【関西の議論】極小「但馬空港」が仕掛ける仰天プラン 滑走路開放に航空ファン歓喜 - 産経ニュース

【関西の議論】極小「但馬空港」が仕掛ける仰天プラン 滑走路開放に航空ファン歓喜

まっすぐ延びる滑走路。こんな経験はまず出来ない
滑走路を一望できる対空通信室
屋外展示されているYS-11機
小型飛行機がとまるスカイダイビング基地
23万年前の噴火口跡
但馬空港のターミナルビル
 大阪への1路線しかない近畿最北の小さな空港が、ユニークな取り組みで航空ファンのハートをつかんでいる。兵庫県豊岡市にあるコウノトリ但馬空港。発着便数が少ないのを逆手に、普段は立ち入れないエリアをめぐる「裏側見学ツアー」や滑走路を利用したマラソンを行うなど、都市部の主要空港では絶対できない企画を次々と実現している。そこには知名度を上げて達成したい“陸の孤島”の悲願があった。
滑走路に立てる
 「これから滑走路に入ります。許可願います」
 「許可します」
 黄色いパトロールカーに乗車し、滑走路に向かった。車内で交される無線通信のやりとりがちょっとした緊迫感を生む。まっすぐに伸びる滑走路はプロペラ機しか発着しないため延長1200メートルと短いが、立ってみると意外に大きく感じる。そこをパトロールカーで疾走すると、気分は離陸する操縦士だ。
 但馬空港で1日から始まった「まるごと見せちゃいます」ツアー。格納庫や管制塔に似た空港心臓部の対空通信室にも立ち寄り、屋外展示されたYS-11機の内部もくまなく見せてくれるとあって、航空ファンにはたまらない企画だ。
 平成28年11月~29年3月に初めて行われ、轟音をあげて離陸する機体を滑走路横の周回路から見られるなど、他ではできない体験が可能とあって人気となり、同7~9月、同11~今年3月にも実施された。1日1組限定ながら、過去3回で県内外から計144組353人がツアー目あてに小さな地方空港を訪れたほど。滑走路上でポーズをつけた写真はインスタ映えになること間違いない。
 第4弾となる今回(8月31日まで)は、新たな趣向も加えた。約4半世紀前の空港建設工事で見つかった火山の噴火口跡を特別公開。23万年前の「上佐野火山」の跡で、2つの噴火口のうち、1つは滑走路下に埋まっており、「太古の火山」の上に立つ空港を実感してもらう。
1日たった2便
 但馬空港が開港したのは平成6年5月。日本海に面した県北部の但馬地方住民にとって念願の空の玄関口だった。当時は同地方への高速道路網も未整備で、県庁がある県南部の神戸や大阪に出るのは大変なことだった。
 それが開港で、直線で約100キロだった大阪(伊丹)空港までは約40分に。当時を知る人は「大阪まで一気に近づいた記憶がある。ようやくだった。最初に飛んできた機影を見たときは感動的だった」と振り返る。
 飛んでいるのは、JAL(日本航空)グループの「日本エアコミューター」が運航する伊丹便1日2往復のみ。午前便が飛び立って午後便がやってくるまで7時間以上ある。この「空き時間」を利用したのが同ツアーだ。
 運営する県の第3セクター「但馬空港ターミナル」は「うちだからこそできる企画」という。羽田や伊丹など、フライトスケジュールがぎっしりの空港では決してできない。
 企画はこれだけではない。昨年9月に早朝の空き時間を使い、滑走路の往復2・4キロのコースを170人が走り好評だったことで、今年秋も同様の「滑走路マラソン」を開く。
 また夏には、空港隣接の芝生広場をキャンプ場として開放しており、航空機の離着陸を眺めるだけではなく、星空観察もできるとあって利用者も多い。
「但馬修行」でランクアップ
 離島便を除けば、但馬-伊丹間は国内最短路線。実はこれが、但馬空港の隠れた魅力にもなっている。
 マイレージサービスで特典を得られるJAL(日本航空)の上級会員には、年間50回以上搭乗すれば認定される。このため、短距離で運賃も安い同路線でひたすら往復を繰り返す利用者がいる。こうした目的で搭乗を繰り返すことは航空ファンの間で「修行」と呼ばれ、同空港は「修行者の聖地」になっている。実際、但馬空港ターミナルによると、休暇などを利用して立て続けに往復便に乗る搭乗者名が散見されるという。
 また、空き時間を縫ってスカイダイビングも行われている。定期便がある空港で可能なのは全国的にも同空港くらいで、実施する「スカイダイビング関西」では多い日に10回以上、ダイビングのため小型航空機を飛ばす。「空港から飛び、空港近くに降りて来られるスカイダイビングの場所はほかにない」と担当者はいう。
悲願の羽田便
 たった1路線の但馬空港だが、利用のニーズは高い。昨年度の利用は約3万2千人、搭乗率約70%で過去最高を更新。最短約2時間で東京に行ける伊丹経由の乗り継ぎ客も最多だった。
 さらに今年5月7日からは、以前の機種より12人多い48人乗りの新型機が就航し、1カ月間の搭乗者数が4千人を超え過去最高を記録。開港24年で累計搭乗者も5月には60万人を突破し、但馬空港はいま勢いづいている。
 悲願の羽田便の実現にはこの搭乗率の維持が不可欠だ。さらに、「見学ツアーも含め、空港の認知度アップが必須の課題。PR作戦を展開し、リピーターなどの利用者を増やしたい」と同ターミナルの担当者は話す。
 但馬地方は城崎温泉や神鍋高原、但馬牛、カニなど観光資源に恵まれた地域で、空港直結で観光地をめぐる巡回バス「たじまわる」も走り、空港を拠点にした利便性は年々向上している。搭乗率に加え、イベントなどで実績を積み上げ、PR次第では増え続ける外国人訪日客(インバウンド)を取り込む可能性がある。