独自の教育方針、寄付金頼りの経営…開示文書からみえる「森友小学校」の虚実

衝撃事件の核心

 学校法人「森友学園」(大阪市)に対する国有地売却問題の捜査が続く中、大阪府教育庁が今春、情報公開請求に応じ、学園が同府豊中市内の国有地で設立を目指した小学校「瑞穂の国記念小学院(仮称)」の設置認可申請書や府私学審議会の議事録などを開示した。「歴史と伝統に基づく教育による国家有為の人材育成」「公式行事や儀礼的行事への参加のプログラム化」…。資料からは、学園前理事長の籠池(かごいけ)泰典被告(65)=詐欺罪などで起訴=が目指した小学校像が浮かび上がる。だが、私学審では「絵空事」などと批判され、経営についても疑念が噴出。籠池被告は後に、小学校の開設要望を取り下げることになるのだが、資料からも「無理筋」な小学校計画だったことがうかがえる。

図書リストには図鑑や児童書

 大阪府が資料を開示したのは、4月17日と5月7日の2度。最初が、平成26年10月に学園が府に提出した小学校の設置認可申請書など約500ページで、2度目は府私学課が学園側との面談の結果をまとめた報告書や府職員が学園側と交わしたメールも含む約160ページの資料だ。府教育庁は文書を「刑事訴訟に関する書類は開示対象外」と非公開にしていたが、大阪地検から了承が得られたとして開示した。 

 このうち、4月に情報開示した小学校の設置認可申請書には、籠池被告が目指した小学校の姿が克明に記されている。

籠池泰典被告が開校を目指した大阪府豊中市の瑞穂の国記念小学院

 まず、学期は前・後期の2学期制。クラス編成は一学年2つずつの全12クラスで、各学年80人を定員とし、大阪府や兵庫県から合計480人の生徒を受け入れるとした。

 図書リストには辞典や図鑑、児童書や絵本が並び、小学校の設備も校舎のほか体育館や図工室、家庭科室などがあり、どこにでもある普通の小学校といった印象だ。

理念示す図に「教育勅語」

 だが、教育方針には“森友小学校”の独自性が見て取れる。

 「皇室を尊び、我国の皇祖皇宗から続く悠久の歴史と伝統文化に立脚し、知徳体の均衡のとれた教育により、国際的に通用する日本人を涵養(かんよう)することを目的とする」

 申請書の「教育理念」とした中に書かれている。

 後段には「自分の所属している民族国家と他民族国家との違いや、歴史と文化・道徳を知ることにより、自負心や自尊心に結びつき、やる気が出て将来の夢・希望・志に火をつけることになる」と、小学校設立の意義について訴えた。

 そして、こうした教育理念を示す図を掲載し、「教育勅語」や「五箇条の御誓文」などを記載。また、子供の国家観を醸成するために重要だとして、古事記や神話の素晴らしさを語っている。

土曜日も4時限授業

 教育理念を支えるカリキュラムも一線を画す。

 例えば1年生の時間割案。火曜日は次のようになっていた。

 1時間目 国語

 2時間目 国語

 3時間目 算数

 4時間目 音楽

 5時間目 体育

 6時間目 特別活動

 特別活動は水曜日、木曜日にも6時間目に組み込まれている。文部科学省が定める「学校教育法施行規則」では特別活動の年間授業数を最低34時間と定めているが、瑞穂の国記念小学院では1、2年時に年間105時間を予定していた。

 その内容について学園は「公式行事、儀礼的行事、各種式典への参加などをプログラム化し実施する」と説明。また、最低授業時間数34時間と定められている道徳についても50時間が割かれていた。そのためだろうか、土曜日にも4時間目まで授業を行う予定になっていた。

私学審委員「絵空事だ」

 だが、こうした小学校の姿に、府私学審議会からは懸念が示されていた。

籠池泰典被告が開校を目指した大阪府豊中市の瑞穂の国記念小学院

 平成26年12月に開かれた審議会の議事録によると、特別活動の授業が通常の約3倍あることを、ある委員が「まだ判断ができない小さな子供たちに思想教育のような非常に色濃い教育をされている気がする。少し違和感を覚えます」などと意見を述べていた。

 翌年1月の審議会の議事録では「教育内容については、特色が強く、入学者からすると魅力にもなると思います」という委員の意見も記載されていたが、議事録を見る限り少数派だったようだ。

 一方、財政面でも追及の声が上がっていた。

 当時、約4億円としていた校舎建築費の安さや、学園に多額の借入金があること、寄付金に頼った経営について、委員から疑念が噴出。同じ日の議事録では「ありえないような内容ばかりがあり、こんなことがあるなら僕もやってみたい。こんな絵空事でうまくいくとはとても思えない」と実現性を疑う声が多く上がった。

国有地に残る小学校舎

 瑞穂の国記念小学院をめぐっては、私学審が27年1月に「認可答申」を出した。だが、学園が負債比率を抑えるために府に小学校の建築費を過小に申告していたことなど、次々と問題が噴出。籠池被告は小学校計画を断念し、自身も詐欺容疑などで逮捕された。

 現場の国有地には、今も一部3階建ての立派な校舎が残り、体育館には「瑞穂の国記念小学院」の文字が見て取れる。

 「日本国を存続させるために立派な人材を作る」。籠池被告がこの地で報道陣に力説した昨年3月から、1年以上が過ぎた。大阪地検特捜部の捜査が進行ということもあり、国有地の行く末は決まっていない。