【衝撃事件の核心】民泊施設が犯罪者のアジトになる理由 迫るG20、対策は - 産経ニュース

【衝撃事件の核心】民泊施設が犯罪者のアジトになる理由 迫るG20、対策は

特殊詐欺事件で摘発され民泊施設から出る容疑者(1人目)=大阪市西成区
 大阪市西成区で6月、民泊をアジトにしていた特殊詐欺グループが摘発された。無許可のヤミ業態については以前から問題視されてきたが、今回の舞台は大阪市認定のれっきとした施設。ホテルや旅館と違い、フロント設備などがない民泊の“匿名性”にまぎれて、運営側もあずかり知らぬうちに犯罪に利用されていた。来年6月に大阪で開催される20カ国・地域(G20)の首脳会議を控え、民泊が“招かれざる客”の温床にならないか、懸念も出ている。
民泊のゲストは詐欺集団 
 「離せ!」
 「俺じゃない!」
 6月13日朝のこと。大阪市西成区の住宅街に怒号が響いた。
 現場はどこにでもありそうな2階建ての民家だが、郵便受けには英語の表記。国家戦略特区制度に基づいて大阪市が認定した特区民泊の施設だった。
 そこに、かねて内偵捜査を進めていた大阪府警捜査2課が家宅捜索に入った。
 急襲を受けた形となったその家の“ゲスト”は、2階の窓から飛び降りて逃亡を図ったが、周辺を包囲していた多数の捜査員にあえなく取り押さえられた。そして詐欺未遂容疑で、この民泊にいた住居、職業とも不詳の20代男3人が逮捕された。
 府警によると、3人は詐欺電話をかける「かけ子」役とみられ、同日午前、大阪府岸和田市内の80代男性に孫を名乗って電話をかけ、「株に手を出し失敗した」などと嘘を言って、現金750万円をだまし取ろうとしたという。
 府警は施設内から詐欺に使われたとみられる携帯電話約50台やノートパソコンなどを押収。パソコンには健康食品販売に絡んだ約5万7千人分の名簿が保存されていた。詐欺集団は4月以降、数週間ごとに市内の民泊を転々としてアジトを移し、名簿をもとに電話で詐欺を仕掛ける「アポ電」を繰り返していたとみられる。
運営側「まさか…」
 詐欺集団のアジトにされてしまったこの特区民泊。運営会社によると、今年3月に市の認定を受けたばかりだった。
 近くの住民は「見知らぬ人や外国人が大きな荷物を持って出入りしているのを見かけたことがあったが、民泊だと表示されていたので不審に思わなかった」と話す。
 詐欺集団は民泊仲介最大手「エアビーアンドビー」のインターネットサイトから6月2~15日の予定で利用予約を申請。施設は家主不在型で管理人は常駐していなかった。宿泊する客には玄関先のキーボックスの暗証番号を伝えて鍵を受け取ってもらうシステムで、施設側が詐欺集団のメンバーと顔を合わせることは一度もなかったという。
 運営会社は「アジトになるとは思いもよらなかった。今後は鍵を対面で受け渡して本人確認するなど、悪用を防ぐ方法を検討したい」とした。
盗撮目的の民泊も
 詐欺集団が民泊をアジトにしていた例は実は過去にもある。
 府警は平成28年12月にも市内の民泊で詐欺集団を摘発。こちらはアダルトサイト未納料金名目の架空請求詐欺だった。
 捜査関係者は「民泊は手続きが容易で宿泊費も安く、すぐに退去できる。そのうえ不特定多数の人物が出入りしても近所から怪しまれにくい。詐欺集団にとってはそれが利点」と指摘する。
 詐欺だけではない。大阪市東成区では2月、民泊のマンション一室で、兵庫県三田市の20代女性の切断遺体が見つかった。米国籍の20代男が逮捕され、神戸地検に傷害致死などの罪で起訴されている。
 29年11月には、大阪府守口市の民泊で室内に隠しカメラを仕掛けて盗撮したとして、大阪府警が旅館業法違反と軽犯罪法違反の容疑で運営者の40代男を書類送検。男は府警の調べに「当初から盗撮目的だった」と供述した。
「デメリット分析を」
 大阪観光局の推計によると、29年に大阪を訪れた外国人は約1111万人で、23年の約158万人から7倍に急増。民泊は宿泊需要の受け皿として期待されており、市内では特区民泊が733施設(5月末現在)、民泊新法に基づく民泊が93施設(6月14日現在)に上る。
 大阪市は来年6月開催のG20に向けて府と連携し、市職員や府警OBらでつくる「違法民泊撲滅チーム」を設置した。今後はこのチームを中心に、民泊が犯罪に悪用されないか監視の目を光らせることになる。
 青森中央学院大大学院の大泉光一教授(危機管理論)は「多数の従業員が宿泊客と接触するホテルなどに比べ、民泊は監視の目が届きにくい。家主不在型であれば、誰が出入りしてもトラブルが起きない限り表面化しない。東京五輪も控える中、危機管理の観点から民泊のデメリットを真剣に分析するべきだ」と話している。