【関西の議論】「たま駅長」死んでも人気…中国、米など世界から支持  - 産経ニュース

【関西の議論】「たま駅長」死んでも人気…中国、米など世界から支持 

外国人にも人気だったたま駅長。のんびりと利用客を見守る姿が癒しを与えてくれた=2012年、和歌山県紀の川市の貴志駅
たま駅長を抱く和歌山電鉄の小嶋社長=2013年
自分の顔がデザインされたチョコ(手前左)を見つめるたま駅長=2014年、和歌山県紀の川市
海外メディアの取材に応じるたま駅長。外国人観光客の増加に一役買った(2015年)
たまのグーグルの1日限定記念ロゴとニタマ
 平成27(2015)年に16歳で死んだ和歌山電鉄貴志川線の三毛猫駅長「たま」(雌)の人気が今も海外で続いている。駅長時代は愛らしい姿が話題となり、国内外から多くの観光客を集めた「たま」。海外メディアに頻繁に取り上げられたことで国際的な知名度も上がり、現在、中国の人気のアニメキャラクターとのコラボ絵本の製作が進むほか、米国で「たま」を主人公にしたアニメの製作話も浮上。死してなお人気は衰えていない。(岩本開智)
海外が注目
 JR和歌山駅から和歌山電鉄貴志川線に乗り換え、自然豊かな車窓を眺めながら約30分。終点の無人駅・貴志駅(和歌山県紀の川市)のホームを降りると、「たま神社」がある。小さな鳥居と社。祭られているのは「ウルトラ駅長」として活躍し、死後は「大明神」となった「たま」だ。
 「亡くなった後も、海外からのお客さまが途絶えず、『たま』の偉大さを感じます」。海外人気について、同電鉄広報担当の山木慶子さんはこう話す。
 動物駅長という存在が珍しかった時代。「たま」はテレビ番組やネットなどを通じ海外でも紹介され、訪日客がわざわざ貴志駅に会いに来たほどだ。
 海外からの取材も相次ぎ、平成20年にはフランス映画に“女優デビュー”も果たした。世界中の猫を取材し、猫と人間の関係性を描いたドキュメンタリー映画「ネコを探して」への出演だ。フランスやドイツ、日本で上映され、「東京で封切られたときは、立ち見客が出るほどの盛況ぶりだったんですよ」と山木さんは振り返る。
オファー続々
 死後も人気は続き、インターネット検索大手「google(グーグル)」から、トップページで「たま」をモチーフにしたロゴを作りたい、と依頼があった。
 実現したのは死後約2年たった29年。「たま」の誕生日にあたる4月29日、1日限定で生誕18周年特別記念ロゴが、日本のほか欧州を中心に世界12カ国で使用された。過去には20年の鉄腕アトム生誕5周年、22年の黒澤明生誕100周年の特別記念ロゴがあったが、「たま」はそれに肩を並べた格好で、山木さんも「ここまで世界で知られていたとは…」と驚く。
 一方、貴志駅を訪れた観光客も多い中国では、「たま」の生涯を描いた児童書(著者は同電鉄の小嶋光信社長)が翻訳され、増版されるほどの人気になっている。今年末には、中国で人気のキツネのキャラクター「阿(あ)狸(り)」とたまが共演する絵本が中国で出版されるという。
 有料会員制の「アマゾンプライム」でもドキュメンタリー映画の製作計画が浮上。米国と英国から撮影スタッフが和歌山を訪れ、貴志駅などのロケを行った。詳細は非公表だが、今夏に公開予定という。
 さらに、米国で「たま」の一生を描いたアニメを製作したいという依頼も同電鉄などにあり、今後、テレビ電話で打ち合わせをする予定だ。山木さんは「作品の紹介で観光客が増えてくれれば」と期待する。
廃線危機を救った猫
 「たま」の母猫は捨て猫で、貴志駅の隣の売店で飼われるうち、「たま」が生まれた。同電鉄はもともと南海電鉄貴志川線として運営されていたが、年間5億円の赤字を出し続け廃線の危機に。18年に和歌山電鉄に移管され、同駅は無人駅となった。
 そんな中、小嶋社長のアイデアで「たま」は駅長に。初めから集客を狙ったわけではなかったが、「たま」は地元の子供たちに愛され、毎日電車に乗って会いに来る乗客もいた。その愛らしい姿を見ようと観光客も増え、南海時代の最終年に約192万人だった年間利用客数は、約220万人に増加。功績が認められた「たま」はスーパー駅長、ウルトラ駅長へと昇格した。
 現在も、たまを後継した「ニタマ」がスーパー駅長、「よんたま」が駅長を務め人気だ。山木さんは「『たま』は亡くなってから3年たった今でも貢献してくれている。和歌山電鉄にとってまさしく神様です」と話す。
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 「たま」のような動物駅長は現在、広島県のJR芸備線志和口駅の猫「りょうま駅長」や、山形県の山形鉄道宮内駅のウサギ「もっちぃ駅長」など全国各地に誕生し、観光客を集めている。関西大の宮本勝浩名誉教授によると、「たま」による和歌山県内の経済効果は、駅長に就任した平成19年1年間だけで約11億円になるという。
 しかし、ローカル線が抱える課題は多い。和歌山電鉄貴志川線でも、運賃だけで利益を出していくのに必要な年間の利用客数にはまだ約30万人足りない。
 和歌山大経済学部の辻本勝久教授は、動物駅長が沿線住民の鉄道への愛着を高め、観光資源としての魅力を高める効果はあるとしながらも、ローカル線が生き残るには、「高齢化に伴う駅施設のバリアフリー化や、沿線にある観光地までのアクセスの改良などが必要だ」と指摘している。