愛煙家知事も賛同…国より厳しい受動喫煙対策を大阪に、市長がツイッターで決意表明

関西の議論

 大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)への2025年国際博覧会(万博)誘致を目指している大阪府で、国よりも厳しい独自の受動喫煙規制を設ける検討が始まっている。愛煙家の松井一郎知事に呼びかけて府全体の方針にこぎ着けたのは、大阪市の吉村洋文市長。万博の主なテーマに「健康」や「命」を据え、大阪を訪れるインバウンド(訪日外国人客)も好調な中、国際都市として世界水準にルールを近づける必要があると判断したためだ。今後、規制が死活問題となる事業者らからの反発など高いハードルが予想されるが、吉村氏はかつて世間を騒がせた政治家の発言を引用し、「もう大阪を『タン壺』とは言わせない」と、受動喫煙に厳しい目を向ける“クリーンな大阪”の実現に息巻いている。

「自民はだらしない」

 「大阪の万博のテーマを積極的に推進する立場として、本当にいまの受動喫煙の状態でいいのかという思いがある」

 4月26日に行われた定例記者会見で、吉村氏は突然切り出し、こう続けた。

 「国の法律で本当に足りるのか。もっと厳密でないといけないのではないかという問題意識がある」

 望まない受動喫煙の防止をめぐっては、国は2020年の東京五輪・パラリンピックまでの全面施行を目指し、健康増進法改正案を今国会に提出し成立を目指している。現在は努力義務にとどまっている飲食店などでの規制を強化することが法案の主な柱だ。

 ただ、多くの人が使う施設を罰則付きで原則禁煙にする一方で、客席面積が100平方メートル以下で資本金が5千万円以下の既存店は「喫煙可」などと店頭に表示すれば喫煙を認めたり、原則禁煙の大規模な飲食店も煙を外に出さない「喫煙専用室」内なら吸えたりするなど例外も多い内容だ。 厚労省は改正案が実現すれば、喫煙が認められる既存飲食店を最大で全体の55%程度と見積もっている。

 こうした国提出法案について吉村氏は会見で、「不十分な内容で、国際都市を目指すにはもっと踏み込む必要がある」と強調。大阪府にも協力を呼びかけ、大阪独自の規制を設ける考えを明らかにした。

 吉村氏が構想する踏み込んだ規制は、「面積30平方メートル以下の小規模なバーやスナックを除く飲食店は原則禁煙」など。これは厚労省が当初、検討していた改正案に含まれていたものの、飲食業の客離れなどを心配する自民党の猛反対で断念した経緯がある。

 衆院議員の経験があり、日本維新の会の常任役員も務める吉村氏は、後退した規制について、「自民党はだらしない。国民の健康よりも、たばこ業界などに押される議員が多い」と痛烈に批判した。

市長、ツイッターで決意

 受動喫煙防止の取り組みにあたり、5月9日、自身のツイッターに「かつてどっかの政治家に大阪はタン壺と言われたが、もう言わせない」と書き込み、強い決意を示した吉村氏。

 かつての「タン壺」発言とは何なのか-。

 「タン壺発言」とは約30年前に自民党の政治家が、大阪を批判する文脈で使った言葉だ。

 昭和63年4月に京都府内で開かれたパーティーに参加した際あいさつに立ち、「大阪は金もうけだけを考える公共心のない汚い町」などと言及し、「言葉は悪いが、タン壺だ」と発言した。京都を持ち上げるリップサービスだったとみられ、この政治家は後に「誰かがそういうことを言っていたと紹介しただけだ」と釈明したが、特定の都市を汚物を吐き捨てる道具に例えたことで、当時大きな反発を招いた。

 5月の記者会見でツイッターでの書き込みの真意を問われた吉村氏は、「誰が言ったかということではないが、そういう評価で大阪は見られていた」と憤りを示し、「国ではできない厳格な受動喫煙を大阪でやる。タン壺と言われる筋合いはない」と重ねて強調した。

加熱式たばこも規制対象に

 吉村氏の猛プッシュを受けて、当初は国の規制で十分だとする考えを示していた愛煙家の松井一郎府知事(維新代表)も、歩調を合わせることを表明。「喫煙者は受動喫煙にならない場所で、マナーを守りながら嗜好品として楽しめばいい。たばこを吸わない人が住み心地のいい社会を目指していきたい」と語り、府条例として一本化し、2025年までに府内全域で国より厳しい受動喫煙規制を目指す方針を明らかにした。

 また通常の燃焼式たばこに加え、タバコの葉を電気で加熱し発生する蒸気を吸う「加熱式たばこ」についても、旧厚労省案に上乗せして規制対象とする方向性に言及。加熱式たばこは煙が出ず、臭いも従来の燃焼式より抑えられることから近年普及が進んでいるが、松井氏は加熱式たばこにも発がん性物質が含まれていることを念頭に、「加熱式でも被害はあるので厳しく規制していく」と述べた。

 大阪府市は夏ごろをめどに有識者や飲食店関係者をメンバーに含めた会議体を立ち上げ、詳細な制度設計を始める方針。来年秋までの松井、吉村両氏の任期中に条例を制定し、経過措置などを設けながら、誘致に成功すれば万博が開催される2025年までに完全実施を目指すとしている。

 飲食店業界などからの反発は必至だが、吉村氏は「『国と違う基準を何で大阪でやるのか』という意見には、時間をかけて議論をして理解を求めていきたい」とし、「健康被害や世界標準を考えたときに、必ず大阪のメリットになってくると思う。国際都市・大阪を目指す上で、厳格なルールを作っていきたい」と話した。

 受動喫煙対策をめぐっては、東京都も店舗の規模に関わらず、従業員がいる店は原則屋内禁煙などとする独自の条例案を作成。東京五輪の開催前の成立・段階的な適用を目指している。自治体が先行する形で受動喫煙規制のルールづくりが今後進んでいきそうだ。