【関西の議論】いたちごっこ「タテカン抗争」の行方は…京大「適正に対処」、学生「対話を」 - 産経ニュース

【関西の議論】いたちごっこ「タテカン抗争」の行方は…京大「適正に対処」、学生「対話を」

 京都大吉田キャンパス(京都市左京区)周辺に学生らが設置する立て看板(通称・タテカン)をめぐり、大学側と学生らの対立が深まっている。大学はタテカン撤去を求める通知書を貼り出した後、全ての看板を撤去したが、学生らは保管場所を壊して奪還するという強硬手段で対抗するなど、「再設置」と「再撤去」が繰り返される事態に陥っている。他大学では逮捕者が出るほど大学側と学生側の溝が深まった歴史もあるタテカン。京大での「いたちごっこ」に、幕引きは訪れるのだろうか。
「俺がタテカンだ」
 5月1日午前の吉田キャンパス。百万遍(ひゃくまんべん)交差点から正門までの歩道(約650メートル)沿いに、多いときで70枚程度あった看板は20枚ほどに減っていた-。
 学生運動が盛んだった昭和40~50年代に広まったとされるタテカン。特に京大では「自由の学風」の下、学生が意見を主張する手段として受け継がれてきた。
 タテカンについて「優れた景観づくり」を進める京都市の景観条例に違反するとして、市はこれまで、再三にわたり京大に行政指導を実施してきた。これを受け、京大は昨年12月、タテカンに関する新たな学内規定を策定。学内規定の運用を始めた5月1日、撤去に向けた動きを本格化させた。
百万遍交差点の歩道上に設置されたタテカン=4月2日、京都市左京区
立て看板が全て撤去された後の百万遍交差点の歩道=5月13日、京都市左京区
 多くのタテカンは規定に従った学生らが撤去したが、大学職員が残っているものに撤去を求める通知書を貼り始めると、一部の学生が止めに入りもみ合いになり、辺りは一時、騒然となった。「俺が立て看板だ」と書かれた大きな板を背負う反対派の学生も登場し、抗議活動も始まった。
 反対するのは学生だけではない。京大教職員らの有志でつくる「自由と平和のための京大有志の会」も同日、キャンパス内に平和を訴える布製の「垂れ看板」(縦180センチ、幅125センチ)を掲示。有志の会は、これは規定に抵触しないとしており、「規定は憲法で定める『表現の自由』に反する」などと主張した。
撤去されても…
 大学側の通知書が貼り付けられてから数日後もキャンパス周辺には看板が残り、そればかりか新たに設置されることもあった。
 「何が景観条例だ 俺が景観だ」。正門には、学生服に学帽、外套(がいとう)姿の男子学生が描かれた「顔はめ看板」も登場。ほかには、大学の対応を揶揄(やゆ)したり、話し合いを求めたりと内容はさまざまだ。
 だが13日早朝、大学職員とみられる数人が看板を撤去し、キャンパス内に運んだ。日曜日のため、学生の姿も少なく目立った混乱はなかった。しかし、学生側はこの日午後、新たに設置し始めた。「こざっぱりとしてはる」と、学生によるとみられる皮肉たっぷりの文言が目を引いていた。
ついには警察沙汰に
 事態はさらに悪化する。
 14日深夜、キャンパス内にある保管場所に、学生とみられる3人が侵入し看板を持ち出そうとしているのを大学職員が発見し110番した。保管場所のフェンスが破損しており、京大は「犯罪行為は看過できない」として、京都府警川端署に被害届を提出。同署は器物損壊容疑で捜査を始めている。
 フェンスの金網は高さ約2メートル。「タテカンを出している学生団体や個人はたくさんいて、侵入したのもそのうちの一つ」。規制に反対するある男子学生はこう語り、「当初は金網を切って運び出すつもりだったが金網が切れず、はしごをかけて持ち出すことにしたらしい」と明かす。
 翌15日、キャンパス周辺の歩道には、奪われた看板を含む18枚が再び設置された。これを受け、大学側は18日早朝に再び撤去した。
 京大は「新たな立て看板の設置には、今後とも規定に基づき、適切に対処していく」とホームページに声明を掲載。当初の姿勢を崩さない構えだ。
 ただ、京大の規制に反対する学生のスタンスもさまざまだ。反対派の別の男子学生は、いたちごっこの現状については「職員へのヘイト(反感)をためるだけで、タテカンを守る上でプラスに働かない」と断言。この学生の団体ではイベントの告知など限定的に看板を使っており、「(タテカンが)表現の手段であることを説明するため、ビラを配り住民の人と話すなどして地道な活動を続けている」と話した。
他大学では逮捕者も
 タテカンをめぐっては、過去には逮捕者が出る騒動に発展したことも。法政大(東京)では平成18年、新校舎の開設に伴い、看板設置のルールを設けた。通行の邪魔になるほど数が多く、学生から苦情が相次ぎ、清掃費もかさんでいたという。だが、撤去しようとした大学職員を怒鳴って取り囲むなどの妨害をしたとして学生29人が逮捕された。
 前出の京大の学生は、看板の奪取など力ずくで抵抗する一部の学生らについて「気持ちは分からなくもないが、正当化できるとは思わない」と疑問を呈し、こう続けた。「表現の手段であるという理解を得られないと、大きな反発を生み、より規制が進む。(自分たちは)タテカンの自主管理のあり方について(大学との)対話で落としどころを探ろうとしている」
 京大としても、事態打開のため学生らと対話し、開かれた議論を尽くすことが求められそうだ。