「点」「線」「文字」…新たな枠組みで現代美術を紹介する試みに注目

関西の議論
ヘンリー・ムアのブロンズ彫刻「ナイフ・エッジ」(左)などの展示風景。テーマ別の展示を試みた展覧会で登場している=大阪市北区中之島

 大阪市北区中之島の国立国際美術館で開催されている「視覚芸術百態:19のテーマによる196の作品」は、現代美術中心の美術館として開館40周年を迎えた同館の8000点を超える収蔵品のなかから選び出した作品を、従来の「時代別・地域別」という展示方法から一歩進め、欧米で生まれた「テーマ別」という方法での展示を試みた展覧会である。

 具体的には、「点」や「線」、「面」、「色彩」、「文字」などのテーマを設定し、分類する。

 所蔵作品をテーマでくくる方法は、英国の近現代美術館、テート・モダンが2000年の開館時に行ったのが最初とされている。その後、ニューヨーク近代美術館やパリのポンピドゥー・センターなどでも実施され、定着してきた。

 価値観の多様化が進んだことにより、従来の手法で作品を整理することが困難になってきたという事情が、その裏にあるといわれている。

 しかし、そもそも現代美術に「時代別」や「地域別」があったことすら知らないという人も多いだろう。

 現代美術は、広くは20世紀美術のことをいうが、一般には第二次世界大戦後の美術に限定する場合が多い。

 戦後、欧州に替わってアートの覇権を握ったのが米国だ。戦争による欧州の荒廃によって、米国は押し出されるように世界の美術の中心へと躍り出た。それによって現代美術の中心は米国、それ以外はローカルという新しい枠組みができあがったのである。

 そうした枠組みを「地域別」と見なすなら、米国で1950年代に主流となった「抽象表現主義」や60年代の「ポップアート」といった美術動向の推移は「時代別」としてとらえることができる。

 ところが、1970年代以降、現代美術は前衛的動向を生み出せない状況が続いており、さらに近年の「グローバリズム化」がもたらした情報と人の驚異的なスピードでのダイナミックな動きが、現代美術の価値観の多様化をいっそう促進させることになった。

 それが、現代美術に新しい提示のしかたが求められるようになった背景で、いわば「テーマ別」という方法は時代の要請として登場してきたのである。

 今回の所蔵作品展を担当した同館の中西博之主任研究員はいう。

 「テーマというより、キーワード。たとえば、『点・線・面』や『色彩』、『素材と形態』というように、言葉によって展示を組んでいます」

 視覚における認知科学を背景に、「人は物を見たときに何を考えるか」という対象の客観的な類似性に基づいてテーマが立てられた今回の展示は、難解といわれて久しい現代美術を、鑑賞者が理解するうえで役立つように、という視点の上に成立している。

 展示室のすべてを使う大規模コレクション展は、地下3階部を「作品の要素」、同2階部を「描写の対象」というくくりで分け、そのなかには約50点の新しい収蔵品も配している。

 ただ、視覚芸術にもかかわらず言葉による説明が必要とされるアート作品がずらりと並ぶ光景を、まどろっこしいと考えるか、それとも堪能できるかは、つまるところ鑑賞者の目にゆだねられている。(正木利和)

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 7月1日まで。月曜休館。一般900円。問い合わせ(電)06・6447・4680。