【衝撃事件の核心】20年前の乳児コンクリート詰め事件、時効3年死体遺棄罪の判断は? 7月に判決 - 産経ニュース

【衝撃事件の核心】20年前の乳児コンクリート詰め事件、時効3年死体遺棄罪の判断は? 7月に判決

 20年後の突然の自首が、公訴時効をめぐる論争を巻き起こしている。大阪府寝屋川市の集合住宅で昨年11月、バケツにコンクリート詰めにされた乳児4人の遺体が見つかった事件。死体遺棄罪に問われた母親(53)に対する刑事裁判で、弁護側は「時効が成立している」として裁判の打ち切りを求めた。死体遺棄罪の公訴時効は3年。被告は平成4~9年に遺体をコンクリート詰めにしており、一見すると時効が成立しているようにも思えるのだが、検察側は時効は成立していないと反論している。検察側はなぜ時効が不成立と主張しているのか? 法廷で激論が交わされた。
心境の変化、突然の自首の理由は
 起訴状によると、被告は4年10月~9年9月、当時の寝屋川市内の自宅で、出産後に死亡した乳児4人の遺体を葬祭せずにバケツの中にコンクリート詰めにして放置。27年6月に現在の自宅に引っ越してバケツを移動させた後も、引き続き放置して遺棄したとされる。
 最後にコンクリート詰めにした行為から約20年が経過した昨年11月、近くの交番に自首したことで事件は発覚。6月4日、大阪地裁で初公判が開かれた。
 被告人質問などによると、乳児4人の父親は当時の職場の同僚ら。被告は妊娠していたことをいずれの相手にも知らせていなかった。4人は生まれてすぐに死亡した。
 「金銭的な理由で葬祭できなかった」という被告。「そのままの形で残しておきたかった」との動機で遺体をコンクリート詰めにし、バケツの中には数珠も入れていた。
 「私の子供なので、自分が死ぬときまで一緒に暮らす気持ちだった」と転居先にもバケツを持ち運んだが、自首前に心境の変化があった。
 将来に悲観して自殺を考えるようになったといい、「自分が死んでしまったら、4人のことを知っている人がいなくなる」と警察に打ち明けることを決意したという。
 被告が法廷で自ら説明したように、弁護側も事実関係に争いはない。争点となったのは、死体遺棄罪の公訴時効(3年)を踏まえて、「どこで遺棄行為が終わったか」だった。
大阪での2つの判例
 被告が4人目の乳児をコンクリート詰めにしたのは9年9月。「最後の遺棄行為」に該当するようにも思え、そうなれば3年の公訴時効はとっくに成立していたことになる。
 だが検察側は、それ以降も「不作為の遺棄が行われていた」と主張した。不作為とは、義務のある人がその義務を果たさずに放置したという意味だ。
 一般的に死体遺棄罪は、遺体を別の場所に運ぶことや、葬祭義務のある人が遺体を放置して葬祭義務を果たさず、宗教的な感情や死者を敬う心情を害することとされる。
 つまり、事件で被告には母親として4人の死亡届を出して火葬や埋葬して弔う「葬祭義務」があったのに、昨年11月に自首するまでその義務を放置し続け、「葬祭義務違反=遺棄行為」がずっと続いていた、という論理だ。
 どちらの主張が正しいのか。死体遺棄罪の時効を判断する上で重要な判例が、過去に大阪地裁で2つあった。
 まずは28年5月、大阪府吹田市のアパートの一室で、衣装ケースの中から乳児の遺体が見つかった事件だ。発覚の4年前に衣装ケースに乳児の遺体を入れて遺棄したなどとして両親が起訴され、大阪地裁は死体遺棄罪の成立を認めた。
 地裁判決は「葬祭義務は両親に全面的に委ねられていた」と認定。その上で、衣装ケースに遺体を入れて放置していたことは「葬祭義務違反行為が続いていたとみるべき」と今回の検察側主張と同じ論理で、弁護側の時効成立の訴えを退けた。
宗教的感情を害したか
 一方、25年3月、同地裁は、娘に対する殺人と死体遺棄罪などに問われた母親について、殺人罪などで有罪判決を言い渡したが、死体遺棄罪については時効の成立を認めて裁判を打ち切る「免訴」とした。
 判決によると、母親は19年2月に知人方で女児を出産し、殺害。その後、遺体をタオルに包んでスポーツバッグに入れるなどして自宅に移動。その後も引っ越し先に持ち運ぶなどして計4カ所で遺体を放置していた。
 同地裁は判決理由で、スポーツバッグに入れるなどした遺体を知人宅から自宅に移して隠蔽した行為は、死体遺棄罪にあたると判断。しかし、その後に自宅で放置していたのは、「葬祭義務を果たさずに放置した」としながらも「(バッグに入れるなどした)隠蔽行為と比べ、死者に対する宗教的感情を害しているとはいえない」と指摘。死体遺棄罪を構成するとは認めなかった。
被告は「子供に申し訳ない」
 今回の公判で、検察側は論告で「コンクリート詰めにしたのは、遺体を自分のそばに置いておく(死体遺棄の)準備行為」とし、コンクリート詰めにした時点で遺棄行為が終了するわけではないと主張。被告の犯行動機が「自分が死ぬときまで一緒に暮らす気持ちだった」ということも踏まえ、「遺体を長期間放置したことを除いてしまえば、事件の違法性は評価できない」と訴えた。
 さらに、時効が認められれば「正確な死亡日時が分からない事件では、いくらでも罪が免れられる」と社会的影響の大きさも指摘。改めて時効は不成立だとして、懲役3年を求刑した。
 一方、弁護側は、「(放置が遺棄の継続となれば)半永久的に時効成立が完成しないことになる」などとして、コンクリート詰めにした行為のみが「遺棄にあたる」と訴えた。
 こうした法律論争とは別に、被告は最終意見陳述で時効については言及せず、「4人の子供に対して申し訳ない気持ちでいっぱい。これから罪を償いたい。申し訳ありませんでした」と謝罪した。
 被告が償う「罪」は刑罰となるのか、それとも道義的なものにとどまるのか。判決は7月2日に言い渡される予定だ。