【関西の議論】年間に26泊3500万円!?別荘でなく超高級会員制ホテルが人気の理由 - 産経ニュース

【関西の議論】年間に26泊3500万円!?別荘でなく超高級会員制ホテルが人気の理由

 神戸市の六甲山頂に4月、新たな超高級会員制ホテルがオープンした。贅(ぜい)の限りを尽くした施設の会員権価格は年間26泊の場合で実に約3500万円に上るが、すでに計数百人が購入している。アベノミクスの影響からか、こうした会員制ホテルが近年人気を集めるが、実は、会員権価格も富裕層向けの高額なものから、庶民でも「背伸びすれば」届きそうな数百万円のものまで幅広い。かつては富裕層のステータスだった別荘に変わって注目を集める会員制ホテルの魅力とは。(土屋宏剛)
徹底したサービスとおもてなし
 全国のリゾート地で高級会員制ホテルを運営する「リゾートトラスト」(名古屋市)が4月22日、六甲山頂付近の標高約880メートルの地点に会員制ホテル「エクシブ六甲・サンクチュアリ・ヴィラ」をオープンさせた。
超高級会員制ホテル「エクシブ六甲・サンクチュアリ・ヴィラ」のパブリック棟=神戸市灘区
 同社によると、約3万9千平方メートルの敷地中央部分にフロントやレストランのあるパブリック棟を設置。少し離れた場所に計8棟の宿泊棟があり、各棟へは専用のカートで移動する。
 客室は平均約120平方メートルと広く、一部の客室からは神戸の夜景が一望できる。浴室の湯はタンクローリーで、関西を代表する温泉地・有馬温泉から運搬する。
最高級の丁度品を揃えた客室=神戸市灘区
 レストランは鉄板焼きと炭火焼き、割烹があり、「神戸牛」や「明石だこ」のほか、マッシュルーム「六甲シャンピニオン」など、地元の特産品を使った懐石料理などを提供する。
 ペットの小型犬と一緒に過ごすことができる部屋もあり、担当者は「兵庫の魅力をホテル内で満喫でき、かゆいところにも手が届く仕様」と徹底したサービスに胸を張る。
神戸牛など兵庫県の特産品が味わえるホテル内の鉄板焼き店=神戸市灘区
 同ホテルは全48室で、各部屋を14人か28人で共有するオーナー制度。年間26泊可能な会員権が約3510万円、13泊可能な会員権でも1860万円と高価だが、3月末時点ですでに数百人が会員権を購入している。宿泊するには会員権とは別に1泊3万円程度が必要になるが、今年のゴールデンウイーク(GW)は会員でにぎわったという。
神戸市内を一望できる浴室。有馬温泉からタンクローリーで湯を運搬している=神戸市灘区
会員制が人気を集める秘密は
 このような会員制ホテルが人気を集める背景には何があるのか。
 観光地のホテルは通常、年末年始やGWなどの時期は宿泊予約を確保するのが困難なケースが多い。しかし、会員制ホテルの場合は宿泊できる人が会員に限られるため、自分が宿泊したい時期に予約を取りやすくなる。また、ホテルや運営会社によっては宿泊可能日が事前に設定されていることもあり、繁忙期でも確実にホテルで休暇を過ごせるメリットがある。
 かつて富裕層の代名詞だった別荘も、近年は「掃除などの維持管理が面倒」という人が多い。対して会員制ホテルの場合、管理は不要でいつでも最高級の“おもてなし”を受けることができる。マナーが悪い観光客とのトラブルと無縁なのも人気の秘訣(ひけつ)だ。
 一般社団法人「日本リゾートクラブ協会」(東京)によると、国内で会員制ホテルを運営する企業は現在約50社あり、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」以降は、景気回復を受けて需要が高まっているという。
多くの人が楽しめる時代に
 実は、会員制ホテルは、特別な一部の富裕層にのみ許された娯楽ではなくなってきている。「背伸びすれば届く価格」を売りにする会員制ホテルが登場しているのだ。
 「グリーンフィールド」(大阪市)の会員権は、リゾートトラストの20分の1程度の180万円で、業界でも「お手ごろ価格」で注目を集めている。定年退職後の年齢層が購入するケースが多いが、管理職に就く40~50代のサラリーマン、女性の会員も増えてきているという。担当者は「会員制ホテルを身近に感じてもらいたい」と強調する。
 大手企業の参入も間口を広げることにつながっている。東急不動産の子会社「東急リゾートサービス」(東京)は会員制ホテル「東急ハーヴェストクラブ」を全国24カ所に展開する。会員数は計約2万5千人。会員権価格は最高で1500万円前後で、価格が低いホテルでは100万円台のところもある。
 同社が設定するターゲットは50~70代。都市部に住む会社役員や医師らが中心で、家族連れで利用する場合が多いという。会員権購入者は順調に伸びており、今年7月には長野・軽井沢に新しい会員制ホテルをオープンさせる。
 同協会の今泉陽一事務局長は「貯蓄に余裕があり、時間を持て余している団塊の世代をターゲットにするホテルが増えている」と話す。
 観光産業に詳しい広岡裕一・京都外大教授は「富裕層が独占していた会員制ホテルを多くの人が楽しめる時代になってきた。資産的な価値だけでなく、普段味わえないおもてなしを受けることができるという経験的な価値を重視する人が増えていることも人気の要因ではないか」と指摘する。
 それぞれの人が自分の収入やライフスタイルに合わせて「リゾート」を選択する時代になってきたといえそうだ。
ホテル敷地内を移動する際に利用するカート=神戸市灘区
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