【関西の議論】大相撲土俵の女人禁制議論が再燃か? 女性市長が企画の集会や夏巡業再開で - 産経ニュース

【関西の議論】大相撲土俵の女人禁制議論が再燃か? 女性市長が企画の集会や夏巡業再開で

 京都府舞鶴市で4月に行われた大相撲巡業を端に発した土俵の女人禁制問題を考える市民集会が6月、兵庫県宝塚市で開かれる。企画したのは、土俵の女人禁制に異を唱える同市の女性市長。ただ、同市には「相撲をパフォーマンスに利用している」と市長を批判する声も多く寄せられており、当日は混乱する可能性もある。一方、夏場所終了後、地方巡業も再開するが、巡業先となっている大津市の女性市長は土俵に上がれなければ、あいさつしないことを表明している。沈静化したかのようなこの問題だが、再び波紋を広げる可能性がありそうだ。(中川三緒)
女性であるという理由だけで…
 舞鶴市長が倒れた2日後の4月6日、大相撲の地方巡業が宝塚市で行われた。これに際し、同市の中川智子市長(70)が巡業前日、「土俵の上であいさつしたい」と主張。これに対して日本相撲協会は「伝統に配慮して土俵の下でやってほしい」と伝えた。
 当日に土俵下に置かれた台の上に立った中川氏だが、「女性であるという理由だけで土俵の上であいさつできないのは悔しく、つらい。変革する勇気が大事ではないか」と訴えた-。
土俵の下で挨拶する兵庫県宝塚市の中川智子市長=4月6日、同市立スポーツセンター総合体育館
 実は、昨年の巡業時には土俵下で普通にあいさつしていた中川氏。今回の発言を、パフォーマンスだとする批判もある。巡業後に市役所で行われた会見で「昨年は普通にあいさつしていた」と問われると、「男性市長も土俵の下であいさつしていると思っていた。舞鶴市長が倒れた映像を見て、男性市長は土俵に上がっているのだと気がついた」と話した。
 「舞鶴市の一件があってアピールしているのでは」という質問には、「議論するタイミングだと思った」と答えた。また、「宝塚市には男子禁制の宝塚音楽学校があるが」との指摘には、「宝塚歌劇は男性が裏方として舞台の上に立つことがある。男子校、女子校みたいなもので話が違う」と主張した。
 中川氏の発言には、全国の女性市長から賛同の声が上がった。仙台市の郡和子市長(61)や東京都三鷹市の清原慶子市長(66)から賛同する内容の連絡があったといい、中川氏は「今後は全国の女性市長らと連携を深めていきたい」と意気込む。
批判的意見8割、根強い伝統意識
 ただ、宝塚市によると、5月18日までに電話やメールで寄せられた市民からの意見のうち約8割は中川氏に批判的な意見だったという。「女人禁制は悪しき伝統だ。時代錯誤だ」などと好意的な意見も104件あったが、「相撲には伝統がある。伝統を女性差別の問題にすり替えている」「国技や伝統を重んじるべきだ」といった批判的な意見が408件に上った。
 これまでも、相撲ファンや一般市民からは女人禁制に賛成する声が多く出ている。
 東海大体育学部の生沼芳弘教授らが平成16年から3年間、大相撲の観客に行った意識調査によると、「女人禁制を守るべきか」という問いに対し、「守るべき」と答えた割合は、16年で65・5%、18年で72・6%、19年で64・1%といずれも半数以上となった。
 式典で女性が土俵に上がることに関しても、16年で59・1%、18年で69・3%、19年で63・3%の人が反対。さらに、「女性が土俵に上がれば女性ファンが増えるのでは」という問いについては、16年で73・1%、17年で85・1%、18年で76・6%が「そうは思わない」と答えている。
 日本相撲協会の八角信芳理事長は「生沼教授らの調査から10年経過し、再調査を行いたい」としているが、以前の調査からも国民の中では女人禁制に賛成意見が多いことが伺える。
双方の意見集めて議論を
 宝塚市などに反対意見が多く寄せられているものの、「議論を終わらせてはならない」と意気込む中川氏は4月19日に上京してスポーツ庁の次長と面談。「伝統を守るという考えは大事だが、変えるものは変えていくということを議論する時代に来ている」として、「巡業開催地の首長あいさつは男女問わず同じ場所ですべき」「セレモニーにおいては女性も土俵に上がれるよう議論を始めること」などとする要望書を林芳正文部科学相と八角理事長宛に提出した。
 これに対しスポーツ庁は4月24日付で「女人禁制に関する取り扱いは、相撲協会が自主的に判断するべきものと考えているが、協会の取り組みについて注視していく」と回答した。
 さらに、中川氏は6月2日に宝塚市内で「伝統と女人禁制を考える市民集会」を企画。集会では、相撲の歴史などを研究する講談師の旭堂南陵さんと、大阪大大学院の牟田和恵教授(ジェンダー論)がいずれも女人禁制に反対の立場で講演し、中川氏もこれまでの経緯や、協会のその後の対応などについて話す予定にしている。
 集会の実行委員長を務める種谷有希子弁護士(41)は「女人禁制問題に早く結論を出すのが目的ではない。賛成と反対の双方の意見を知り、議論を深める集会にしたい」と話し、相撲協会にも協会側の見解を説明する人の派遣を要請する手紙を出したというが、協会は人材の派遣要請を断った。集会では、市に寄せられた女人禁制に賛成の意見や八角理事長が発表した談話などを紹介するという。
夏巡業で女性市長、議論再燃も
 こうした動きに同志社大の横山勝彦教授(スポーツ組織文化論)は「『悔しい』や『つらい』といった感情論では議論は深まらない。国民を巻き込むことは必要だが、本質的な議論をしなくてはいけない」と指摘。その上で、「相撲はもはや宗教的な儀式ではなく、国際的なスポーツ。女性差別に合理的な理由はない。相撲の伝統的な品格や価値を考え、協会は進むべき方向性を決める必要がある」と主張する。
 7月末からは、女人禁制問題に結論が出ないまま、大相撲の夏巡業が始まる。夏巡業2カ所目の大津市は女性の越直美市長(42)だ。越氏は相撲協会に対し、「女人禁制によって土俵下であいさつを求められた場合は巡業に出席しない」という考えを示しており、女人禁制問題が再び浮き彫りになるのは必至だ。
 これまでもたびたび議論を呼びながら、方針が変わることはなかった女人禁制問題は沈静化しそうにない。