全国の喫茶店が激減、トップの大阪は4割減…コーヒー消費は家庭中心に

関西の議論
チェーン店の喫茶店が目立つ大阪・本町界隈のビジネス街=大阪市中央区

 全国で喫茶店が減り続けている。国の統計では、平成8(1996)年に約10万2千店あったが、平成26(2014)年には、ほぼ3割減の7万店以下になった。都道府県別では大阪がトップを続けるが、この間、4割以上減少。一方、大阪、2位の愛知、3位の東京とも個人経営の店が半数近くに減る一方、法人・団体経営の店舗の従業員数は増えており、大規模なチェーン店が広がっているとみられる。ただ喫茶店の主力商品であるコーヒーの需要は近年増えているが、店よりも家庭での消費が圧倒的に多くなっているという。喫茶店やコーヒー業界に何が起きているのだろうか。(張英壽)

個人経営が大苦戦、チェーン店は大規模化

 国の統計である「事業所・企業統計調査」(平成8、11、13、16、18各年)と「経済センサス」(平成21、24、26年)によると、全国の喫茶店(民営)は平成8年の10万1937店から年々減り続け、13年に9万店、21年に8万店をそれぞれ割り込み、26年には8年の31%減となる6万9977店に減少した。喫茶店にはカフェやコーヒーショップなども入る。

 都道府県別では大阪、愛知、東京の順番で多い。この間、最多の大阪は1万6149店から9337店と42%減少。喫茶店のボリュームあるモーニングセットで知られる愛知は1万3408店から8428店と37.1%減、東京は9739店から6999店と28.1%減で、大阪の減り幅が際立っている。

 統計を、経営者が個人か、法人・団体かでみると、喫茶店が置かれた状況がより分かる。

 シンクタンクの「三菱UFJリサーチ&コンサルティング」のシニアコンサルタント、不破慎介氏が国の統計をまとめた資料では、8年と26年を比較すると、3都府県では、個人経営店が40%以上減少しているのに対し、法人・団体数はほぼ同じか減り幅がやや緩やかであるものの、従業員数では増加している。

 個人経営でみると、大阪では1万4198店から46%減の7722店に、愛知では1万1612店から43%減の6631店に、東京では5893店から45%減の3255店にまで落ち込んだ。

 一方、チェーン店など法人・団体経営の店舗数でみると、大阪は1951店から17%減の1615店に落ちたが、愛知は1796店から1797店とほぼ横ばい、東京は3846店から微減の3744店となっている。ところが、法人・団体経営の従業員数では、大阪が1万8078人から16.7%増の2万1145人に、愛知が1万4681人から50.5%増の2万2092人に、東京が3万7887人から57.4%増の5万9620人に伸びた。

 法人・団体経営のデータからは、店舗数自体には大きな変化がないか多少減少したものの、チェーン店などの大型資本による大規模店が多くなっていることが読み取れる。大規模店は客数も多く、チェーン店の伸長がうかがえる。大阪だけが法人・団体の店舗数の減り方が大きく、従業員数の増加幅が小さいのは、大規模店化が愛知や東京より緩やかなためとみられる。反対に、東京は大規模店化が3都府県の中で最も進んでいるとみられる。

 確かに、国内で「スターバックス」を展開する「スターバックスコーヒージャパン」(本社・東京)は平成8年に東京・銀座に1号店を出店した後、店舗数を伸ばし、現在は1342店を展開している。ほかにも、国内では、ドトールコーヒー、コメダ珈琲店、ホリーズカフェ、サンマルクカフェなどのチェーン店が知られている。

「喫茶店に行く習慣ない」足遠のくサラリーマン

 大阪では、昭和時代や平成の初めまで、サラリーマンらがオフィス近くの食堂で昼食をとった後、小さな個人経営の喫茶店でコーヒーなどを飲みながらくつろぐ姿があちこちで見られた。だが、喫茶店の減少とともに、そんな光景も少なくなっているようだ。

 人々は喫茶店にどのくらいの頻度で行くのだろか。大阪・ミナミ(大阪市中央区)でサラリーマンらに聞いてみた。

 「コーヒーは好きですが、喫茶店には行かない。年1回行くかどうか」と話した大阪市港区の男性会社員(35)は「喫茶店に行く習慣がないんです。ふだん飲むのは缶コーヒー。小学生の頃、父親に連れていってもらったくらい。まちを歩いていて、飲み物がほしいと、コンビニのイートインコーナーを利用する」と打ち明けた。

 大阪府富田林市の男性会社員(39)は「20代の頃は通勤途中でモーニングセットを食べるなど週3、4回行っていたが、いまは月1、2回」と語った。「家の近くの個人店はなくなり、休みの日の朝、ゆっくりしたいとき、チェーン店に出掛けている」と明かし、「20代の頃は待ち合わせでも喫茶店を利用していたが、今は、(スマートフォンの無料通信アプリ)『LINE(ライン)』もあるので、待ち合わせにはほとんど使わない」と話した。

