【西論】大阪北部地震の教訓 もろい都市機能、自ら守る備えを - 産経ニュース

【西論】大阪北部地震の教訓 もろい都市機能、自ら守る備えを

18日の地震で倒壊し、通学中の女児が死亡する事故があった大阪府高槻市立寿栄小のブロック塀。上は倒壊前((c)Google)
地震発生当日の復旧状況
大阪府高槻市立寿栄小のブロック塀倒壊現場を視察し、校門前の献花台に花を供える安倍首相=21日午後(代表撮影)
主要鉄道各社への影響
18日、大阪府高槻市では、住宅から屋根瓦が崩れ落ちていた
大阪北部地震被害表
 大阪府北部を震源とする最大震度6弱の地震が、6月18日午前7時58分に発生、5人が死亡し、400人超が負傷する被害が出た。マグニチュード(M)6・1で、建物被害も全壊3棟を含む約8千棟の損壊が確認された。人口密集都市の大阪で、震度6以上の地震は観測態勢が整った大正12年1月以降初めてだった。通勤時間帯の地震発生で、重要な都市インフラの交通網がまひし、通勤者が立ち往生したり、夕方から夜にかけて帰宅困難者が出たりしたことも大阪にとっては初めての経験だった。
 一方で電話などの連絡手段がつながりにくいなかで、スマートフォンの無料通信アプリ「LINE」をはじめとするソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が情報収集や安否確認に極めて有用であることも実証された。遠くない将来に想定される南海トラフ巨大地震を見据え、今回の地震の教訓を考えてみた。
 ◆危険なブロック塀
 大阪府高槻市の小学4年生、三宅璃奈(りな)さん(9)は自らが通う同市立寿栄(じゅえい)小学校に登校中に、同小学校のプールと通学路を隔てるブロック塀の下敷きになって死亡した。この塀は、学校の施設なのに建築基準法で定めた高さを超え、塀を固定する「控え壁」もない違法状態の構造物だった。
 ブロック塀の倒壊で、人命が失われるのは初めてではない。昭和53年の宮城県沖地震で死者28人のうち18人が塀の下敷きで亡くなった。これを受け、国は建築基準法を改正し、ブロック塀の高さを2・2メートル以下とし、さらに3・4メートル以内の間隔で控え壁の設置を義務づけるなど基準を強化した。仙台市では、道路沿いのブロック塀そのものを、ほとんど見ることがないという。
 寿栄小では3年前、仙台市の防災専門家が、この塀の危険性を指摘。市教委が塀を点検したが、危険性を見逃していた。意識の低さから犠牲が出たのなら「人災」だ。
 事故をきっかけに文部科学省は全国の小、中学校でブロック塀の緊急調査を実施している。全国の地方自治体も学校以外の民間施設も含め危険度調査を進めている。南海トラフ巨大地震を見据え、徹底した調査と危険な壁の撤去を進めるべきだ。
 ◆交通網が寸断
 今回の地震では、鉄道網が一時まひした。南海、京阪、近鉄、阪神の各私鉄と新幹線は、発生の18日午後3時ごろまでに再開したが、大阪メトロ御堂筋線は夜の午後9時40分ごろまで再開せず、阪急も京都線が午後11時前まで復旧しなかった。
 深刻だったのはJR西日本の在来線で、緊急停車した列車が143本、閉じ込められた乗客は約14万人。通勤時間帯の地震発生のため、過去に例のない多数の「閉じ込め」が出た。再開は在来線の約20路線が夜の午後10時すぎまでかかり、和歌山線などの4路線は翌19日朝までかかった。影響は約240万人。阪神高速道路など高速道も地震直後から午後1時すぎまで使えず一般道が大渋滞に陥った。
 鉄道の場合、震度5以上が観測されると走行中の列車の緊急停止が必要で、乗客の安全確認、乗客を最寄り駅まで誘導する。その後、作業員らがレールのゆがみなどを歩いて目視点検する必要があるが、JRの場合、近畿の在来線の営業距離は合計946キロあり簡単ではない。
 高速道路もほとんどが高架になっているため点検に時間がかかる。都市の重要なインフラである鉄路輸送網や高速道路は、復旧までに一定の時間が必要だ。そもそも高度な都市機能は脆弱(ぜいじゃく)なのだ。これを前提に、帰宅困難者が出ることを想定すべきで対策が必要だ。帰宅困難者が「難民」と化すれば、治安問題にも影響する。
 大阪メトロ御堂筋線の復旧が遅れ、18日夕方から夜にかけて、大阪市中心部から北部を結ぶ淀川にかかる新淀川大橋を徒歩で渡る人の列が続いた。午後9時40分ごろから電車が再開し、解消したが、途中、道筋にあるビジネスホテルがロビーを開放、寺院が広間を休憩所として提供した。ところが、大阪市は全体の把握もできていなかった。
 大阪市は今回を教訓に今後の調査や研究が必要だ。休憩できる場所の提供や飲料などの支援、退避所の開設も考えるべきだし、道路がどこに通じるかを記した標識の整備も必要だ。
 ◆どこでもありうる
 地震は内陸直下型で、活断層が動くタイプだった。平成28年の熊本地震、今回の大阪北部地震などの発生頻度を考えると地震の活動期に入っている。M6程度の地震はいつ、どこであってもおかしくないと研究者が口をそろえる。
 地震への備えのためには、まず、都市機能がもろいことを知り、2日程度は自宅で自活できる水と食料の備蓄を急ぐべきだ。今回、被害のあった自宅の家具の固定は絶対だ。実際に歩いて避難所への道筋の確認も必要だ。この際にブロック塀のそばなど危険な場所のチェックもしておきたい。
 企業は地震発生時の社員の行動を事前に決めておくべきだ。自治体は安全基準に達していないブロック塀など危険な構造物の洗い出しや、帰宅困難者の規模の調査や予測、対策を急がなければならない。企業や自治体の出す安全情報をネットのSNS主体にしていく方法も考えるべきだろう。
 南海トラフ巨大地震の前には近畿や中部で直下型地震が多くなることが知られている。備えは今すぐはじめても早すぎることはない。   (社会部長・堀洋)