入ってみてまず目を引いたのは、あちこちに置かれた鳥やチョウ、植物などの多数の標本だ。
 同館によると、昆虫約700点▽鳥類約40点▽ほ乳類約30点▽魚類約40点▽貝類約130点▽両生類・爬虫(はちゅう)類約50点▽植物約130点▽鉱石など約130点-の計約1250点を展示。このほか、民俗学や考古学、古文書などの資料も置かれている。
 標本は室内であれば自由に持ち運びができる。図鑑などの参考図書もそろっており、例えば机の上に置いた標本をさまざまな角度から観察しながら、図鑑で特徴を調べるといった使い方ができる。
 標本を見ながらスケッチをする際には、専用のスケッチテーブルが便利。目の前に置いた標本などの資料を、机上のスケッチ用紙上に投影できる描画装置を自由に使い、精緻なスケッチ画を書くことができるコーナーで、連日多くの人が鉛筆を走らせている。同館によると、特に中高年の男性に人気が高いという。
 「触ってはいけないのが普通だが、標本を自由に持ち運べるのがうれしい」「図鑑が一緒に置いてあって調べ物がしやすい」などと利用者の満足度は高い。中には狩猟免許を持っている人が標本を使って、同行者に獲物について説明するなど少し変わったケースもあったという。
研究作業を公開
 いろいろな使い方ができる「おとなのディスカバリー」だが、目玉は奥のスペースに設置されたガラス張りの「オープンラボ」だ。昆虫標本づくりの過程や、ナマズの赤ちゃんを孵化させる様子など、学芸員が行う“裏方作業”をガラス越しにじっくりと観察できる。花粉の化石の数を一つ一つ数えるなど、研究や作業の大変さも伝わってくる。
 学芸員の桝永一宏さん(48)は「博物館に展示されているような『ゴール』(最終的な展示形態)だけでなく、学芸員や研究者だけが知っている展示に至るまでの過程も見てほしい。好きな人にとってはたまらないほど面白い部分で、われわれだけで独占しているのはもったいない」と話し、今後は来館者が作業に参加することなども計画しているという。
 ここでは学芸員が日替わりで常駐し、来館者のさまざまな疑問や質問にも対応。大人だけでなく、子供たちも夏休みの自由研究に使えそうだ。
海外施設に触発
 「展示物を自由に見て、触れることができる。そんな施設を作りたかった」。桝永さんは「おとなのディスカバリー」の狙いについてこう話す。
 きっかけは16年前。国際学会に出席するためオーストラリアを訪れた際、シドニーのオーストラリア博物館で、自由に触れるカンガルーやコアラの標本を見たことだった。
 その後、米シカゴのフィールド自然史博物館で化石のクリーニング作業を公開しているのを見てオープンラボを発案。平成26(2014)年に始まった琵琶湖博物館の改修工事で、10年以上温めきたラボの構想を提案し、4年かけて完成にこぎつけた。ラボをつくる際には外部の振動がラボ内に伝わらないよう、ラボの外周に柵を設けるなどの工夫も加えた。
 琵琶湖博物館によると、自由に標本や研究者向けの器具、書籍などを利用でき、大人でも満足できるようなスペースは国内で他に例はないという。
 「とにかく空間全体を楽しんでほしい。楽しみの中からこそ『学び』が生まれる」と同館は説明している。