 大阪府貝塚市の50代男性会社員も「仕事の打ち合わせで行くが、1カ月に1回くらい」、堺市南区のIT会社員の男性(50)も「月1回で、平日の仕事の合間でほっとしたいときに行く」と述べた。

 喫茶店から足が遠のいているという声が多かったが、今も愛用しているという人もいた。

 和歌山市から大阪メトロ御堂筋線・西中島南方駅(大阪市淀川区)付近にある職場まで通っている男性会社員(59)は、忙しいとき以外は昼食後、会社近くの喫茶店で過ごすという。「喫茶店は会社のすぐそばにはないが、ゆっくりしたくて、歩いて5分くらいのところに行っている。禁煙の店も多くなっているが、コーヒーを頼んでたばこを吸う。昼ご飯を別の食堂で早めに食べて30分くらいいる」と教えてくれた。常連となっている喫茶店は2カ所で1カ所はチェーン店、もう1カ所は個人経営といい、「個人経営の店が少なくなっているのはさびしい」と語った。

コーヒー飲むのは喫茶店よりは職場、コンビニでも

 喫茶店が減少する原因は何だろうか。

 大阪府内を中心に、落ち着いた雰囲気で知られる「英國屋」など45店の喫茶店を展開する三和実業(大阪市中央区)の広報担当者は「駅前やショッピングセンターといった場所に、チェーン店などの大規模なカフェができれば、客はそちらに行ってしまう。やはり喫茶店は立地が重要。住宅地の中にあるような個人経営の店は、こうした大規模店との競合は難しい。また個人経営の喫茶店は、跡継ぎがいないケースも多い」と指摘する。

 その喫茶店の主力商品といえばコーヒーだが、喫茶店数が減少しているため、コーヒーの消費も減っているかというと、そうではなく、大きく伸びている。

 コーヒー製品製造業者や輸入業者でつくる全日本コーヒー協会のまとめによると、国内消費は平成8年、35万2189トンだったが、29年は46万4686トンと32%増加している。この間、前年比で減少する年もあったが、全体としては増加傾向が続いている。

 さらに、同協会が全国の家庭を訪問調査した結果によると、コーヒーを飲む場所としては家庭が最も多くなっている。3318人が回答した28年の調査で、1人が1週間で何杯のコーヒーを飲むかを場所ごとに分けると、合計11.09杯のうち、家庭が6.89杯と圧倒的だ。喫茶店・コーヒーショップは0.37杯しかなく、職場・学校の2.60杯のほうが多くなっている。レストラン・ファストフードは0.21杯だった。

 全日本コーヒー協会の西野豊秀専務理事は「コーヒーの消費の中心が家庭になって20~30年たつ。高度成長期にインスタントコーヒーが普及して家庭に入り込んだ。ここ10年くらいは、家庭にコーヒーメーカーが普及し、ひいたコーヒー豆を使うレギュラーコーヒーが飲まれるようになった」と指摘。「コーヒーは家庭が中心で、喫茶店はコーヒーを1杯飲むとともに時間を過ごすところという意味が強い」と分析している。

 このほか、近年ではコンビニでレギュラーコーヒーを1杯100円から飲めるようになった。喫茶店にとっては競合相手にもなる可能性があるが、三和実業の広報担当者は「コーヒーを飲まなかった人がコンビニで味を知って店に来るようになった。コンビニによってコーヒーの消費者層が広がっている」とみる。

「個人から法人」の流れ一層、「戦略を」と専門家

 いずれにせよ、喫茶店、特に個人経営の喫茶店が直面する状況は厳しい。打開策はあるのだろうか。

 前述の不破氏は中小企業診断士の資格を持ち、飲食店業界に詳しい。その不破氏は「今後の喫茶店経営では『個人から法人へ』の流れは一層進むと考えられる。既存の店は戦略が必要」と強調する。

 その戦略の一つとして「アルコールの提供」を挙げ、こう指摘する。

 「まちにある個人経営の店では、アルコールを提供することはほとんどないが、コーヒーなどの非アルコール飲料だけでなく、選択肢を増やすためにビールやワイン、さらにカクテルなども提供し、お酒を飲む人もコーヒーを飲む人も『居心地がいい空間』にしていくことが大事。『居心地がいい空間』とは人によって異なり定義しにくいが、落ち着いてひとときを過ごせる店の雰囲気だろう」

 このほか、スイーツの強化、ラテアートなど専門技術の習得や、「スペシャルティコーヒー」と呼ばれる高品質コーヒーの提供、競合店の調査なども戦略にあげる。不破氏は「こうした戦略をたてれば、競争を切り抜け、出店地は無限」というが、「相当な力量が必要」と難しさも認めている。

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