「大きな第一歩。平壌の息子に会いたい」大阪・生野の在日1世 

米朝首脳会談

 故郷である慶尚南道(韓国)を離れ、日本に来たのは少年の時。以来、故郷に戻ったことはない。1960年代に帰国事業で北朝鮮に渡った長男とは、会えない日々が続く。「朝鮮が統一したら“祖国”に行きたい。統一に向かってほしい」。大阪市生野区の在日コリアン1世金浩龍さん(91)は、12日に行われた米朝会談を自宅のテレビで妻と食い入るように見つめた。

 9歳で父が亡くなり、兄を頼って14歳で日本へ。兵庫県ではしょうゆやイチゴを売り歩いた。50年に朝鮮戦争が始まった時、金さんは生活に追われる日々が続いていた。

 「すぐに統一するだろう」と思っていた分断は何年たっても解決の見通しがつかない。歯がゆい思いを抱え、在日コリアンの権利擁護と統一のために、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)で活動を開始。当初は町工場で働きながらの活動だったが、昭和35年ごろから専任となり、北朝鮮には15回ほど渡った。49年に朴正煕大統領夫人が射殺された文世光事件への関与を疑われたこともある。

 平壌に渡った長男とは、平成16年を最後に会えなくなった。行き来に使っていた北朝鮮の貨客船「万景峰号」が入港禁止になったためで、その後は手紙などで近況を伝え合っている。

 金さんは、トランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長が合意文書にサインする姿を自宅で見守った。「大きな第一歩。民族の願いである統一につながってほしい。息子に会いたい」。自由に行き来できる日を待ち望んでいる。