籠池被告の初公判いつ? 長期化する公判前整理手続き、過去最高平均8カ月超に

関西の議論

 学校法人「森友学園」(大阪市)の補助金詐取事件で詐欺罪などで起訴され、約10カ月にわたり勾留されていた学園前理事長の籠池(かごいけ)泰典被告(65)と妻の諄子(じゅんこ)被告(61)が5月25日、大阪拘置所(同市都島区)から保釈された。2人は今後、刑事裁判を受けることになるが、裁判の前に争点整理などを行う「公判前整理手続き」は依然続いており、いまだ初公判の日程などが決まっていない。近年、公判前整理手続きは長期化の傾向にあるといい、昨年は手続きに入って終了するまで平均8・1カ月を要し、導入以降最長。籠池被告らの手続きは、これを超えると見込まれている。最高裁は長期化の要因分析を進め、今後改善策をまとめる方針だ。

籠池夫妻の公判いつ

 「国策勾留と認識している」

 25日夜、保釈後に大阪市内で記者会見した籠池被告は改めて持論を展開し、勾留期間を「非常に苦痛だった。やっと出させてもらった」と振り返った。

保釈後に記者会見する籠池泰典被告(右)と妻諄子被告=5月25日、大阪市北区

 ベテラン検事によると、勾留期間は、被告側が裁判での主張を明らかにするかどうかが関係してくる。弁護側の主張が定まらなければ、裁判で扱う証拠が決まらず、保釈された後に証拠を隠滅する恐れを完全に払拭できないからだ。

 関係者によると、籠池被告らは公判前整理手続きで、国の補助金については詐欺罪の成立を争う方針を示した。また、幼稚園への補助金については、籠池被告が外形的な事実を大筋で認めるが犯意などを争う方針で、諄子被告は否認する意向という。

 今回は被告側が裁判での主張を大まかではあっても一定程度明らかにしたことなどから、大阪地裁が逃亡や罪証隠滅の恐れが低いと判断し、今回の保釈を認めたとみられる。

 拘置所から出てきた2人はこれから刑事裁判を受ける。だが、初公判などの日程はまだ決まっていない。公判前整理手続きが長期化しているためだ。

否認で長期化の傾向

 殺人や強盗致死傷事件など裁判員裁判の対象となる事件は必ず公判前整理手続きに付されるが、対象外でも公判審理を継続的、計画的かつ迅速に行う必要があると判断された場合に実施される。

 籠池被告らの事件は裁判員裁判の対象ではないが、公判前整理手続きは昨年11月中旬から始まり、非公開の公判前整理手続きが、すでに4回開催された。今年6月末に5回目の手続きが予定されており、7カ月を超える。しかし、関係者によると、細かい主張内容や裁判で取り扱う具体的な証拠などはこれから詰めていくといい、まだまだ時間がかかりそうな状況だ。

 公判前整理手続きをめぐっては、昨年に全国の裁判所で開かれた手続きは終了するまで平均8・1カ月を要し、平成17年の導入以降最長だったことが、最高裁への取材で分かった。

 最高裁によると、黙秘を含む否認事件でより長くなる傾向にあり、公判に向けた争点の絞り込みが難しいことが長期化の要因とみられ、10年前と比べると平均で5カ月近く伸びている。

 10年前の20年は平均3・4カ月だったが、25年には同7・2カ月に上昇。その後も長期化傾向が続き、今年は2月末時点で同8・2カ月と、過去最高を上回る高い水準で推移している。

 一方、被告が罪を認めている自白事件では昨年は同6・4カ月なのに対し、否認事件では同9・4カ月と約3カ月の開きがあった。

 公判前整理手続きが行われた事件全体に占める否認事件の割合は20年の47%から29年の58%に上昇している。

 手続きが平均を超えるとみられる籠池被告らも、捜査段階では自らの事件は黙秘していたとされる。

証拠絞り込みに課題

 長期化の要因は、検察側、弁護側ともに争点の絞り込みに課題があるとみているが、立ち位置は異なる。

 刑事弁護に詳しい西村健(たけし)弁護士=大阪弁護士会=は「検察側は開示した証拠を弁護側に分析されて細かな点を突かれるのを嫌がり、証拠を小出しする」と批判。立命館大の渕野(ふちの)貴生(たかお)教授=刑事訴訟法=は「被告の利益を考えるとある程度の長期化はやむを得ない」としつつ、「検察側が証拠を全面開示すれば、協議の回数を減らせるのでは」とする。

 これに対し、ある検察幹部は「弁護人にしてみれば、検察の手の内を見てから主張を考える方が得策」と指摘。弁護人が被告に黙秘を勧めるなどし、検察側から証拠が開示された後からようやく主張を定めるような弁護側の戦略が、争点の絞り込みを困難にさせているとの立場だ。

 公判前整理手続きは、平成28年の刑事訴訟法の改正で、弁護側からの請求があれば検察側が保管する証拠の一覧表を交付することとなったほか、開示対象の証拠物の範囲も拡大された。別の検察幹部は、取り調べの録音・録画の導入も含め、公判前整理手続きで提示する証拠の量が増えていることも長期化の要因に挙げる。

 最高裁は「公判前整理手続きの争点や証拠の整理のあり方について、実証的な観点から改善策を研究しており、研究報告書として公表する」としている。

籠池被告「詳細控える」

 籠池被告は、大阪府豊中市の国有地での小学校建設と、幼稚園の運営にからみ、国などの補助金計約1億7700万円を不正に受け取ったとして、詐欺容疑などで妻の諄子被告とともに大阪地検特捜部に逮捕、起訴された。

 籠池被告は保釈後の会見で事件について問われると「公判の準備中であることから詳細は控えたい」と明言を避けた。公判前整理手続きが長期化する中、主張が明らかになるのは、もう少し先になりそうだ。