「白タク」規制から活路…米ウーバーが淡路島で配車サービス、地域の新しい足に

関西の議論
今夏から「ウーバー」によるタクシーの配車サービスが始まる淡路島。県などは外国人観光客らの利便性向上を期待する

 兵庫県の淡路島で今夏から、米配車大手「ウーバー・テクノロジーズ」のアプリを利用し、タクシーの配車依頼から支払いまでを行う国内初の実証実験が始まる。配車を専門に扱う同社とタクシー事業者が連携した初の試み。「白タク」規制やタクシー業界の反発で日本市場を攻めあぐね、地方の潜在需要を探っていた同社と、交通インフラが不十分で訪日外国人らの移動手段確保が課題だった淡路島側の思惑が一致。地域の新たな交通のあり方として注目されそうだ。

米配車大手と自治体、タクシー事業者が協力

 「全世界で利用されているアプリなので間違いなくお客さんは増えるはず。安全安心で親切な日本のタクシーをPRする良い機会にもなる」

 県タクシー協会淡路部会長を務める、みなとタクシー(兵庫県南あわじ市)の池田昌宏社長(75)はこう期待を寄せる。

 実証実験では、利用者がスマートフォンなどにダウンロードした「ウーバー配車アプリ」で目的地を指定して配車を依頼。アプリ上で想定料金や到着予定時刻などを事前に確認し、支払いもアプリを通じてクレジットカードで行う。ドライバーとの会話や現金のやりとりは不要。アプリは約50カ国語に対応しており、訪日外国人は母国語でタクシーを利用できる。

 兵庫県淡路県民局が同社と契約し、6月に淡路島内のタクシー事業者を公募、研修などを実施した後にサービスを開始し、来年3月末まで実施する。淡路島内には12社約130台のタクシーがあり、その一部にアプリが導入されるという。

日本の地方に活路

 もともと海外の都市部で自家用車によるライドシェア(相乗り)サービスを主力としているウーバー。しかし日本では、国の許可を得た業者以外が有償で客を運ぶ行為は「白タク」として規制されており、さらにタクシー業界の反発もあって市場を攻めあぐねていた。

 そこで同社は、公共交通インフラが整わず移動手段に悩みを抱える高齢者や外国人観光客がいる地方に目を付け、配車サービスに高い関心を持っていた淡路島を最初の進出地とした。

 淡路県民局の吉村文章局長は「世界で利用されている革新的なテクノロジーを導入する日本初の実証実験ができることは大変うれしい。海外や首都圏などからより多くの方々が訪れ、淡路島の文化や自然、食に触れると期待している」と話す。

 淡路島では近畿地方からの日帰り旅行客が7割以上を占め、大半が車で訪れている。鉄道はなく、路線バスは廃止や減便が続いており、タクシーも日本語での対応のため、車のない外国人観光客にとって淡路島観光はハードルが高かった。

 また、島内は65歳以上の高齢者の割合が35%を超える。2040年に日本全体が達するとされる割合で、車が運転できない高齢者の移動手段確保も課題となっている。

 同県民局の高野滋也県民交流室長は「交通インフラの充実は淡路島の重要課題の一つ。タクシー会社と一緒になって外国人観光客の移動手段を充実させ、インバウンドを増加させたい」と今回の実証実験に期待を込める。

新たな地域の足

 過疎地域での交通網の充実に向けた新たな“足”の確保は、他地域でも試みが進んでいる。

 兵庫県養父市では中山間地域の高齢者ら交通弱者の救済のため、タクシーに代わってマイカーで有償運行する事業が5月26日から始まった。国家戦略特区の規制緩和を活用した全国でも先駆的な取り組みで、地元住民だけでなく観光客の利用も見込む。

 バスやタクシーの採算が合わない市内の山間部で限定実施され、市やタクシー会社などが運営主体となるNPO法人に登録したドライバーが自家用車で客を運ぶ。料金はタクシーの6~7割で、売り上げの7割がドライバーの収入になる。

 同市の担当者は「タクシー事業者などは市街地に拠点を置いており、山間部に出向くと採算が合わないケースがある」といい、「豪雪地帯でもあり、高齢者の足の確保は重要な課題。タクシーなど既存の交通サービスとはうまく棲(す)み分けできるはずだ。将来に向け、地域の足を育てていきたい」と期待する。

 法的な問題や自治体の協力など課題も多いが、観光や地域の交通手段として、国内でもタクシーや自家用車を活用した新たな方式が広がりつつある。