三セク鉄道「観光列車」次々導入…地域の魅力発信 観光客呼び込み生き残り - 産経ニュース

三セク鉄道「観光列車」次々導入…地域の魅力発信 観光客呼び込み生き残り

 「地域の足」としてローカル鉄道を運行する第三セクター鉄道会社(三セク鉄道)が、意匠をこらした車内で沿線の景色や食事を楽しむ「観光列車」を次々と導入している。通勤・通学客が減少し、苦しい経営を余儀なくされる三セク鉄道が多いなか、鉄道を通じて地域の魅力を発信し、観光客を呼び込むことで生き残りを図ろうという狙いがある。(前川康二)
田園風景を堪能
 鳥取県東部の山あいを走る若桜(わかさ)鉄道の若桜駅(同県若桜町)に3月4日、鉄道ファンらが集結した。お目当ては、この日運行を開始した観光列車「昭和」(1両編成)。終点の郡家(こおげ)駅(同県八頭(やず)町)まで19・2キロにわたって乗務員から周辺の観光スポットなどの説明を受けながら、沿線に広がる田園風景を堪能した。
 「昭和」は昭和62年の開業時に導入した車両を改造。車体は沿線を流れる川をイメージした青色とし、内装には木をふんだんに使って昭和レトロ感を演出している。関連グッズの販売や乗務員のガイドつきで毎週日曜日に1往復運行し、すでに9月末まで予約が埋まっているという。
 平日は通常列車として運行し、沿線住民も気軽に乗車。3月の輸送人数は前年同期比1割増の8720人になった。担当者は「過疎が進む沿線ににぎわいを呼び込んでほしい」と話す。
食事も魅力
 京都北部を走る京都丹後鉄道の運行を担う「WILLER TRAINS」(京都府宮津市)は26年から、福知山(同府福知山市)-天橋立(同府宮津市)間と天橋立-西舞鶴(同府舞鶴市)間で「丹後くろまつ号」を、金土日の各曜日と祝日に運行。京すだれや松のデザインをあしらった内装で、日本海の新鮮な魚介類や但馬(たじま)牛などを使った食事が楽しめる。
 景勝地として知られる長さ約550メートルの由良川橋は徐行運転し、絶景を存分に楽しめるよう工夫。リピーターも増加し、今年4月からの乗車率は6割以上をキープしている。
 熊本と鹿児島を結ぶ肥薩(ひさつ)おれんじ鉄道が25年に投入した観光列車「おれんじ食堂」も本格イタリアンなどが楽しめる。毎年約1万人が利用するなど観光客の呼び込みに成功し、担当者は「乗客の減少を補うため、なくてはならない存在になりつつある」と話す。
魅力掘り起こし
 日本海の絶景や妙高山の雄大な景観を楽しめると評判の、えちごトキめき鉄道(新潟県上越市)の「えちごトキめきリゾート雪月花」や、道南いさりび鉄道(北海道函館市)の「ながまれ海峡号」など、三セク鉄道が観光列車を売り物にする流れは強まっている。
 鉄道の経営に詳しい神戸大大学院の正司健一教授(交通政策)は「地方の三セク鉄道は過疎の影響などで乗客減少が避けられず、観光客を取り込もうとするのは自然な流れ。景色や食など、その土地ならではの魅力で勝負することが必要。地域の魅力を掘り起こし、発信してにぎわいを創出するという三セク本来の役割がより一層求められる」と話している。
 第三セクター鉄道会社 国や地方自治体と民間との共同出資で設立された事業体が運営する鉄道。多くは昭和62年の国鉄民営化当時に存廃が議論された路線や、新幹線が新設されたため需要減が想定された在来線の路線を引き継ぐ形で運営している。近年は沿線人口の減少に伴う利用客減で経営状態が苦しい路線が多い。