【関西の議論】投票率わずか12%…兵庫県稲美町議の再選挙、背景に議員の「なり手不足」も - 産経ニュース

【関西の議論】投票率わずか12%…兵庫県稲美町議の再選挙、背景に議員の「なり手不足」も

 5月13日に投開票された兵庫県稲美町の町議再選挙。欠員1に対し、新人2人と元職1人の計3人が立候補し、元職が当選したが、投票率は異例ともいえる12・92%にとどまった。町選挙管理委員会に記録が残る昭和54年以降の選挙では、過去最低を記録。これまでの県内の選挙と比較しても、異例の低投票率となった。投票日の天候が悪かったこともあるが、任期満了に伴う前回の町議選から約2年8カ月後の再選挙で町民の関心が低かったことに加え、全国的に課題となっている町議や村議の「なり手不足」も背景にありそうだ。(香西広豊)
投票率3%台の投票所も
 「投票日が大雨だったことに加え、どの候補者も立候補表明をせず、選挙が盛り上がらなかったことが影響したのではないか」
 町選管の職員は低投票率の原因をこう分析する。同町は、兵庫県中南部に位置し、神戸市や明石市、加古川市などに隣接する人口3万1241人(5月1日現在)の町。人口は平成18年の3万2687人をピークに減少傾向にある。
町議再選挙が異例の低投票率となった兵庫県稲美町の役場
 同町の選挙でこれまで最も投票率が低かったのは、8年の参院兵庫選挙区補選の17・26%。今回の町議再選挙はこれを4・34ポイントも下回った。ちなみに、県選管によると、県内の市町村議選の最低投票率はわからないが、記録が残る昭和34年以降の国政、知事、県議の選挙での最低投票率は平成12年の県議西宮市選挙区補選の16・95%という。
 今回の再選挙の投票日は前日までの好天から一転、朝から激しい雨が降り、大雨注意報も出る荒天だった。当日有権者数は2万5687人だったが、投票者の総数はわずか3318人で投票率は12・92%。投票所の中には、710人の当日有権者に対して投票者がわずか28人で、投票率が3・94%となった地区もあった。
 さらに、投票者の総数3318人のうち、期日前投票が1404人で約42%を占めており、期日前投票のおかげで投票率がどうにか2桁台になったともいえる状況だった。
 低投票率の要因は荒天だけではない。立候補した3人の候補者の準備不足も指摘されている。
 いずれの候補者も立候補表明をせず、さらには「事前審査に誰も来なかった」(町選管の担当者)という。そして、いずれも投票日から5日前の告示日当日に手続きをした。そのため、ポスターなどの手配が間に合わず、腰を据えた選挙戦ができなかった。
 町選管の担当者は「選挙カーが町内を走らなかったことも町民の関心が高まらなかった要因の一つではないか」と分析する。
なぜ2年8カ月後に再選挙なのか
 今回の再選挙は、平成27年9月に行われた町議選(投票率45・64%)の結果を受けたものだ。このときの町議選では、定数16に対して18人が立候補した。しかし、得票数下位の3人がいずれも当選に必要な法定得票数に届かず落選。1人の欠員を出すことになった。
 公職選挙法では、定数の6分の1を超える欠員が出た場合、50日以内に再選挙や補欠選挙を行わなければならないが、同町議会の欠員は1人で、このケースに当てはまらない。しかし、同じ地方公共団体で選挙がある場合は、定数の6分の1を超えていなくても再選挙をしなければならないという規則がある。
 今回、任期満了に伴う町長選があったため、町長選と町議再選挙のダブル選となったわけだ。
 しかし、その町長選は現職の無投票当選となり、町議再選挙が単独実施になってしまった。そのため、有権者の投票行動を促すねらいがあったダブル選効果がなくなり、町選管も「町長選が無投票となったことは、再選挙の投票率に大きく影響した」とする。
背景には町議のなり手不足も
 こうして行われた町議再選挙は、元職の候補者が新人2人を破って当選を果たした。今回落選した2人の新人候補は、いずれも前回の町議選で当選に必要な法定得票数に届かず落選した3人の候補者のうちの2人。当選したのは元職ということで、実質的には目新しい候補者がいなかったことになる。
 今回の再選挙で当選しても来年9月には任期満了に伴う町議選が控えている。町議としての任期が1年4カ月あまりしかないことも、目新しい候補者が出馬しなかった要因とみられている。
 一方、全国の町や村の議会では近年、深刻化する人口減少と高齢化による「なり手不足」の懸念を抱えている。
 総務省によると、平成27年の統一地方選で373町村議選のうち24%にあたる89町村が無投票だった。町村議選の無投票当選者の割合は、19年の統一地方選の13・2%から、27年は21・8%にまで増えている。
 稲美町議会でも、前回の町議選で法定得票数に足りず、欠員1が生じた状況を重視。定数削減について議論を重ね、29年9月に16の定数を2減らすことを決定し、来年9月の町議選から定数は14になる。
 町選管の担当者は「近年、なり手不足などから全国的に町や村で議員定数を少なくする流れがあり、稲美町でも前回町議選の結果を踏まえて定数減を決断することになった」と説明した。
 稲美町議再選挙の異例の低投票率は、人口減少が進む町や村の議会が抱えるさまざまな問題を浮き彫りにしている。