【関西の議論】記録的大雪、復旧に努めたのに…除雪費用で財政難の福井市が職員給与1割カット、労組猛反発 - 産経ニュース

【関西の議論】記録的大雪、復旧に努めたのに…除雪費用で財政難の福井市が職員給与1割カット、労組猛反発

今年2月の豪雪では、除雪された雪が身長を超える高さまで歩道に積まれた=福井市内
積雪で動けなくなった車。今年2月の豪雪ではこうした光景があちこちで見られた=福井市内
 2月の豪雪で除雪費用が膨らみ財政難に陥った福井市が、職員給与の時限的な削減を検討している。非常時に備え積み立てている財政調整基金が底をつき、財源不足に陥ったためだ。これに対し市職員の労働組合は「被災し、災害復旧に努めた職員の給与で財源不足を補うのはおかしい」と猛反発し、撤回を求めている。市側は6月議会への関連条例提案を目指すが、労使交渉は着地点を見いだせないままだ。
貯金が底をつく
 市財政課によると、財政調整基金残高は直近で平成18(2006)年度の31億5千万円がピーク。以降、市税収入の改善などで基金の取り崩しを行わない年もあったが、24年度から財政事情が厳しくなる。高齢化を背景にした社会保障費の負担増に加え、35年春に予定されている北陸新幹線の福井開業、30年度の国体開催といった大型案件を控え、24年度以降はほぼ2年置きに取り崩しが続き、28年度末残高は20億円まで目減りしていた。
 そこに今年2月の豪雪が直撃。福井市では積雪147センチを記録するなど37年ぶりの記録的な大雪となり、幹線道で車両が立ち往生、事業所などの休業も相次ぎ市民生活が混乱した。
 29年度の除雪関係費や公共施設の補修費など雪の関連経費は50億円となる見込みで、これは例年の7倍強に当たる。国の特別交付税や国土交通省の補助金のほか、市の災害対策基金や財政調整基金の残額を全額取り崩しても、29年度決算は3億円の赤字に陥る見通しだ。
 さらに30年度予算では、財政調整基金が底をついたため補正予算の編成段階で10億円が不足する見通しで、結果として計13億円の財源不足に。市は大型事業の凍結や不要不急の事業見直しで5億円を捻出する方針だが、それでもまだ8億円が不足する計算だ。
 このため市は今年7月~来年3月の9カ月間、常勤職員約2300人の給与と管理職手当をそれぞれ10%カットし、特別職の報酬も20%減額する方針を市職員労組に提示した。市の担当者は「将来にわたり、ずるずる赤字を引き継ぐより単年度で解消したい。財政健全化計画を立て、31年度には元の状態に戻したい」と話す。
労組「飲めない」
 一方、職員が身を切る形での財政の調整に、市職員労組は猛反発している。野田哲生執行委員長は「単年度ですべて処理することにこだわる必要はない」と主張する。
 職員労組によると、29年度の一般職員の平均給与(年齢41・2歳)は約32万円で、9カ月間10%削減した場合、28万8千円の減額になると試算。野田委員長は「災害で被災した自治体の職員給与で、被災で生じた財源不足を補填(ほてん)するのはおかしい」と強調する。
 また、労組側は10%という削減率は生活への影響が大きすぎ、現在の職員や将来の市職員の職務への意欲をそぎ、人材の流出にもつながりかねないと危惧。「短期的な財源不足を単年度の人件費削減で解消を図るのは乱暴過ぎる。大型や継続事業の見直しといった財政改革に踏み込む時期だ」(野田委員長)とし、より時間をかけた労使交渉や市の踏み込んだ事業の見直しを迫る考えを示す。
議会開会は目前
 一方、市側にとっても職員給与のカットは苦渋の決断だった。財源確保に頭を抱えるのは、除排雪経費について市債発行という手段が使えないとの見解だからだ。地震、水害での道路や水道などの復旧工事はインフラの整備に当たり、国の財政支援が出やすく起債もできるが、「道路から雪をどける作業での市債発行は不可能だ」(財政担当者)というのだ。
 一般的に財政調整基金は標準的な状態で通常収入が見込まれる「標準財政規模」の5~10%が目安とされている。福井市の28年度の財政状況資料によると、標準財政規模は約585億円で、58億円程度の基金積み立てが必要になる。過去10年程度の残高は20億円台で推移しており、危機対応には不足していた。
 最後の手段として人件費削減に踏み切る格好となり、市は6月議会(6月4日開会)への関連条例提案を目指すが、労組側は反発の姿勢を崩していない。開会が目前に迫り、労使交渉は着地点を見いだせるのか。