【大阪北部地震】エレベーター閉じ込め339件、停止5万基超…都市部の弱点露呈 - 産経ニュース

【大阪北部地震】エレベーター閉じ込め339件、停止5万基超…都市部の弱点露呈

エレベーターが使用できなくなった府済生会茨木病院では、入院患者の昼食を職員がバケツリレーで運んだ=18日(府済生会茨木病院提供)
 最大震度6弱を観測した大阪北部地震では、発生後に大阪などの被災地でエレベーターに人が閉じ込められたケースが相次ぎ、高層ビルやマンションが多い都市部の課題が改めて浮き彫りになった。閉じ込め件数は339件と、東日本大震災や熊本地震を大きく上回る異例の規模に。運転停止は少なくとも5万基以上で、将来起こりうる南海トラフ巨大地震に備えた安全対策が急務となっている。
 「東日本」「熊本」を大幅に上回る
 国土交通省や日本エレベーター協会(東京)によると、エレベーターは全国に約73万5千基、大阪府は約7万4千基ある。平成21年以降、揺れを感知すると最寄り階で自動停止する「地震時管制運転装置」の導入が義務化されたが、依然として未整備の旧型も多く残っており、閉じ込めの一因となっている。
 今回の地震によるエレベーターの閉じ込めは、大阪267、兵庫41、京都25、奈良5、滋賀1の計339件で東日本大震災の210件、熊本地震の54件を大きく上回った。大阪府交野市では小中学生4人が最大45分間閉じ込められるなどしたが、停止した多くが旧型だったという。
 震度4以上の揺れで一度停止すれば、技術者の点検で問題なしと判断されるまでエレベーターは動かせない。今回は点検箇所が広範囲にわたった上、交通渋滞で技術者の現地派遣が大幅に遅延したため、復旧に時間がかかった。
 国は南海トラフ巨大地震で約4万1900基の閉じ込め被害を想定する。被害を食い止めるため、国交省は各自治体に旧型エレベーター改修向けの交付金を用意。耐震強化や自動停止装置の導入拡大を進めている。担当者は「今回の地震で被害が広範囲にわたった原因を調べ、改善策を考えたい」としている。
 タワマンや病院、影響深刻
 高層化が進む都市部では欠かせないインフラであるエレベーター。だが、大阪北部地震では閉じ込めや復旧の遅れなど災害時の“弱点”が鮮明となった。
 「泣いている5歳の長女の手をつなぎ、1歳の次女を抱えながら階段を下りた。本当に大変だった」
 大阪市福島区のタワーマンション20階に住む会社員の男性(40)は、地震発生直後のことをこう振り返る。幸いエレベーターの復旧に時間はかからなかったものの、「もし数日かかっていれば…。子供2人を連れて上り下りなんて考えられない」と話す。被災自治体によると、マンションのエレベーターの復旧が遅れ、高齢者を中心に階段の昇降がつらいとして避難所などで生活せざるを得ないケースもあったという。
 医療機関でも対応に追われた。大阪府済生会茨木病院(茨木市見付山)では地震発生直後、院内に6基あった全てのエレベーターが緊急停止。いずれも閉じ込められた人はいなかったが、5基は地震当日の6月18日午後5時ごろ、1基は21日まで使えなくなった。
 同病院は、1、2階が外来患者の診察フロア、4~7階が入院患者の病床となっており、エレベーター停止中は自力で歩けない患者を、男性職員6~7人が担架に乗せて階段を上り下りした。地震で骨折の重傷を負った患者も複数人いたといい、担当者は「力のある職員が対応したが、それでも午後には疲れて、ぐったりしていた」と振り返る。
 昼食の時間には入院患者の食事をおぼんに1食ずつ載せ、職員が地下1階からそれぞれの部屋までバケツリレーで運んだ。担当者は「災害時の対応をさらに検討していきたい」と話す。
 大阪市消防局によると地震発生当日、エレベーターに閉じ込められたとする通報は約60件。救出にかかった時間の平均は35・3分、最長は約1時間40分だった。ある消防関係者はこう指摘する。「今回は、火災や津波が同時に発生しなかったため、迅速に出動できた。同時にこれらの災害も起きていれば、救出に向かうのは困難を極めていただろう」