過熱する「eスポーツ」有馬温泉に観戦バー、大阪で専門学校開校 その可能性は

関西の議論

 スポーツのようにコンピューターゲームの対戦を競う「eスポーツ」。世界中で人気が急速に高まっている。日本でも東京や大阪などでは体験できる施設が整備され、5月には神戸の有馬温泉に関西初となる観戦バーがオープン。大阪では専門学校が開校し、大手のお笑い芸能事務所も事業参入するなど、新たな商機と意気込む。国体でも都道府県対抗戦が予定されるなど、「ゲーム」の域をはるかに超えたeスポーツ。その最前線を取材した。(林信登)

温泉地に観戦施設の理由

 観光客でにぎわう有馬温泉街。木造の建物が並ぶ細い路地に5月、eスポーツを観戦できる関西初のバー「BAR DE GOZAR(バル・デ・ゴザール)」がオープンした。

 「ゴザール」はポルトガル語で「満足する」や「楽しむ」を意味する。温泉でリラックスした観光客らが、サッカーや野球の試合をスポーツバーで観戦するのと同様の感覚でeスポーツの観戦を楽しんでいる。

有馬温泉街にあるeスポーツ観戦バー「BAR DE GOZAR」=神戸市北区

 バーを経営するのは有馬温泉の老舗旅館「御所坊」。幕末から明治にかけてゴルフなど外国のスポーツ文化の窓口となった神戸からeスポーツを広めていこうと企画した。

 落ち着いた雰囲気の店内では、プロゲーマーが対戦している映像が流れており、来店者は酒や料理と共に観戦を楽しめる。今後は大会やイベントなど、競技を実際に体験できる企画も検討しているという。

有馬温泉街にあるeスポーツ観戦バー「BAR DE GOZAR」=神戸市北区

 初めてeスポーツを観戦した神戸市北区の会社員、猪(い)尾(お)彰太郎さん(24)は「どのようなものか気になっていたが、高度な技術に興奮した。多くの人が楽しむようになればいいと思う」と笑顔で話した。

 御所坊専務の金井庸(のぶ)泰(やす)さん(35)は「コンピューターゲームを否定的にとらえがちな日本の風潮を払拭したい」と意気込む。

拡大する市場規模

 今年に入り、eスポーツに関わる業界団体が一つに統一されるなど、「eスポーツ元年」と呼ばれるほど業界は活況だ。

 そもそもeスポーツとは「エレクトロニック・スポーツ」の略で、サッカーや格闘技などの対戦型ゲームのほか、シューティングゲームなどの腕前を競う競技。インターネットを利用したコンピューターゲームの先進国だった韓国でゲームを競技として観戦する文化が生まれ、その流れが欧米へと広まった。

 2000年ごろからeスポーツの呼称が使われるようになり、欧米を中心に高額の賞金をかけた大会が開催されるようになった。それに伴いeスポーツを職業とする「プロゲーマー」も誕生。12年には韓国で世界大会が開かれるなど、世界各地の大会でプロゲーマーが腕前を競っている。

インドネシアで開催されるアジア競技大会に向けてのeスポーツの日本代表選考会=5月、東京都豊島区

 日本でも東京や大阪などでeスポーツを体験できる施設が整備されており、多数のゲーム機が並ぶ場内でゲーマーたちが熱戦を繰り広げている。

 また、大阪市では今年4月にeスポーツの選手を養成する専門学校も開校。欧米のプロチームとの対戦や現地企業による特別講義、日本のトップ選手による直接指導などがあり、世界で通用する人材の輩出を目指している。

 eスポーツが持つ可能性に着目する企業も増えている。吉本興業は今年3月、eスポーツ事業への本格参入を発表。海外でプロチームを運営する企業と協力し、プロゲーマーの発掘や育成に注力する。

 すでに同社所属の芸人3人がプロ契約し、海外での大会に出場している。同社が運営する劇場や映画館でeスポーツのイベントや大会を開催するなど、市場の拡大を見込んでさらに事業を強化する方針だ。

インドネシアで開催されるアジア競技大会に向けてのeスポーツの日本代表選考会=5月、東京都豊島区

 eスポーツの競技人口は世界で1億人を超え、すでにテニスや野球を上回っており、観戦者を含めた市場規模は今後さらなる拡大が確実視されている。

五輪種目化も視野

 eスポーツを従来のスポーツ大会で競技種目として採用する動きも進んでいる。

 来秋に茨城県で行われる第74回国民体育大会(国体)では、国内初のeスポーツの都道府県対抗大会が予定されている。成年と高校生の部にわかれ、来春から各都道府県で予選を戦い、国体で決勝戦を行う。種目はサッカーゲームなどを予定している。

 同大会の実行委員会はeスポーツの魅力について、「年齢、性別や障害の有無などに関わりなく楽しめ、スポーツのあるべき姿を象徴している」と説明する。

 また、今年8月にインドネシアで開催され、「アジア版五輪」ともいわれるスポーツの国際大会「アジア競技大会」でeスポーツが公開競技として行われる。4年後の中国大会では正式種目として採用されることも決まった。

 国内唯一のeスポーツ団体「日本eスポーツ連合(JeSU)」副会長の浜村弘一さん(57)は「ここまでのスピードで広まるとは思っていなかった。今後はサッカーなどと肩を並べるメジャースポーツになる可能性が高く、五輪の正式種目入りも遠くないはずだ」と話す。

 実際、五輪種目化への機運は高まっている。昨年10月に行われた五輪サミットで、国際オリンピック委員会はeスポーツの五輪種目化を前向きに検討すると発表した。24年のパリ五輪から採用される可能性も浮上している。

 eスポーツに詳しい慶応大大学院メディアデザイン研究科の中村伊知哉教授(57)は「五輪種目入りはeスポーツの世界的な広がりを象徴し、産業としても本格的に盛り上がっていくだろう」と展望を語った。