カーマニア必見! ハリウッド超え本格ラリー邦画大作「OVER DRIVE」

銀幕裏の声
映画では本物のWRCカー「ヤリス」が登場する (C)2018「OVER DRIVE」製作委員会

 最も過酷な自動車競技「ラリー」をテーマにした映画「OVER(オーバー) DRIVE(ドライブ)」が公開中だ。「なぜ、モータースポーツを描く本格カーアクション映画が日本で撮られないのか? 日本伝統の自動車文化、モノづくりの素晴らしさを映画で伝えたかった」。こう熱く語るのは「海猿」シリーズで知られる羽住英一郎監督。“海から陸へ”と舞台を移し、日本初ともいえる本格ラリー大作に挑んだ。劇中、WRC(世界ラリー選手権)に参戦中のトヨタのラリーカー「ヤリス」が登場。羽住監督の情熱に応え、トヨタが全面協力したのだ。さらにセイコーなど日本の大企業がスポンサーとしてバックアップ。架空の日本選手権「SEIKOカップラリーシリーズ」(SCRS)でヤリスが全国を転戦する雄姿は圧巻だ。羽住監督にその舞台裏を聞いた。(戸津井康之)

■WRCカー参戦

 世界最高峰「WRC」を目指し、国内トップカテゴリーのSCRSで戦うチーム「スピカレーシングファクトリー」。エースドライバーは若き天才、檜山直純(新田真剣佑(あらた・まっけんゆう))。その兄、篤洋(東出昌大(ひがしで・まさひろ))がチーフ・メカニック(整備士)を務め、直純の乗るヤリスを整備していた。スピカは順調にラウンドを進み、ランク上位を競っていたが、勝利をあせる直純の乱暴な運転に、ついに篤洋の怒りが爆発。チームは崩壊の危機に陥る…。

 直純の運転するスピカのレース車両はトヨタのヤリスだ。ヤリスは欧州での呼び名で、日本での愛称はヴィッツ。

 トヨタが2017年からWRCに投入している車種で、撮影では、南アフリカ国内選手権を2年連続総合優勝したマシンが使用されている。

■塗装もロゴも“本物仕様”

 「あくまで“本物”にこだわっています。ボディーの塗装も配色やスポンサーのロゴマークの位置なども実際のレギュレーション(規則)に従って仕上げているんですよ」と羽住監督は強調する。

 車両後部に張り出した、ラリーカー特有の大型のリアウイングにマーキングされている月桂冠のマークにも要注目だ。かつてF1の名門チーム・ロータスのマシンのリアウイングに誇らしげにマーキングされていた優勝回数を示すあの月桂冠を想起させる。

 「スピカが国内ラウンドで勝利していくのに合わせてマークが増えていくので、見逃さずに確認してほしい」。モータースポーツに造詣の深い羽住監督や美術スタッフたちの細部へのこだわり、“本物”を追求する意気込みが伝わってくる。

 一方、スピカのライバルチーム「シグマ・レーシング」のマシンにも注目してほしい。

 北村匠海(たくみ)演じるエースドライバー、新海の乗るマシンはシトロエン。黒と白のモノトーンで塗装されたボディーが印象的だ。この個性的なモノトーンボディーを、どこかで見たことのあるデザインだな-と気になる人は少なくないだろう。

 実は北九州空港に本拠を構える航空会社、スターフライヤーが映画のスポンサーの1社で、この黒白モノトーンの車両は同社の旅客機の塗装そのままに再現されているのだ。

■リアルな国内シリーズ

 “SCRS”ことSEIKOカップラリーシリーズは、もちろん架空の選手権だが、レース会場に設置された大型のストップウオッチなどにセイコー製の時計を使ったセットなどはリアル。スイスの時計メーカー「タグ・ホイヤー」がスポンサーを務めたF1のレース会場などでの光景を彷彿(ほうふつ)とさせる。

 国内を転戦していくラリーシリーズの設定も興味深い。都会の舗装路や山岳コースなど各ラウンドごとのコース設定は臨場感に満ち、主人公たちと一緒に日本を転戦している気分になる。

 例えば第5戦は、東京都心部の公道を駆け抜ける「お台場ラウンド」。また途中、日本から海外へ転戦し、マレーシアなどアジアでのラウンドをはさむあたりもリアルだ。

 そして、シリーズチャンピオンを争う激戦地となる第13戦は「北九州ラウンド」。旧門司税関など歴史建造物を保存したJR門司港駅周辺の名所「門司港レトロ」をスタート地点に、かつて日本屈指の造船所などがあり、日本の重工業の発展を支えた工場群をバックに、ラリーカーが走り抜ける描写は迫力にあふれるとともに感動的だ。

■モノづくりの国“ニッポン”を体現

 「この北九州ラウンドのレースシーンは、モノづくりの国“ニッポン”をイメージし、どうしても撮りたかった場面なんです」と羽住監督は明かした。

 新田演じるドライバーの弟、直純を勝たせるために、東出演じるメカニックの兄、篤洋が壊れたマシンを不眠不休で整備したり、新型ターボチャージャーの部品の研究開発に何年も費やす姿は、地道な“モノづくり”の精神で戦後の焼け野原から復興した日本の姿を体現するようだ。

 「この北九州の工場群を原点に、日本の自動車産業などは発展していった…。そんな日本のモノづくりの歴史も、この映画で訴えたかった重要なテーマの一つなんです」と羽住監督は熱く語った。