神戸電鉄/戦国の戦場も今は静かに

鉄道アルバム・列車のある風景
(1)三木城趾から見下ろすと静かな街並みを電車がゆっくりと走っていた=兵庫県三木市(三木-三木上の丸)

 地下駅の新開地(神戸市兵庫区)を発車した列車は急坂をのぼり、やがて長いトンネルを抜けると鈴蘭台駅に到着する。ここから鉄路は北東(三田線)と北西(粟生(あお)線)に、花弁が開くように分かれていく。

 粟生(兵庫県小野市)行きに乗っていると、すぐに山が迫り始めてローカル線の味わいが楽しめる。そして広大な谷間に三木の町が見え始めると、間もなく三木上の丸駅(同県三木市)に到着。昭和12年開業当時のままの駅舎は周囲の市街地より一段高く、目の前の小高い城郭に寄り添うように建っている。

 三木城。戦国の武将・別所長治が織田信長の命を受けた羽柴秀吉軍に攻められながら、2年以上も籠城した三木合戦(1578-1580)の場所である。兵糧攻めに耐えかねた兵たちは、城壁に使われていた土に混ぜられた藁までを食べたという。その凄惨な攻め方は「三木の干し殺し」とさえ呼ばれる。

 そこから眼下に見える美嚢(みのう)川に、弧を描いて架かる勾配のある鉄橋を電車がゆっくりと渡る=写真(1)。平和で静かな現代のありがたさをかみしめたい。

 更に電車で北西へ向かうと小野市に入る。終着駅・粟生の手前の田園の中に葉多(はた)駅があった。一面一線の“棒線駅”の前には地元住民が手を入れているであろう小さな畑が春をささやかに演出していた=写真(2)。この先、電車は一部に明治時代のトラス橋が残る加古川橋梁を渡って粟生に到着する。(藤浦淳)